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今年の桜は遅かった。
4月に入って数日、ようやく開花。
「なんか、盛り上がらねぇなぁ……」
高橋和也がつぶやく。
「せっかく高校入るってのにさぁ。なあ遥斗」
「…………」
ヘッドフォンをつけた遥斗が、無言のまま起き上がった。
少しの間窓の外をぼーっと見つめ、また横になる。
「別に、盛り上がっても意味ないし」
「まあそうだけどさぁ……やっと高等部なのに」
和也は物足りなさそうに言った。
「どうせ同じじゃん」
遥斗がめんどくさそうにぼそっと返し、和也に背を向けた。
確かに、中等部から上がって校舎が変わるだけで、周りは見慣れた顔ばかりだ。一応外部の中学校からも受け入れているが、それは極少数であり、それほど刺激はない。
小さくため息をついて、顔を横に向ける。
遥斗はいつも寝付くのが早い。いつの間にか、すーすーと気持ちよさそうに寝息を立てている。
「……外に出てぇなぁ」
聞こえないように小さく言ったつもりが、そうでもなかったようだ。
遥斗が迷惑そうにこちらに顔を向ける。
「出りゃあいいじゃん」
一言そう言うと、遥斗は再び眠りについた。