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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
三日目 【冒険者の卵】
88/119

Act 17. ユニコーン、はじめまして

 皆は、こんな経験あるだろうか?


 新しい携帯を買って、性能を学んだり、用もないのに電話かけたり、試しにメール送ってみたりと、楽しく過ごしている。


 しかし何日か過ぎて、突如知らないメールが届く。


 あれ?

 登録してないけど、知り合いかな?


 そう思って、開いたら――――なんと、迷惑メール!!



 もう、最悪!



 なんて、それを削除するわけだ。



 だけど、それから数日、朝も夜も関係なく迷惑メールが。


 しかも新しい携帯だから、マナーモードにか辛うじてできたのに、拒否設定がわからない。その上、今度はタイトルからして、口にするのも憚られるようなものばかり。


 このURLを押したら、料金とか面倒ごと発生しちゃう!


 わかっているのに、メールを止められない、この恐怖!また朝方三時とかにメールくるんじゃないの!?と慄くわけだ。




 それを、まさか―――――異世界で味わうことになろうとは。






  +  +  +




 


 カントリー風林檎ケーキを分け終えて―――弟王子よ……いつのまにか近距離に移動してきて、ガン見するのはやめて―――馬の鳴き声と共に、眼前に新たに出てきたウィンドウが現れた。


 イシュタル神からよりも、開けるのを躊躇うタイトルであった。




 NEW 【誰か!誰か、たす―――野太い声が聞こえたけど、できたら5歳から、16歳ぐらいまでの、新鮮(ピチピチ)乙女(ぎゃる)で、お願いします!いえーすろりろり!のーたっち!ぎぶみー!今ならもれなく、お礼にわっちの鬣付!―――けて~!!】




 ………これは、黙殺(シカト)してもいい部類のメールだろう。


 完全なる迷惑メールである。


 マップ画面に青い点が端っこから入ってくる。


 馬の鳴き声から察するに、たぶん送信者が馬に乗って近づいてきているだろう。




「ミコ」




 情報を求める兄に、簡潔かつ正確に流した。




「一つ、青、変態」




 完璧である。

 この少ない情報ではあるが、聖徳太子のごとく、容易に兄ならば理解するだろう。


 私はメールを開けることなく、カントリー風林檎ケーキもどきを齧った。



 その時である。



 ひひーん、と再び、馬の嘶きが、近くで聞こえた。

 



 NEW 【や、やべ!久々に森で全速力したから、わっちの自慢の金髪に、小枝に絡まってびびった(笑)風魔法で粉砕したけど、その破片、日頃からお手入れしている美しい白いお肌に当たって痛かったし orz 明日青痣になってたらお婿にいけない!美少女(5歳~16歳まで)よ、傷ついたわっちの繊細な心をいやし――――】




 しかも、ロリコンな上にナルシストか!!

 

 タイトル長すぎ!しかも、タイトル長すぎて途中で切れた!

 まさかの、イシュタル神を上回るウザさ!


 タイトルでこれなら、本編の長さはいかほどになるというのか。



 背筋に走る嫌悪感を我慢し、全世界の可愛い少女たちの為に、私は立ち上がった。


 

 まだ見ぬ、従姉妹マドレーヌ―――たぶん、弟王子の妹なのだから、超美人には間違いないだろう―――と、ルイの為にといっても過言ではない。 


 

 が、現れた馬の上に騎乗しているものはいなかった。

 

 馬はよく見ると、ファンタジーではお約束の角の生えたユニコーンである。

 ただ角が透明で、鬣が金髪の白馬。


 髪の毛→鬣。

 白い肌→白馬。


 送信者は、お前か!!!と突っ込みは当然であった。



 金髪騎士の慌てっぷりから、やっぱりテンプレ的に、神の使いとかで保護されちゃっているようだった。



 NEW 【やっとついたぜ!さあ、美少女達よ!わっちの話を聞いてくれ―――って、むさ!むっさい!むせい!驚きで三段活用しちゃったよ!なんて、雄率の高さだ!!すごい雄の匂いしかせんわ!わっちを窒息死させる気か!】




 やっぱり、このメールが見えているのは、私だ―――




 NEW 【なんてことだ……この世に神はいないのか!!とくによぅじょな女神は!というか、わっちはそれ以外、神とは認めん!というか、やだやだやだ!】




 もしかしたら、兄もメガネをかければ見え―――




 NEW 【ノンノン、呼ばないでエルフ(じんこうろり)!あいつら天然の若さじゃねぇんだよ!?実際はすんごいんだよ!?十歳ぐらいの容姿で、50歳近いとかだよ!?おまけに横暴なんだよ!】




 早っ!メール、早っ!

 つーか、思考駄々漏れなんですけど!?


 タイトルですら、全部読み終わる前に新着表示されて、前のメール流れるし!




 NEW 【つーか、わっちの話、誰も聞いてねぇし!なに身内で相談しまくってんだよ!おまいら雄の尻を追っかけなければいけないなんて、どんな拷問!猿人なんて、おそわねぇよ!?雄なんておそわねぇよ!?美少女なら違う意味で美尻追いかけちゃうけど!?】




 なんか嫌だ。


 この馬の意思(メール)が分かるとか、身内に告げるのが嫌だ。



 むしろ、私の名誉に傷がつくから!



 面倒な争いは避けるに限るが……ヤダ。

 できれば、このまま華麗にスルーしたいんですけど。逃げるの大賛成!




 NEW 【いや、雄どもだが、わっちは頑張るよ!我が友(ブラザー)の危機の為に今立ち上がって頑張るけども、雄相手に……ってか、なんで森の中に美少女の一人や二人や、十八人ぐらい落ちてないんだ!】




 この危険な森の中に、普通の美少女がいたら、確実に死ぬわ!

 すぐに奔って森の入り口目指すに決まってるだろ!


 ってか、なんで十八人!


 突っ込みどころが多すぎて……ん?ブラザー?助けてほしいってことか?




「ミィコ殿!下がって!」




 途端に大きく嘶いたユニコーンに、ジークが叫び、私に手を伸ばす。

 どうやら、どこか分からないが、また独り言を零したようだ。


 しかし、先にやらねばならないことがある。




 NEW 【お、うぉお!!!乙女(ぎゃる)じゃないのに、わっちの話が通じるのか!この年増は!!】




 誰が年増だ!

 私は、まだ十八歳だ!!



 反射的に出た拳が、ユニコーンの横っ面を捕らえた。

 そのまま、叫び(メール)ながら、近くの木を前足で蹴っている。




 NEW 【いきなり殴るなんて、しどい!!母様と、お婆様と、近所のさっちゃんと、ヴィオルドファングと、我が友(ブラザー)と、出会い頭に、頬を舐めちゃった美少女のお父さんにしか殴られたことないのに!】




 ジークからの問いもそこそこに、私は素早く兄の背後に逃げ込んだ。

 

 心境的には、がくがく、ぶるぶる、である。メール機能が……悪徳業者に知れ渡ったアドレスみたいに、絶え間なく、メールを受信し続けている。



 すまない、ルイとマドレーヌよ。強く生きてくれ。

 この強敵に、私は勝てそうにありません。




 私はそっと、眼鏡を外した。


=== ユニコーンは、脳内会議の結果、満場一致で、有害指定に決定いたしました。

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