表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
一日目 【真実子の長い一日】
27/119

Act 26. 一発殴れますか?

 とりあえず、周囲に虫除けスプレーを撒き散らす。


 基本的に煩い。


 つーか、時折頭触ったり、肩に乗っかってないか?

 

 なんか感触があるんだよね。怖い…怖すぎる…小さな手の感触がいたるところに…透明人間に体を触られて―――セクハラ!セクハラ禁止!

 

 こう幽霊に取り憑かれた人の感じがなんとなく分かる。

 いずれ肩こりが起こるであろう重みだ。

 

 やだー。すげー、やだー。


 あと、耳の奥が山頂にいるみたいにキーンってなるんだけど。


 私がホラー好きじゃないって知ってての狼藉??



「ヴぉはっ!!だめ!そんなことしたら、精霊遠ざかってるし!」



 いや、遠ざけてるんですけど。

 

 煩いんですけど。

 怖いんですけど。


 慌てる騎士(チャラい)はガン無視して、音のする方向にシューと一吹き。

 

 後々、このスキルが、役立つかもしれないが、とりあえず今はいい。


 見えないから、私には恐怖しかないよ。

 っていうか、みえたらみえたで、恐怖だけども。


 始終、誰かに触られたり乗っかられたり、ほっぺをつんつんされる生活なんてやだ。


 臭くなってきたので窓を開けておくか。


 姉に殺されそうだし、うん、ごめん。


 あ~…無言で睨まないで、恐怖死するから、臆病者私。

 私のせいじゃないよ!文句なら、神様にいってくれ!神様に!



「ミコは見えてないのか?」



 精霊どころか、幽霊すら見たことないから、私。

 てか、兄、見えてるのかいな?


 凄いな。チート、チートと思っていたけど、実は幽霊まで見えていたんだよね。みたいな。


 いたこ――あれ、男の霊媒師ってなんていうんだっけ?



「いや、俺も見えてない……あぁ、そうか、確かに煩いな。っつか、言われてみれば、耳の奥がキーンってなるな。や、虫除けスプレーじゃ撃退できないと思うが」

「いや、その虫避けすぷれーとかで、すごい遠ざかってるんだけど!?」


 

 そうか…精霊って、虫だったんだ。

 知らなかった。ってか、私の世界に精霊なんていないから、知ってた方がすごいか。

 

 異世界、新発見だね。



「ミコ、多分だが精霊は昆虫類に分類されないとおもうぞ」

「………精霊は昆虫ではありません」



 騎士(毒抜き)が青ざめた様子で、がっくりと肩を落としている。



「ご自分の命が惜しいのでしたら、神官の前で、そのようなことを言わないでください」



 私言ってないから。

 兄が勝手に、人の心を読んでいってるだけだから。


 殺されるのは兄のみだな。


 

「精霊は、一部の魔力の高い人間にしか見えませんし、教会で神聖視されておりますので」

「すまんすまん。でも思ってたのは、ミコだから。殺されるとしたらミコだけだな」



 同じ事思ってるよ。


 兄と同じこと思ってるなんて、私なんて嫌なやつなのだろう。

 あんなおっかない思考の兄と一緒だなんて。う、うぅ。


 あれ、もしかして、騎士(チャラい)は実家がお金持ちな上に、魔力が高い??


 それはさておき、耳がキーンとしなくなってきたところで、もう一度、ステータス表示。





  【岸田 真実子(18)】 職業:盗賊(Lv5) サブ職業:専門学生(Lv12.)


    HP:112/242

    MP:34/154(+5)


   【筋力】 22

   【俊敏】 78(+5)

   【知性】 19

   【直感】 134(+3)

   【器用】 26(+3)

   【意思】 18

   【魅力】 21

   【幸運】 87(+11)


   【技能】 [悪運グットラック] [調査サーチ] [一枚の壁クール

        [集中(ゴンティッド)][虫の知らせ(シェバ・ティーユ)][敵索(サーチ)

        [五感強化(ファイブセンス)][俊足ファーストラン

     [精霊ホイホイ(マナ・ゲット)] 


   【補正】 母の慈愛 父の加護 パティカ神の加護 イシュタル神の加護


   【EXP:4761】  【次のレベルアップまで:11】


   【ボーナスポイント】 471P





 なんか、技能が3行もあると強そうだ。

 しかも、イシュタル神の加護のせいなのか、直感、MPにポイント加算されてるし。


 てか、技能のオンオフとかないのかな。

 精霊ホイホイいらないんだけど。


 まぁ、でも、ふふふ、この数時間で、ステータス倍ぐらいになってない?


