誓い
一昨日は間違えて投稿してしまいました。
すみません。
村長に信じて貰う事ができたので、全員をリベリルドまで護衛した後、旅の荷をまとめて報告をするためにアリジリーナに向かった。
リベリルドには既に薬屋の姿は無かった。
本来は迂回しなければならなかったのだが、俺達がオーク鬼を退けて切り開いた最短の道で行ったので翌日の朝にはホラム街に着いた。
街で忠告してくれた男に、お礼と冒険者が帰ってこなかった理由を告げ、ニードラゴンの話を酒の肴にした。
リベリルドで買い込んだ果実を酒場のマスターに渡して、オレンジジュースにしてもらった。マスターは複雑そうな顔をしていた。
その日は泊まり、翌日の朝から再びアリジリーナに向かって歩き出した。
昼過ぎには無事に着くことができた。
「なんだか久しぶりだな、この門をくぐるのは」
「そうですね。僕なんて王宮中の人から嫌われてますからあんまり来たくありませんでしたが」
報告はしなければならない。
それに、報酬も受け取らねばならない。
「街の方をブラブラしていて下さい。僕が話を付けてきますから」
「いや、私も行こう」
「え」
「なんだ、露骨に嫌そうな顔をするな」
「な、なんでもありません」
ヤバイかなぁ。バレて怒られないかなぁ。
「全員、敬礼!」
お決まりなのか、騎士団が掛け声と共に国王が姿を現す。
「良くぞ悪しきドラゴンを打ち倒し、ここに舞い戻ってきた」
これはアレか。『殺されれば良かったのに、何ノコノコ戻ってきてんだ?』って意味だろう。
「いえいえ。報告に参ったまでです」
「ソナタに褒美をとらせよう」
目の前に小さな袋が詰まれる。これが報酬の100銀貨だろう。
どうやらさっさと俺を王宮から追い返したいらしい。
俺もここにいるのはごめんだが。
「ありがたきしあわ――」
「そうそう。もうソナタにしてもらう仕事は無くなったぞ。適任がいてな」
「へぇ。それはどなたでございましょう?」
「ソナタに教える必要は無い。それと、もうこの国にも来なくてよいぞ」
「は?」
「以上だ。長旅ご苦労だった。さっさと去れ!」
冷たいなぁ。
「仰せのままに」
出来る限り優雅に一礼し、恨みがましい視線を背中で受けながら王宮を後にした。
薬屋はなぜか平常開店だったし、鍛冶屋のセクハラジジイにもお礼を言いに回った。
『礼の金などいらん。体でしめ――』と言った瞬間にクレアが飛び掛ったので、それを引き剥がすのは苦労を要した。
「一体、どれだけの事したんだコナタ殿は」
「は、はい。返す言葉もございません」
アリジリーナから追われるように街を出る。
「まぁ。気にしてないさ。大方、お金をふんだくったのだろう?」
「……」
なんでバレてるんだろう。
「もうコナタ殿の性格は理解したから並大抵の事は許すさ」
「あ、ありがとう」
スッと手を差し伸べられる。
「色々あったけが、勝手な憶測で罵倒してすまない」
恐らくリベリルドでの決闘の事を言っているんだろうな。
「いえ。僕もクレアを守れるだけの力さえあれば……」
「コナタ殿」
「ん? はい」
「私は女である前に一人の戦士だ。そして勇者の剣だ。私が傷つくのを恐れているならば、戦士になどならないだろう?」
「そうですね」
「もっと頼ってくれ、コナタ殿。私はいくらでも力になる!」
「そうですね。クレアをもっと信じましょう!」
二人で強く、握り合った。
強く、
強く、
強く、
強く、
強く、
強く…………、
「ん? まだ握るんですか?」
「コ ナ タ 殿 !」
「え、え! はい!」
「ニードラゴンによれば、ニードラゴンを疲弊させた所を私に襲わせて、自分は死ぬつもりだったらしいな」
「あ……!」
クレアから逃れようとするが、強く握ってるので離れられない。
もう少しでいい感じに終われてたのに!
「どういうつもりだ!!」
「あ、の。それは……、その……」
やばい。完全に俺が悪いじゃねぇか!?
「それは……、作戦上必要なだけであって……」
「…………い」
「え、なんて?」
「死ぬなんて簡単に思わないでくれ!」
それは、クレアの心の叫びに聞こえた。
その問いに、俺は握手で答えた。強く……そして固く握りしめて。