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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
一日目 【真実子の長い一日】
35/119

Act 34. 話の終わり

 ぱしゅん。



 

 なんか、缶のプルタブ――あの指入れる輪の部分ね――を開けたような音。


 それが響いたな、とか、思ったら、光。

 溢れるような光の帯が足元から一瞬に、目の前を覆った。



 って、私さっきと同じこと思ってない?



 つまり、は。



 扉。本棚。本棚。兄。姉。母。父。


 まだ兄と宰相はごちゃごちゃ話し合っているあたりで、一番後ろの私がよく分からないところに吹っ飛んでたのは気がついていない様子だった。


 よかったぁ、戻ってきたよぅ。

 う、うぅううっ、謎の爺甲冑(人でなし)に変なもの飲まされたよー。


 土下座の状態から、よろよろと立ちあがる。


 近場にいた父―――をすり抜けて、姉に抱きつく。



「冷っ…あんた、どうしたの?」


 

 姉の体がびくっと跳ね上がる。


 後ろから抱きついた私を改めて前から抱きつくように促され、私は素直に従った。

 

 ぎゅうぎゅうと、私が抱きつくと、姉は冷え切った体を擦った。

 

 ありがとうごぜーますだー。

 温い。温い。



「具合悪いの?」



 いえいえ、ちょっと変な甲冑老人(空)にコインは飲まされましたが。

 それを説明すると、姉にジャイアントスイング食らう覚悟をせねばならないので、やめておこう。


 迷子になってませんよー。

 あれは、不可抗力ですよー。


 私は首を横に振って、違うとアピールしておく。



「そう、なの……まぁ、いいけど、なんかあったら、あたしにちゃんというのよ?」



 あい、ご迷惑をおかけしておりやす。


 というか、どうやって帰ってきたのか、さっぱりなんですけど。

 あの甲冑老人が、私の気がつかない間に、帰してくれたんだろうか??


 変なイベントにかかわってしまったような気がする。


 あんまり、かかわりたくないんですけども―――まあいいや、何か起きても兄がどうにかするだろう。がんばれ、兄。



「ミコ、どうした?疲れたのか?」



 父も気がついて、姉と同じように小声で話しかけてくるが、首を横に振って誤魔化す。

 

 そうか、と父が私の頭をぽんぽんと叩いた。

 いつもなら『子ども扱いするな、このたーこ』と噛み付く手を、今日は甘んじて受け入れよう。


 あの部屋は肌寒かった…という、大義名分もあるし。


 ち、違うからね。別に不安になったとかじゃないからね、と密かにつんでれも発動しておこう。


 半泣きになっていたのか、姉が涙を親指で拭って、頭をナデナデする。

 今更ながら恥ずかしくなったが、姉に顔を埋めて誤魔化した。


 あー本当にびっくらこいた。


 あれって、多分財宝とか守ってる『彷徨える鎧』系統の奴だよね??

 魔力で半永久的に動くとか、死んだ人間の魂が入ってるとか、入ってないとか。


 ゲームの画面上では見たことがあるだろうけど、実際目の前に現れたのとは全然違ったし、絵の中から出てきパターンは初めてだよ。

 

 ゴブリンは意思も通じないし、襲ってくるから獣的な感じが最初からしたけど。

 

 ……ていうか、ホラー系でしかないよ。あやつは。


 駄目だ。

 そっち系統は、拒絶反応が。


 見よ、この鳥肌!いや、袖まくってないけど。


 言葉が通じなかったら、即モンスター……あれ??ちょっとまてよ?普通『彷徨える鎧』って喋んないんじゃない??


 しかも、自分の意思があったというか、妙にお爺ちゃん的な方向で、人間臭かったというか。


 後、危害も加えてこなかった――いや、コインは飲まされたけど。

 何がしたかったんだ?嫌がらせ??


  

「ふぅ…少し話が脱線したな」

「失礼しました」

「いや、それはお前のせいではない。私の好奇心のためだ」



 静寂が落ちて、どうやら話が纏まったのか、終わったのか、赤毛の宰相は瞼を閉じた。


 どうやら、ゴブリンいっぱいくるよー的な話は伝わったらしい。

 うむ、頑張ったな。兄が。



「お前は、ゴブリンの大群がくるという意見を変える気はないのだな」

「ええ、残念ながら」

「わかった…今日はここまでにしておこう」



 頷く兄に、宰相は瞳を開けると、薄く自嘲を浮かべた。


 ようやく話は終わり、どっかの部屋に案内してくれるらしい。


 実は強がっておりますが、異世界、ゴブリン対決、姉のアイアンクロー、コブラツイスト、コブラツイスト、長時間のドライブ、コイン、ぐらいの比率で疲労が蓄積しております。


 特に姉で。


 たぶん、今振り返っても直接のダメージを受けたのって、あれじゃないか。

 かすり傷とかは別としても。


 ともかく、さばっと、一風呂浴びて、ベットにダイブしたい気分であります。


 ふっかふかのベットを用意しろとは言わないけど、せめて熊の腹並に心地のよいベットでお願いします。


 枕は猫の形の低反発枕があるので、結構です。

 というか、それがないと寝れません。


 いや、でもこの疲労ぐあいなら、どこでも寝れそうな気もしなくもないが。


 

 宰相が己の眉を撫で、ため息をつく。






「―――では、お前たちを部屋・・に案内させよう」






 と、厳かな声で、宰相は言った。





 ・


 ・


 ・


 ・


 ・





 

「な、なんでやねんっ!?」



 兄に対し、私は両親と姉の心の声を代弁して、叫んだ。


 牢屋越しに・・・・・



短っ!なんか、短いよね話!

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