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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
一日目 【真実子の長い一日】
25/119

Act 24. ホットサンドって、美味しいよね

 兄と、私の睨みあい。


 家族も滅多にあることのない私たちの意見の衝突?に、車の中は緊迫を孕んでいた。


 思考が中断されて、集まりかけていたピースが、ばらばらと散らばっていく。

 残念だが、完全に集中力が失われていく。 


 絶対何かある。

 兄が何か隠している気がする。

 

 私の勘はそう告げている。


 べつに全てを曝け出せといってるわけじゃない、兄が家族に秘密があったっていい、私だって家族に秘密がひとつやふたつぐらいある。


 え、中身?そりゃ、むにゃむにゃ~~…言えない。

 

 言えるわけがないっス。

 顔から火が出るっつーか、末代までの恥っていうか、うん。秘密は秘密。



 だけど、私には兄が、なにかに苦しんでいるように―――





 ぐうううううううう~~~~~~





 ようにみえて……うん、なんだっけ??


 

 思考をさらに何か妙な音が遮る。

 岸田家に訪れたシリアスムードは一気に霧散していく。






 ぐぅうおおおおお~~~~~~~






 私、ずっこけかけたよ、今?!!よりによって今!?誰!?つーか、なに??



「ん?なんのかしら?」


 

 そうだね、なんか変な音するんだけど。


 狼が遠吠えしているような――でも、車内で聞こえてるので、耳を澄ますと、すごく近い。


 ……うん?熊??


 熊は素知らぬ顔――ってか、表情は変わんないんだけどさ――をしているので、お腹(またの名を生毛皮)顔面ダイブをしてみると、遠吠えていた。


 そして顔を上げると、熊は恥ずかしげに、凝視すると、両手で顔を隠す。


 初心な娘が『きゃ、やだっ』と言わんばかりの仕草である。



「っ!!!!」



 可愛いっ!お前さん、可愛いよ!

 おぢさんが、いいことしてあげるからね!!


 兄の方を見ると、すっかり気が削がれたらしく、肩をすくめる。



「たしか、熊は雑食だったぞ」



 だよね。だよね。

 基本的に何でも食べちゃうんだよね。


 好き嫌いのない子、大好きじゃよ。



「母」



 呼んだだけで、察したようで母も振り返って、ぴ、と人差し指を立てている。

 数量はひとつという意味なのだろう。



「いいわよ~、お母さん、チーズとベーコン、レタスね~」



 とりあえず、櫛を置いて、手をふいてから、うろうろ~、車内うろうろ~、お前邪魔だよ。

 騎士(目つき悪)!!どけ、お前の下には、宝が埋まっておるのじゃよ!


 ごろころと、鎧で重い騎士を転がす。



「あたし、レタス、チーズで、さらにレタス」

「俺、ツナと目玉」

「父、レタス以外」



 と最後の父のリクエストで、母と姉は声を上げる。



「「「だめ」」」

「え~??」

「お父さん、だめよ~。野菜も食べないと、メタボっちゃううから」

「腹回りが百センチ超えたら口利かないから」

「ええぇ~~~!!」



 姉、すごいな。

 太っただけで口利かないのか。


 父、涙目である。


 うーん、確かにこのごろ、父の腹回りは…げふん、げふん。


 騎士(目つき悪)の、真下の収納ボックスから、ホットサンドメーカーを出す。

 プレートを取り替えれば、ワッフル、タイヤキ、焼きおにぎり、たこ焼き、ホットプレートにもなるし、一つ六役もこなしちゃうけど、今は腹にたまるほうがいいよね。


 こっそり父が改造したため、車体の上にはソーラーパネルがついている。


 なぜか、車内は電化製品が使えるようにコンセントがぶらぶらしているのだ。

 それに差し込み、スイッチを入れて、暖めておく。


 もっと、手を綺麗に拭いておこう。

 流石に、熊毛がついていたのでは、食欲をなくすし。


 その隣の収納ボックスは食料庫を開く。


 すっぽりと荷台の底上げされた床に、嵌っているクールボックスを開けると、母がチーズ、ベーコン、卵、レタスを取り出す。


 あと積み上げられた缶詰からツナ、ゲット。


 横から、母拘りの七ミリ間隔で切られた一斤のパン。


 サンドイッチ専用の耳を切り落としたやつがあるので、それを使いますよ。

 パンの耳はすでに、自宅で揚げパン風味におやつになって、バックに入っております。


 マグカップの中に2個ほど卵を落とし、フォークでかき混ぜ、温まったプレートの中に流し込んで、軽く半熟のスクランブルエッグ。


 それを皿に避けて、パンを敷いて、千切ったレタス、スライスされて分けられているベーコン、スライスチーズ、スクランブルエッグ、レタスの順番で乗っけて、パンを上に乗せる。


 二つ並べたら、ふたをして、待つこと五分。


 その間に、ツナ缶詰……許せ、大自然。

 いつもは汁も使って違う料理に出汁的な存在で使うが、お前の役目は今ない!


