傍観者の語り
三つめの詩
ごきげんよう、私の名はヘカテー
世界の傍観者というべき存在
タナトスが生命を奪う条件についてならお話しましょう
タナトスが生命を奪うのは
相手の心を傷つけ続けている者が必要条件
自覚していてもしていなくても
その条件は変わりません
無自覚であったなら
彼の所業は理不尽に感じることでしょう
自覚してなおも続けていたなら
受けるべき罰だと許容できるでしょう
どちらも地獄の下層へ落とされるのは変わりません
何故ならば、
心を傷つけ続けていたものにとっては
己に跳ね返ってくる愚行
自業自得だからです
相手の心を傷つけ続けるのをやめた場合についても教えましょう
心を傷つけていたのをやめた場合は
地獄の上層へ落とされるのです
しかし、地獄へ行くのは変わりません
何故ならば、相手の心を傷つけていたという事象は不変なのです
自覚して続けるのをやめたことで
下層へ落ちることはなくなったことを
幸いと思うべきなのです
次に相手の心を傷つけないと
意識して生きた者について教えましょう
彼らはタナトスから生命を奪われることはありません
ですが寿命が尽きることで死ぬことはあります
彼らが行くのは
罪を浄化する地――煉獄なのです
何故、天国に行けないのかについて教えましょう
それは始まりの人間が
創造主である神を裏切り
悪魔の側についたからなのです
それゆえに、人間の魂は罪に染まっているのです
罪に染まっている魂は
直接天国へは行けません
しかし、煉獄を通し魂を浄化すれば
天国へ行けるのです
以上で私が語ることはお終いです
私は傍観者ゆえに介入することはありません
あなたがどこへ行けるのか
それはタナトスが決めることなのです
では、あなたがタナトスに生命を奪わないように
気をつけて死への歩みを続けて行きなさい
生の歩みを始めたからには
死へと向かうのですから
四つめも傍観する者の詩




