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これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本人曰く、そうらしい」(クレア談)
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ニートドラゴン

――直後、強大な太陽(メテオバースト)が鮮やかに煌めいた光に、俺は目をつぶった。


 が、直後に襲ってきたのは引き裂かれるような痛みでも、焼かれるような苦痛でもなかった。

 一瞬の浮遊感の後、何かに抱きかかえられるような優しさだった。


「えっ!?」


 目を開けると、そこにはクレアの顔があった。


「クレ……ア?」


 恐る恐るその言葉を口にする。

 どうしてここにいる。もしかしてここは黄泉の世界で、クレアも負けてしまったのか。


「コナタ殿」

「ひ、ひゃい!」


 ドスの効いた声に、情けない声で返答してしまう。


「後で訳を詳しく聞かせて貰うからな」

「は、はい」


 ゆっくり降ろして貰い(お姫様抱っこされていた)、地に立つ。が途中で崩れる、のをクレアに支えてもらう。


「あの、ファフニールは?」

「あの竜なら私の顔をみた瞬間、洞窟の奥へ消えたぞ」


 地面を見ると、足跡が残っている。がその足跡は途中で壁に向かって進み、消えている。


「ファフニール! 出て来いッ!!」


 キンッと響く高い声で洞窟に向かって怒鳴るクレア。


「「!?」」


 直後、近くにある岩が突如大きく震えた。


「お前か?」


 ザクリ。


「ギャァァァァァァ!!」


 叫び声をあげて、岩っぽい色から俺が見ていた黄色に変わる。


「ご、ごほん。わ、我が名は、ファフニール=ミネルワッ!」


 噛んだ。


「ミネルヴァ。な、なんだ。貴様は……何をそんなに……見つめて……」


 ギンッと睨みつけるクレアの視線を受けているファフニールが目をそらした。しかもちょっとずつ声が小さくなっている。


「コナタ殿を、私の仲間をこんなにボロボロにしたのは貴様か!?」

「え。いや……、だって……」

「どうなんだ!」

「は、はい! そうです! すみません!」


 なんだ? 態度がおかしくないか?


「ファフニール。お前まさか……」

「なんだ若造。また八つ裂きに――」

「話を聞いているのか!?」

「す、すいませんっっっ!!」


 二本の足を折りたたみ、長い首を折り曲げて地面に付けている。竜ver土下座か、これは?


「貴方まさか……、女性に弱いのでは……」

「うるさい! そんな訳が――」

「正直に答えろ」

「はい、その通りです……」


 弱いな。この竜。ドラゴンキラーとか余裕で上回る弱点じゃん!


「いや、だって! 生まれてこの方、我は女と接する機会なんて無いに等しかったし! そもそも戦闘職に女がいること事態が反則だ!」

「なんだ? この私を差別するのか?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


 完全にいい負けてら。


「ファフニール。どうしてこんな所に来たんですか?」

「誰が貴様などに――」

「話せ」

「か、畏まりました!」


 いい加減学べよな。


「実は我は元々魔界からコチラに移り住んで来たのでございます」

「何故です?」

「え、っと。それは……」


 歯切れが悪いな。


「どうかしたのか?」

「ひっ! 触らないで下さい! 気絶します!」


 どんだけ女に免疫が無いんだお前は!?


「ええと。社会の厳しさに絶望して、この洞窟に隠れていた……と」

「つまり、どんな仕事か知りませんがその仕事が嫌になってしまい、この洞窟に引きこもっていたと?」

「そんな受け取り方もあるかもしれません」


 ニートじゃねぇか!?


「ニートドラゴンか」

「ん? にーとってなんですか?」

「仕事をしない、する意欲が無い人を指す言葉ですよ」

「失礼な! ありま――」


 否定しろよ! 何、固まってるんだよ!


「ニードラゴンですね」

「不名誉な名前です。撤回を申請したいです」

「いいじゃないか、お前にぴったりだろ」

「……」


 ニードラゴン! 半泣きじゃないか! しかもお前のキャラが二周りほど壊れているんだが!


「ニードラゴン。この洞窟から出て行ってくれないか?」

「嫌です。我はここで死ぬまで暮らすんです! この洞窟から出るもんか!」


 ニートそのままだな。


「言う事が聞けないのか!?」

「ひぃぃぃぃ! で、でも絶対に出ないから!」


 まるで母vs息子の構図だな。



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