 全開の窓から、ツナ汁、不法投棄。


 さらばツナ汁。お前の勇姿は忘れない――あと、十五秒ぐらいは。


 マヨネーズ入れて、缶の中でミックス。

 車内で、玉ねぎのスライスはメンドイので却下。


 あ、てか、騎士と王子は、飲み物どうしようか…紅茶か、コーヒーか、ココアぐらいなら、インスタントで持ってきたけど、家族のマグカップぐらいしかない。


 他人が車内で食事をすることなど、まったく考えていなかったので、紙コップ的なものはない。


 

「いいんじゃないか?後で洗えば問題ないだろ?」



 げ、やっぱり、私が洗うのか。


 う~…しゃあないか。べ、別にあんたらのためじゃないからね(つんでれ発動)!ホットサンドには飲み物必要なんだからね!(うわー自分でやっててひくわぁー)


 電気ケトルに、ペットボトルからミネラルウォーターを注いで、こっちもスイッチオン。

 

 ん~…紅茶かな。お変わり自由だし。

 そこまで、面倒みきれんし。


 さらに、騎士(目つき悪)を移動させて――弟王子も邪魔なので移動させて――コップと、茶葉と、ポットを用意する。



 ちーん。



 お、ホットサンド完成したじゃないですかい。


 蓋を開けると、チーズとベーコンの焼けた匂いが充満する。

 気がつかなかったけど、私もお腹が空いていたらしく、ぐーと、控えめに音がなった。


 とりあえず、獣の唸り――獣だけど――をしている熊だな。



「熊」



 二つのホットサンドは斜めに切断されており、三角形のサンドが四つできている。


 一つ摘んで、熊の口に突っ込んだ。


 ちょっと熱いかもしんないけど、お食べ。

 

 おずおず、と言った感じで、咀嚼するがなにか驚いたように、うがうが言ってるが――うん、分からないんだって、熊よ。



 そして、はしゃぐな。車揺れるから。


 

 まぁ、吐き出さなかったから、食べられるものだったのだろう。


 皿に残りの三つをより分ける。

 騎士と王子の視線は皿に集中しており、わずらわしく思いながらも、差し出す。


 ごん、と騎士(目つき悪)をテーブル代わりに、皿を置いた。


 微動だにしないから、丁度いいよね。


 え~と、なんていえばいいかな、とりあえず――



「お先にどうぞ。御代わりは一度だけ、熊については二度まで許可する、具材のリクエスト不可、ただでくれてやるから、食え、だそうだ」

 


 ――そうそう、そんな感じでって、兄。だから、人の心を読むのをやめろって。怖いから。

 私、口開いてないよね?言ってないよね??


 次のホットサンドを準備しつつ、兄を化け物のような目で見つめる。


 母のだから、チーズと、ベーコンと、レタス。

 姉がチーズとレタス……大目だな。ダイエット中だから、食物繊維必要だし。 


 

「あ、ありがとうございます。ミィコ殿!」

「うまいよぅ――」

「いただきます」



 あ、騎士(目つき悪)の分ないけど、気絶してるから、まあいいか。


 電気ケルトから、茶葉を入れたポットにお湯を注ぎ、コップに注ぐと、爽やかなアールグレーの香りがホットサンドの間に彷徨う。


 そのまま飲め。砂糖を出すのめんどくさい。


 

「粗茶ですが、どうぞ。後はお湯沸かしておくから、勝手に自分で入れて飲め。砂糖はめんどくさいから、だしたくない、だそうだ」



 兄。悟りなの?むしろ、私は悟られなの??

 

 そして、一気に食い終わるな騎士(チャラい)!指舐めるのやめなさい!王子、サンドイッチごときで、目をキラキラさせない!その純真な目が、罪悪感をそそるから!

 

 ふぅ、唯一静かに食べてるのは騎士(毒抜き)だけか―――って、男泣き!?

 なんで、土下座してるの!!


 

「ミィコ殿……私の妹は未婚ですゆえ。どうぞ、貰ってやってください」



 殴るぞ、騎士(毒抜き)!!!!


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