Act 20. 弟王子の劇的ビフォーアフター?
じっ、と私を見つめ、わずかに考えこんだ弟王子は頷く。
一緒に戦ってくれますか、という弟王子の声に反応して、ステータス画面に並び、【NEW:ゼルスター=フォン=イシュルスより、パーティ申請がされました、受けますか?】というものが出現した。
今度は迷わず、YESを選択する。
ユニコーンとは、人望―――馬望?―――が違うのである。
ゲームのキャラクターと一緒にするのは、失礼だとはわかっているが、わけありの特殊なキャラクター以外は大抵見えるはず。
すると、ゲームと変わらずに仲間にした相手のステータスが表示された。
【ゼルスター=フォン=イシュルス(14)】 職業:王子(Lv17) サブ職業:聖騎士(Lv8)
HP:551/593
MP:16/16
【筋力】 23
【俊敏】 64
【知性】 37
【直感】 30
【器用】 26
【意思】 21
【魅力】 41
【幸運】 29
【EXP:5421】【次のレベルアップまで78】
【ボーナスポイント】126P
【技能】[集中][剣技][王家の血筋]
【補正】 父の擁護 イシュタル神の加護 イシュルス男児の心意気 ???
秘宝【イシュ加護の純銀羽の一枚】(全+20%)
………うん。
いや、一桁のところもないし、技能もいくつかあるし、補正もついているし、最初の私のステータスよりも断然いいのだけど。
なんか、こう……微妙な気がするのは、なぜだろう。
しかも???って、前にもあったけど、私のレベルだと見れないとか制限がある?
秘宝【イシュ加護の純銀羽の一枚】で全体的に能力が上がっていて、これなのだろうか?
もしかして、王子と騎士っていうのは以外に反対属性の職業なんじゃ………もしくは、結びつきがない、とか。
だから、ステータスが満遍なく上がっている?
ゲーム中では王子が騎士という設定は珍しくもない。
けど考えてみれば、次世代で国を動かすであろう王子が、サブ職に戦闘系が必要なのだろうか。
魔法系ならば、知性が上がるから問題ないと思うが、MP16じゃあ、難しいだろう。
実はイシュルスは戦争ばんばん起きてます!みたいな所だったりするのか?
叔父がいるから、まったくないとは言い切れないけどさ。
考えてみれば、ゲーム内だと王子が前線とか勇者と一緒に旅にとか珍しくないけど、兵の鼓舞で前線に立つとか、そこら辺を旅なんてしてたら、色々とまずいだろうし―――ってか、今も危険な森の中に一緒に来ちゃってるけど。
いや、護身のための騎士なのか?
叔父も王様と騎士を併職していたが、全ステータスにおいて、三桁だったから、あんまり残念な感じなかったけど。
バランスがいいっていえば聞こえがいいけども、兄のように超人的なものがないと、難しい気がする。
そもそも、私と兄がまったく同じステータスでも、兄にまるで勝てる気がしない。
「……ゼル王子……この世界で、ボーナスポイントって、どうやって入れてるの?」
「あの、ぼーなすぽいんと、とは?」
やっぱり、そこからか。
沈黙した私に、弟王子は困ったように眉根を寄せている。
鍛えている時に、無意識に入れているものなのかもしれない。
なんて効率の悪いやり方なのだろう。
これはノリシロみたいなもんだから、頑張れば入る的な曖昧なものなのだろう。私のステータスも時折、ボーナスポイントが勝手に入っているようだし。
「……自分の持っている潜在能力を……意図的に、伸ばす?方法、のようなものって……」
「? ……あ、もしかして……教会の『恩恵』のことですか?」
おお、検索を変えたらヒットした感じが。
どうやら、イシュタル教会でお布施―――かなりの高額なもので、普通の人は受けられないらしいけど―――その人の持っている力を引き出すとかなんとかって、言われているらしい。恩恵を行うのが、教皇や枢機卿の上位クラスらしいので、高いのはしょうがないかもしれないけど。がめついな教会なのに。いや、教会だから、か。
実際、二度ほど王子も受けているらしい。
………受けて、いかほどボーナスポイントを入れてくれたのだろうか?
