『行くな』は、行って下さい
ユリア、ムラウ、ルータ、クレアと俺を含めたパーティーは、三人の案内に従ってリベリルドへの道を急いでいた。
不本意であるが、ホラム街での男の忠告が気になるため、周囲には気を配っているが。
「この看板は何だ?」
進行方向に分岐路が現れた。片方は何もないが、もう片方は道を塞ぐように「危険」と書かれた看板が立てられている。
「本当はかんばんがあるのがリベリルドの道だったんですけど、その先にオーク鬼が……ええと、私が八歳の時だったから……二年前に出てきて通れなくなったんです」
「そうだぜ! だから左の道へ行ってローラムの町へ行ってからリベリルトに行くんだ!」
「……」コクコク
「成る程。分かった」
俺は進行方向を決める。
「行くよ」
と言ったのに誰も付いてこない。
「なんで固まっているんです?」
「いやいや、お前、話を聞いていたか!?」
「そっちは危険なんですよ」
「……」コクコク
三人が必死に止めに入る。
俺は呆れ顔で諭す。
「考えてみて下さい。ここらのオーク鬼が倒せない程度で洞窟の魔物が倒せるとは思えないでしょう?」
回り道も面倒だしな。
「む。確かに」
クレアが納得したからか、3人は困って顔を見合わせている。
「それでは私とコナタ殿はこちらから行くとしよう。三人は向こうの道から行くのはどうだ?」
向こうの道、とはつまり、ローラムの事だ。
三人だけであのホラム街へ行けたのだから、決して不可能ではないだろう。それにそこそこの実力を持っていたし、ここらの敵ならなんなく倒せる事だろう。
「……いえ、付いてきます! 本当につよいのか、みてみたいです!」
悩んだ末、ユリアがこちらに歩いてくる。その後ろを無言でルータが付いてきた。
「あぁ、もう! ユーちゃんをきけんなめに合わせられねぇ!」
渋々といった感じで結局全員が来てくれた。
オーク鬼がどんな姿なのか、日本にいた時のRPGゲームを参考にしていいのか分からないが、おおかた間違ってはいないだろう。
「危険」の看板を通り過ぎて暫く。
「地面に人間以外の足跡がありますね」
「ほんとだ。お前、良く気がついた、いてっ」
「前々から思ってたんだけど、コナタさんに向かってお前呼ばわりなんて、ムーくんは何様ですか!」
「ご、ごめんなさい」
ユリアがムラウを叱っている。しっかりしてるなぁ。
「少し前から気付いていたんだけれど、少しずつ足跡の数が増えているんだ。このまま道の真ん中を堂々と歩けば、奇襲は確実だね」
「オーク鬼は鼻が良くて俊敏で、なおかつ堅い皮膚を持つ事で有名だったな。厄介な敵だ。司令塔ブレインモンスターが賢明であればあるほど、群れは大きいらしい」
「弱点とかはありますか?」
「村できいた話です。ここらの森はオーク鬼がいっぱいいるそうなので、なんかいか近くの人をあつめて、ぼうけんしゃの人とたたかいに行ったそうです。そのときにきいた話なんですが、なんでもそのオーク鬼の群れで一番えらい人がをたおせば、オーク鬼は逃げるそうです」
つまり、ブレインモンスターを撃破すれば後は戦う必要が無いんだな。
「ストップ」
俺の小さなかけ声に全員が足を止める。
「これ以上は進まないで下さい」
この食物連鎖の中で生きて行くには、自分の直感を信じることが大事だ。これは俺がこの世界に来て一番に学んだ事である。
「いるのか?」
「多分」
少し目線をきつくしたクレアは、腰の剣に手をかける。
「だ、だいじょうぶなんですか?」
「ゆゆゆユーちゃんは、おおお俺が守るからな!」
「……」コクコク
みんな、緊張してるなぁ。
「よし、オーク鬼討伐のミッションスタートです」