小話04
「あ…暑い…」
ジワジワ
ミンミン
夏だと思わせるセミたちの鳴き声。
家に帰るまでの元気もなく、近くの公園のベンチに寝そべっている涼華。
少しばかり木々で影が出来暑さをしのぐことが出来る。
あー、もうこのまま脳みそが溶けそうだ。
と言うか溶けてしまえばいいなどと暑さにやられている頭でぼんやりしていたところ頭上にふと影が落ちる。
「あ」
「パンツ見えるぞ…」
呆れた顔で見下ろしてくる武藤の手にはラムネが2本。
「どうしたの、武藤君こんなところで…」
涼華は制服。
武藤は私服。
今は夏休み。学校に行くメンバーなんて補習か部活か生徒会など限られている。
もちろん涼華は部活でもなければ生徒会でもない。
「んー、お前が補習と聞いて来てみた、どうだった?」
ほれと涼華にラムネを渡す。
起き上がりラムネを受け取る涼華。
どこに売っているのかと頭の隅で考えながらも話に応える。
「無理。どうも、こうも元々基礎が出来てない人間に勉強させようなんて間違ってるんだよ!!」
あー!もー!あついー!とわめく涼華の頭をぽんぽんと軽く叩き、まあまあとなだめる。
「やっぱそんな事だろうと思ったんだよ、今から薺の家に集まるけど、行く?勉強教えてやるよ」
「え、いや、帰ってゲームでもしようかと…」
え、何!?皆で課題終わらせたり!?
まだ夏休み始まったばっかりじゃん!!??
つーか!どちらかと言うと武藤君とか課題とかしなさそうじゃん!!?
と、そこまで言えばペシンと叩かれる。
「お前なぁ〜!!まぁいいやほら行くぞ!」
ぐいっと涼華の腕を掴み無理やり立たせる。
えー!やー!
などど言ってもお構いなしに涼華の腕を掴んだまま歩く武藤。
きちんと逆の手には涼華の鞄を持って。
「…武藤君…」
「何?」
「いや、その、手…」
掴まれたままの腕を見ながら武藤に問いかける涼華。
「お前逃げるだろうが」
「いやいや、大丈夫だって、逃げないからさ!!」
だから離して!!という涼華の言葉など武藤は聞き入れず。
薺の家まできっとこのまま。