リベリルド到着
「よっと」
竜殺しを手に刃を振るう。
その一薙ぎによってリグラゴブリン―人間の子供のような大きさで、とがった耳を持つ―が切り裂かれる。
「「「キィィ!」」」
次に襲い掛かるリグラゴブリンの首を切り落とす。血が舞うが、自然と何も感じない。
『緑の魔導書を参照。我が身に力を』
「「リーフボールⅥ」」
ユリアとルータが魔法を唱えて敵を吹き飛ばす。クレアとムラウは他のリグラゴブリンを倒したところだ。
「あっさり片付きましたね」
「そうですね。私、たたかいに慣れてきた気がします」
「……」コクコク
「ユーちゃん。俺が守ってやるからぜったい大丈夫だぜ!」
再び歩き出す。その足取りは軽い。なぜならリベリルドは目と鼻の先だからだ。
隣にクレアが寄ってきて耳打ちしてきた。
「そのドラゴンキラー。使い勝手はどうだ?」
「上々ですね。説明しずらいですが、何年も共にしてきた愛剣……までには行きませんが、それに近い何かを感じますね」
「そこそこの切れ味だし。拾い物にしてはかなり上出来だな」
「ええ。全くです。どうやら神様に惚れられているみたいですよ」
「コナタ様! 村です! リベリルドに着きましたよ!」
森の終わりが見える。
その先には、大きな囲いが施された村があった。いや、もう村より町なのでは……どうでもいいか。
一箇所囲いが無い場所―入り口だろう―にたっている重装備を来た男に三人は駆け寄り、何か二、三話すと俺たちに向かって手招きをしてきた。
どうやら話は通ったようだ。
「初めまして。私はこの町の衛兵の一人です」
「こちらこそ。僕の名前は天羽 此方と言います」
「は、はぁ。コナタ様でよろしいのですか?」
「コナタ殿は仮にも勇者であるぞ」
クレアの言葉に、敬礼をし直し『失礼しました!』と改まる。
びびらすなよ……。
「こちらはクレア=アンティクリス。戦士で僕の相棒だよ」
「よろしく」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!」
深々と頭を下げた衛兵。
そんなに畏まらなくても。
「先程話を村長に伝えるように伝令を出しました。直ぐに遣いが来ると思います」
それから数分後、馬に引かれた白い馬車が迎えに来たので、それに乗り込む。
そこから更に数分後、村の一番奥の家の前で降ろされた。
「ようこそおこし下さいました、勇者様。ささ、どうぞこちらへ」
若い青年に案内されるがままに家の中へ進められる。
その中でも一番奥の部屋にある部屋の前へ招かれた。
「ようこそおいでなさいました勇者御一行様」
そこには深々と頭を下げた白髪を生やした老婆がいた。
「私の名前は、アデライデ=カイアーノ。このリベリルドの村長をしております」
「改めまして。僕の名前は天羽 此方と申します。隣にいるのが戦士のクレア=アンティクリスです」
そう言って俺は席に着く。その右斜め後ろに控えていたクレアは、名前を紹介されると一歩前に出て一礼し、再び元の位置に戻った。
流石は元騎士団メンバー。礼儀が完璧だ。
「三人から話はいくらかお聞きしておりますが、やはり断片的な物であり、偏っている場合もございます。どうか直接ご解説願えないでしょうか」
「ええ。私もそのつもりでございました」
「し、失礼します! お、お茶をお持ち致しました」
コトッと白い湯気だ立つお茶が出される。
「ありがとう、オディロン。下がりなさい」
「はい!」
こちらはぎこちなく一礼し、部屋を去る。
「ごめんなさい。礼がなっていなくて」
「いえいえ。僕も似たり寄ったりですよ」
そう言って、お茶を一口飲む村長。
「この村から更に南にある洞窟に魔物が住み着いたのは今から3年前の事でした。村の者がその洞窟を通ってその先の野原へ草を摘みに行こうとしたのですが、その洞窟内で『魔物』の姿を発見したのです」
「失礼。それは『魔物』なんですか?」
「ええ。魔物です。私がその目で確認したわけではありませんが、村の者はそう申しております」
「成る程」
「魔物が住み着いてしまった事を聞いた村の者が討ち取りに行きました。しかし残念ながら……」
「誰一人帰って来なかった。と」
「ええ。その通りです。オディロンの父、ケヴィンも勇敢な男でした。妻を病気で亡くして、男手一つで育てた立派な方でした。しかしやはり魔物には敵わなかったようです。それ以来、冒険者の方にもお力をお貸して頂いておりますが、戦うどころか直ぐに逃げ出す始末。私どもも途方に暮れていました」
「成る程。分かりました」
「あの、見苦しい話で申し訳ないのですが、お金の方は不要と聞いておりますが、真偽はいかがなのでしょうか?」
「ええ。ベンディクト=アンフォンス国王陛下から旅の足しにせよ、といくらか頂いております。不要ですよ」
その言葉に村長は目をキラキラさせて、
「ありがとうございます」
と頭を下げて言った。
2013/9/19 数字の間違いを修正