表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本人曰く、そうらしい」(クレア談)
23/66

決闘

「この世界の為、この世の人の為、そしてこの町の皆の為に貴方を殺す。ここで決闘をしなさい!」

「いいでしょう。僕が勇者である事実を見せ付けてあげますよ」


 コナタもドラゴンキラーを鞘から引き抜き、私に構えた。


「死ねぇぇぇぇ!」


 咆哮を叫びながら、コナタに向かって上段から切り下ろす。


「物騒ですねぇ」


 渾身を込めた一撃をドラゴンキラーによって防がれる。更に、後方に飛ぶことで、威力を抑えられてしまった。


「はぁ!」


 今度は左下からの切り上げ。しかしそれも斜めに構えたドラゴンキラーに防がれる。


「うりゃぁぁぁぁ!」


 今度は突き出し。しかしそれも見事なさばきによって、鍔迫り合いに持ち込まれる。

 コナタの表情は変わらず、余裕の笑みを崩さない。


「貴様は初めから私を馬鹿にしていたんだろう!」

「なぜそう思うんです?」

「出会った時からそうだった。私に事実を突き付けて。それで、これからの未来を選べだと!? 身寄りの無い私に選択肢など決まっていた!」

「……」

「目上の者も馬鹿にしていた。どうせ私もそう言う目で見ていたんだろう!?」

「……」

「今だってそうだ! そちらから一切打ち込んで来ない。私など舐めるに等しい人間なんだろう!?」

「……」

「どうせ私は、はじめから……、不要な人間だったんだろう!?」

「――ッ!!」


 ガギンッとコナタが弾かれる。

 私は剣を構える。


「壱ノ式・紅蓮!」


 今だ誰にも見せたことが無い奥義・桜花七式だ。これをかわせるはずがない。

 ラビットソードに炎が宿る。怒りの、私の怒りの炎だ。


「おぉぉぉぉ!!!」


 ギャラリーが湧き出した。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ビュンッと剣を薙ぐ。コナタはそれを……避けない!?

 いや、いいんだ。問題無い。私は間違ってはいない。



――『さっきの収穫の一部です』『あ、助かる』

 この薬草が無ければ、実は私は死んでいた。


――『レッドリザードが現れた。テレテテー。此方の攻撃! 鮮やかに皮を剥いだ! レッドリザードの皮を手に入れた! テテテテテー。此方の攻撃! ん。筋肉が硬くて、骨が取り出しにくいな……』

 このコナタの姿を見て、私は笑ったんだっけ。



 違う、私は一体何を考えているんだ!?



――『個人で自由に使って良いお金です。て言っても、こんな端金じゃ、ロクな物を買えないでしょうが』

 このお金で、私は何を買おうと思ったんだっけ。


――『私は勇者の剣だ。幼き頃から夢見てたのが現実になったのだ』

 私は、勇者様のお供をしたかったのだ。



 今、私は何している?


「――ッ!!!」


 勢い良く振るった剣を無理やり止める。

 剣は……コナタの首元の数ミリ隣で停止した。


「よっと」


 軽い掛け声と共に、コナタに剣が返され、そのまま地面に押し戻される。

 そのまま首元に剣が来る。


 殺される。そう悟った。


 自分も殺す気で行ったのだ。それに見合う覚悟があるのだろう。





 しかし、刃が首に届く事は無かった。

 数センチ上で、停止していた。


「この勝負、僕の勝ちですね」


 余裕を持った笑みで、笑われた。


 剣を持っていない左手で、地面の砂を強く、強く、強く、血が出るほど握り締める。


「それでは皆さん。行きましょうか」


 私の負けは、あの四人を死地へ赴かせる事になっていたのだ。それを自分の私情で止めてしまった。


「待――」


 途端に、体の自由が利かなくなる。


……まさか。麻痺の呪文を!?


「お姉さん。銀の宿で預かるように、あの兄ちゃんから聞いてるぜ。負けた後で悔しいだろうが、我慢してくれ」


 私は、コナタ見えなくなるまで四人の背中を押す姿を睨み続けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