というか、枢機卿とかの関係はステータス弄れるのか。
話によると、こう何か十字架っぽいものをもって、枢機卿と向き合い、それ専用の宣誓書を読みながら、枢機卿を通じて神に宣誓すると、パワーアップしたような、感じがする、とかしないとか。
薄々予測はしていたけど、仲間のステータスって、私でも弄れるんじゃなかろうか。
そーっと、不思議そうな顔をする王子のステータス画面の矢印を操作しようとするが、まぁ、世の中そんなに甘いものじゃない。
というか、私が『主人公』ではないからかもしれないけど。
兄ならできそうな気がする。
ゲーム中では、仲間になったキャラクターのステータスを弄れるけど―――というか、勝手に入れられたら困るけど―――これって実際は、人格のある人間に対してやると、反則というか、失礼というか。
極端な話、その人の戦闘スタイルを確立しそうで怖い。
だけど、非常事態だし。
私がステータス最初にいじった時、音声認識でも大丈夫だった。
「王子、今から言うこと繰り返して」
「は、はぁ」
「HPに10ポイントプラス」
王子が戸惑いつつ繰り返すと、予想通り、弟王子のステータスのHPには10ポイントが『入れますか?』というように点滅している。
これで、決定と言えば入るのだろう。
王子には恩恵っぽい感じで、能力を割り振ってもいいですか、と問いかけたら、驚いた様子であったけど、少し考えた後、頷いた。
密かに『父の血筋なら、何が起きても不思議じゃないか』と、小さく呟かれた。
…………叔父よ、あんた一体何を起こしたんだ。
「王子……体力、魔力、筋力、敏捷、知性、直感、器用、意思、魅力、幸運の中で、重点的にほしいのってどれ?」
「―――魔力です」
ほぼ即決である。
言ってから、子供のように輝かせていた瞳を、恥ずかしそうに伏せた。
よく考えると弟王子って、まだ14歳なんだけど、王子という立場のせいか、結構大人びている気がする。
私が彼くらいの年の時は………あれ、うん、中二病を患ってた頃だ。
あの頃、異世界来なくて本当によかった。
調子に乗って『ふ、悪魔の封印された右目が疼くぜ!』とか恥ずかしいことやってたかもしれない。
ただ、瞼痙攣したとか、目が痒いだけなのにな。
このファンタジー世界な世界だと、洒落にならずに討伐されそうな気がする。
姉は14歳ぐらいだと、おしゃれに目覚めて可愛いタイプから綺麗タイプになってプロレス技を連発するという凶暴化………兄が14歳だと、血反吐を吐くほどヒャッハー!!ってしてた時だな。
断然大人だな、弟王子。
素直に育ってるし、こうして子供らしい所をみると、微笑ましい。
間違いなく、彼の母親の教育の賜物だろう。
叔父だとしたら、反面教師か。
「僕は……その、魔力がほとんど無いので、魔法どころか、騎士の技能すら使えなくて」
あ~、MP使うもんね。
発動すらしなかったというところだろうか。
「ん。おけ。後、ステータスを騎士寄りにして、体力、筋力、敏捷、あげるけど、いい?」
「え……できるものなのですか?」
「……たぶん」
うーん、でも悩むなぁ。
爽やかな王子みたいな面立ちなのに、我が父っぽい感じの脳筋になったら、まずいか。
兄王子が熊である以上、今後時期王様候補として、弟王子があげられるで
弟王子……やっぱり、ちょっと知性も上げておくか?
だって、上に立つ王族がアホだと、国民やら、配下やら下のものが苦労するのは目に見えているだろうし。
もっと入れたほうが―――いや、今は目の前の戦闘を、いやいや。うーん。
後、幸運に入れておこう。
なんか、薄幸そうな感じがするからという、勝手な理由だけど。
う、まてよ。この人は一生騎士というよりは、王子である時間の方が、長いんだよね……やっぱ騎士よりのステータスにしたら問題があるだろうか??