 直感だけだけど、3桁超えてるし…にやり。 


 兄を倒すのは無理そうだけど、王子に王家の秘宝を返したから、私だって一発殴るぐらいは――……





   【岸田 雅美(25)】 職業:戦士(Lv13) サブ職業:ゲーマー(Lv37)


    HP:541/1455 (+50)(+2%)

    MP:37/311 (+2%)


   【筋力】 132 (+5)(+2%)

   【俊敏】 104 (+5)(+2%)

   【知性】 121 (+2%)

   【直感】 79 (+2%)

   【器用】 51 (+3)(+2%)

   【精神】 108 (+2%)

   【魅力】 112 (+2%)

   【幸運】 42 (+7)(+2%)


   【技能】 [策略(アティッフス)] [不幸中の幸い(ピンポイントラック)]

        [一枚の壁(クール)]  [剣技ソードガレ] [守護盾(ドウシールド)]

        [底力クライアッパー]  [慧眼ハイアイ] [調査サーチ] 

        [五感強化(ファイブセンス)


   【補正】 母の慈愛 父の加護 マルス神の寵愛 天才補正

   

   【EXP:7928】  【次のレベルアップまで:319】


   【ボーナスポイント】 97 P






 無理。

 絶対、無理。


 てか、天才補正ってなに!?

 ゴブリンとの戦闘終わったとき、そんなのなかったよね?ね?


 私がみてなかっただけ?

 ざくっとしかみてなかったけどさ。


 私、使えるか使えないかよく分からない技能が8個になって喜んでいる場合じゃないよ!?

 兄も技能が増えてる上に、直感と器用と幸運以外、三桁超えてるし――ってか、頭でっかちムキムキマッチョかいな!


 HPにいたっては、まさかの千超え!

 騎士(目つき悪)のHPを、完全に勝っちゃってるし!


 騎士たちだって、さっきレベル上がって最高でも騎士(毒抜き)がレベル26とかなのに、兄、初期職業とはいえもうLv13だよ。


 鬼だ。チートだ。なんて羨ましい。


 無理だ…兄の本気の一撃で、死ねる自信がある。

 くどい様だが、私は盗賊レベル5だから……。



「ははは、気にするな。ミコ。精霊ホイホイも、技能っちゃ、技能だからな」 



 そう思うなら、爽やかな笑い声を止めろ―――ってか、せめて『マナ・ゲット』って呼んでよ!

 ゴロ悪いけど。



「なに、そのゴ●ブリホイホイみたいなの?」

「あぁ、話すと長いんだがなぁ――ミコ、魔石を振り上げるのはやめなさい。お兄ちゃん、逃げ場ないし周囲に被害被るから」



 大丈夫、私のコントロールならば、兄のみを抹殺できるから!


 超テンション下がるよね。やる気でない。


 あ、でも待てよ?

 私、まだボーナスポイントあるんだし、それ使えばいいんじゃないの?

  

 よし、兄に魔石を放り投げるのは、後にして―――……




NEW 【盗みLv1】 15P

NEW 【気配遮断LV1】 40P

NEW 【必中LV1】 30P

NEW 【鍵開けLv1】 20P




 ふははは、全部、技能を修得してくれるわ~~!!!


 なんとなく技能の豪華さ…いや、豪華じゃないけど、多さで兄に勝っておこう。うん。

 そこ以外に勝るところないし。


 ボーナスポイントは471Pあるから、ドカンと俊敏に22入れてぴったり、100にしよう。



「っていうか、ミコ」



 ん、なにかね、姉。

 私今忙しいんですけど?


 兄を倒すのはあきらめましたが、一発殴るための下準備で――そして、そのまま逃走するという輝かしい未来に向かって。



「なにかぶつぶついいながら、百面相してるわよ?」



 え、えええ~~~!!!!!


 まぢで??独り言いってるの?百面相してるの、私。



「……気がついてなかったの?っていうのか、今まで自覚なかったの」



 全然。

 

 にやにや、ぐらいはしてたかもしれないけど、それ以外の表情は顔には出してないと思ったんですけど、なに、じゃあ、ずっとぶつぶつ言い続けてたのか?