王子がぜんぜん国政できないとかなったら、それはそれで問題が。
………全部は使わず、少しは残しておこう。
ってか、私、体力入れてないから、こんなに疲労するのか?
自分のならまだいいけど、人様の悩む―――でも、とりあえず、ざっくり入れてみよう。
もし駄目だったら、弟王子の要望を聞いて、もう少し調整するか。
「王子、今から言う言葉、繰り返して」
「は、はい」
「MPにポイント20プラス 筋力にポイント10プラス、敏捷にポイント10プラス 知性にポイント3プラス、幸運にポイント10プラス。全部、ボーナスポイント決定」
それだけ?という顔をしていたが、弟王子が繰り返した。
私はステータス見ながらだが、一回で王子は暗記したらしくすらすらと告げた。
「ボーナスポイント、決定――――…え?」
点滅していた数字が、ステータスに入った。
うむ、我ながら、14歳の少年のステータスにしては、結構高い方になったのではなかろうか?
というか、ボーナスポイントが結構少ないな。
技能も習得させたかったんだけど、今回は見送っておこう。
【ゼルスター=フォン=イシュルス(14)】 職業:王子(Lv17) サブ職業:聖騎士(Lv8)
HP:551/693
MP:16/216
【筋力】 33
【俊敏】 74
【知性】 40
【直感】 30
【器用】 26
【意思】 21
【魅力】 41
【幸運】 39
【EXP:5421】【次のレベルアップまで78】
【ボーナスポイント】63P
【技能】[集中][剣技][王家の血筋]
【補正】 父の擁護 イシュタル神の加護 イシュルス男児の心意気 ???
秘宝【イシュ加護の純銀羽の一枚】(全+20%)
効果がわかるようで、たぶん体を動かせばもっとわかるはず。
私の時も、この高揚みたいなのに、慣れるまで戸惑った記憶がある。
ゴブリン戦の時だったから、動いて慣れたといった感じじゃなかっただろうか。
内側から力があふれてくる!みたいな。
ってか、これ相手の言葉だけでも、同意を得なくちゃ入れられないという、設定?のようだ。最後の最後でゲームではない感じが微妙。
うむ、半強制的に勝手に入れちゃったけど……強く生きろ。王子。
弟王子のステータスがアップしたことで、私もなんだか気分がいいというか、内側から力があふれてくる感じ………あれ、ちょっと、なんか、額に冷や汗かいているけど、私。
っと。やべ。
青い宝石みたいな目玉をひん剥いて驚いている様子の弟王子であったが、くらりと貧血でも起こしたように頭を抑えて、木に手をついた。
魔力16しかないってことは、かなりきつい状態だろう。
顔面から血の気が引いて、遂には地面に膝をついて、呼吸を荒くしている。
というか、なんだろう。
動いたら私もつられたように頭が、ちょっぴり、くらっとしたな、今。
わかっている……わかっているよ。
でも、現実を見たくない、私の気持ちにもなってくれ。
「ごめん……一気に、魔力あげたから」
料理長のカバンからMP回復薬を取り出して飲ませた。
「魔力が、上がったから、貧血、が??」
なんて説明していいのかわからず考え込むと、怪しい色の液体を飲み干して、荒い息を整えながら、不思議そうに私を見上げている。
60ぐらいになったけど、まだ半分にも至っていない。
まだキツイのかもしれない。
「………さっきまでの、ゼル王子の魔力が16だとすると」
というか、本当に16だったんだけどね。
二本目を飲みながら、『じゅ、じゅうろく』とか、弟王子がっくりされているけど。
「今、216になったから」
「に、にひゃく―――えぇ!?」
と、勢いよく立ち上がったが、すぐに眩暈がしたのか木に凭れる。
「大丈夫ですか、王子?」
弟王子の奇声に、地獄の二丁目ぐらいまで旅立っていた騎士(目つき悪)が、がばりと起き上がって近づいてきた。
「あ、いや僕は大丈夫……ハーン、ミィコ殿、少し下がってもらっても」
「は、はぁ……わかりました」
騎士(目つき悪)もよくわからんようだけど、とりあえず私も頷いて下がると、弟王子が凭れていた木と向き合って、剣を抜いた。
短く空気を吐き出すと、木に対し、斜めに剣を振り下ろした。
鋭い剣戟。
手元が加速したような感じだ。
ひゅ、と空気を裂くような音と、剣が淡い光のエフェクトを纏い、私の手元でログが発生した。
=== ゼルスターはスキル【スラッシュ】を発動した。
木は何にも反応を示さなかったが、一拍おいて、斜めに切り落とされた姿で音を上げて地面に転がった。
私の腕をまわして手首を掴めるぐらいだが、それでも決して細い幹ではない。
ちらっと、スラッシュの概要を眺めると、MPが20消費するスキルだったようだ。
王子は慣れない量のMPを消費したためか、先ほどの余韻か、ふらふらしながらも感無量といった様子で、目尻に涙を浮かべている。
……後MP4足りなくて、スキルが発動できないなんて。
「ミィコ殿!!やりました!!僕、僕にも、騎士の技が!ありがとうございます!!」
今にも飛び跳ねそうな、テンションの高い弟王子。
やや千鳥足だけども、私の手をとって、ぶんぶんと上下に振りまわしている。
というか、『お、王子っ…』と感動しているっぽいのに、恐ろしく視線の鋭さがかわらない、騎士(目つき悪)の涙が怖すぎるけど。
一体、なにがなんやら。
「ミィコ殿、あの、もしかして何か、今のことで無理を?」
テンションの高い彼に対して、私は少し青ざめていたことだろう。
聡い王子には見破られているようだった。
「いや……自分のことで失敗した」
す、すすす、と、弟王子から、視線を逸らしつつ、空を仰いだ。
ステータスは音声認識である。
弟王子のことに集中しすぎて、忘れていたが………もちろん、私のステータスも、音声認識ができるのである。
つまり。
【岸田 真実子(18)】 職業:盗賊(Lv14) サブ職業:吟遊詩人(Lv5)
HP:320/427
MP:258/468(+5)
【筋力】 56(+3)
【俊敏】 131(+5)
【知性】 34
【直感】 198(+3)
【器用】 48(+3)
【意思】 30
【魅力】 36
【幸運】 123(+11)
【EXP:7398】【次のレベルアップまで:428】
【ボーナスポイント】317P
【技能】[悪運][調査][一枚の壁]
[集中][第六感][敵索]
[五感強化][俊足]
[精霊ホイホイ][盗み][気配遮断][必中][鍵開け]
[風読み][音響拡大]
【補正】 母の慈愛 父の加護 叔父の擁護 パティカ神の加護 イシュタル神の加護
闇属性15%耐性
初歩的ミスである。
音声認識なのだから、自分の分も入っていたという間抜けな事をしてしまった。
ぜんぜん自分のステータスなんて、みてなかったから………ふ、これは涙ではない!心の汗である!
どうりで、枢機卿やらは宣誓書?のようなものを読ませるといったが、自分たちのボーナスポイントを誤って入れないように、するためだろう。たぶん。
心の汗を流していると、恐ろしい追い討ちが。
そうして、ユニコーンのお友達をどうしようか、という話し合いが止まっていた。
全員の刺さるような視線が、こっちを向いている。
特に、兄の一際、爽やかな笑顔が怖い。
「ミコ」
がしっと、兄に肩を組まれたはずなのに、なぜか崖から突き落とされそうな危機感が背筋を走る。
よくわからないが、本能的に私は首をぶんぶん、と横に振っていた。
ちがう、わたしちがうアルよ!―――と中国人的なあれで脳内否定したが、逃げられそうにないことを悟っていた。
心の汗は止まったけど、背中は冷や汗が流れる。
きらっきらの兄の笑顔ではあるが、目が笑っていないのが原因だろう。
「ちょっと、あっちでお兄ちゃんとO・HA・NA・SIしようか」