「さっきも、3行とか、兄、殴るとか…」

「お~…??喧嘩なら、ネット販売でも買うぞー?兄弟喧嘩で殴り合いとかも楽しそうだな」

 


 こわっ!!

 兄、こわっ!!


 にっこりと、人の良さそうな顔をして、目が輝いてるよ。

 胡散くさい!胡散くさすぎ!!


 楽しそうとかいうなっ!絶対一方的にサンドバックされて終わりだっちゅーねん。

 

 天才補正の持つ戦士レベル13に対して、私――しつこいようだが、レベル5だからね?普通の盗賊の――が喧嘩を売るはずもない。


 自分、なんかむかつくんで、兄、殴りたいだけですから。


 応戦されたら、3回ぐらい死ぬし。



「やめなさい。ミコ死ぬから」



 うん、うん。

 姉はわかってるね。



「大体ね、その『ごぶりん』ってのと戦うのは兄さんの勝手だけど、それにミコを巻き込まないでよ」



 そうそう、兄は勝手だよね。私、大変迷惑して――って、あんたがレンチ渡して、外に放り出したんだろうが!!誰だよ!兄と一緒に行けっていったやつ!!


 元凶はお前だ!



「顔に傷が残ったらどうするのよ。お婿にいけなくなるじゃない」



 そうだね、顔に傷は男の勲章――って、え、婿?お嫁にいけない、じゃないの??


 姉、何度も言うけど、私、妹だよ。


 口は悪いし、家族好きだし、ゲーム好きだし、時々やんちゃもしちゃうけど、股間の間に、ゾウさんはブラブラしてないんだよ?


 しかも、なんで、婿入り限定なんですか?

 

 いや、騎士(毒抜き)よ。

 そこで嬉しそうに、目を輝かされても。


 よしよし、って額の擦り傷を優しくナデナデされても、なんか納得いかないのは私だけですか……?



「いやぁ~…あんなに出てくるとは。別にたいしたことなかったよな、ミコ」



 あったよ!!

 たいしたことあったよ!


 レベル1の盗賊を、弓兵のゴブリン3体と戦わせようとしてたでしょ!

 

 あ、これ、死んだな―――って思ったのは、4,5回どころじゃないし、魔石なかったら死んでたよ!


 体力回復薬ポーションとか、あんなに大量にゴブリンが持ってなかったら、兄だって死んで―――



 ……。

 …………。



 ―――んん、私死んでも、兄は普通に生き残ってるような気もするけど。


 ともかく、騎士(毒抜き)は確実に死んでたよ。

 まったく。

 

 行き当たりばったりとか、その場のノリとかで、突っ走るのやめなさーい、って父に前言われたんでしょ?

 まぁ、兄なら、それでもチート能力で乗り切っちゃうだろうけどさー。


 はぁああ、チートな兄を持つと苦労するねー。



 しかし、なんでゴブリンは、あんなに大量に体力回復薬ポーション持ってたんだろう。


 ゴブリン、準備よすぎだろ。

 これが兄のチート能力の付属というのなら、殴るということを考え直さないといけないかなぁ。


 いや、あれほどの集団でゴブリンはみかけないっていうし。


 もしかすると、どっかの村でも襲う気で、準備して森の中をうろうろしてたんだろうか?

 数えてないけど、30体以上の死体はあったよね?


 騎士クラスでも、ゴブリン2,3体でも倒すのが難しい――うん、兄はぼこぼこ倒しておりましたけど――んだから、普通の村人じゃかなわないだろう。


 この世界では意外に、ゴブリンは強いらしいし。

 子供程度に頭は回るんだって。


 スライムと同じくらいの雑魚キャラかと思ってたけど、違ったのね。



 …?

 あれ…?


 いま、なんか、すごく引っかかった。


 さらっと、流していい考えじゃ、ない、気がする―――な、んだろ?




 すごく、不安になってきた。




 ゴブリンはどこかの村を襲う気だとしても、全部、兄と騎士が倒したから大丈夫なはずなのに、不安がとまらない。


 これが水に墨を垂らすようにというのだろうか。



 もしかして、兄が苦しそうに、してたのに、関係がある……?

 家族が城に滞在するのに、快くない原因?

 



「―――っ!!!」




 私は立ち上がり、兄が仕舞った魔石の入ったコンビニの袋に手をかけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