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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
一日目 【真実子の長い一日】
12/119

Act 11. 元気、ハツラつってる?

 額に刃が掠りかけた時は死ぬかと思いました。

 兄が蹴りで刃の軌道を変えなかったら死んでただろうけどさ。


 額が切れて、だらだら血が流れてるんだけど、痛いから生きているんだろう、私。


 無我夢中で何とかやってきました。


 なんとか魔石を駆使しながら、走ってきたのだが、MPがごっそり半分以上も使い切ってしまった為か、なんか妙に頭がくらくらする。


 しいていうなら、貧血だろうか。


 騎士二人の横を抜けて、矢を受けた騎士の元へはせ参じることに成功した。

 おかげで、ここに来るときよりも、ずっと安全になって、半径一メートル以内に敵はやってこない。    


 髑髏マークの騎士は、気絶しているらしい。

 彼の頭の周りに幾つかの星が回っているエフェクトが浮かんでいる。


 だが、HPは17。

 なんとか、間に合ったらしい。

 

 

「面白い事、してるなっ――魔法っ、かぁ?」



 この死地に殴りこんできたというのに、兄の関心はまったく別のことだった。

 もう少し、労ってくれてもいいんじゃないかい?


 だが、自身だってギリギリで戦ってるであろうはずなのに、よくも他人の事を盗み見できるものだと、感心すらしちゃうよ。

 

 私は風呂敷を下ろすと、担いできた回復薬と毒消しを地面に下ろす。


 背後の兄の様子は分からないが、レベルアップのファンファーレがなっているので、元気いっぱいらしい。



「魔石。範囲一メートル。効果四秒。消費MP5―――死ぬかと思った!!」

「おうっ――ご苦労さん…っと…それだけ文句がっ――言えればっ…やばそうな怪我もなさそう、だなっ」

「おかげさまでねっ!」



 とりあえず鼻を摘んで髑髏付騎士の口に、毒消しを流し込む。

 

 咽ながらも三度の嚥下を終えて、髑髏マークは消え、HPは16で停止したが、文字の表示は赤くなっているところを見ると瀕死なのだろう。


 うっすらと、騎士が目を開けたので、回復薬を口に突っ込む。

 一本を嚥下して、口を開いた。



「うっ……あ、なた、がた、は」

「後。これ飲んで、さっさとゴブリン倒して」



 飲んで、元気がハツラツになればいいさ。


 きっと彼らにはわからないであろうネタを腹に抱えて、上半身を起こした騎士に、まるでわんこ蕎麦を注いでくれるおばちゃん並みの合いの手で、次々と渡していく。


 いまだ戦いの最中であることは察しているようだ。

 茫洋とした表情が、すぐに引き締まった。


 3本目で、ようやくHPが100を超えて、戦っている騎士よりも体力だけは勝った。

 

 ようやく私は息を吐いて、額から流れる血をパーカーで拭った。

 めっちゃ痛い。痛い、痛い。

 

 兄のせいだ。後で、覚えてろよ!とりあえず、私のパーカー弁償しろ!



「失礼、お借りする―――っ」



 騎士は手早く肩口の鎧を外すし、腕に刺さった矢を乱暴に抜くと、膝におきっぱの風呂敷で、器用に傷を縛り付けた。

 

 ゴブリンの死体よりも、生々しい人間の朱色の血のほうが、リアルだった。

 めくれあがった肉と、伝う血のほうがよっぽど、私を恐怖させる。



「チャイラ、ハーン、交代で下がれ」

「はっ!」

「了解で~す、と、お先」



 軽い返事の騎士がゴブリンとの剣戟を弾き、バレリーナのようにターンした。


 そして、まるで最初から打ち合わせされていたかのように、隊長格らしい騎士(毒抜き)が同じゴブリンの2撃目を弾いた。


 凄い。熟練のなせる技だろう。


 滑らかな動きに、呆けてしまった。


 騎士(軽め)が剣を地面にさして、そのまま片膝をつく。

 鎧を中心に淡い光が収束し、よく分からない模様が騎士(軽い)を中心に広がった。


 切れていた息が徐々に整えられて――なんと、少しだけとはいえ体力が回復した。


 


   === チャイラが【騎士の黄昏】を発動しました

   === HPの回復速度が上昇します




 戦闘ログにそう流れて、思わずポツリと呟く。



「騎士の黄昏?」

「ん~~?知ってるの?博学だねぇ。さっきの走りも見事だったよ~」

「あ、はぁ……一本、いっときます?」



 と地面に転がってた回復薬を差し出すと、元々笑っていたが、さらに、にこ~と笑顔を浮かべる。

 

 あ、なんかこの人、苦手なタイプ、その2だ。

 チャラい感じに鳥肌が。


 名前もチャラチャラしてる感じだ。



「あ~よかった、実は狙ってたんだぁ。ありがとう――ハーン」



 HPが15ほど回復したところで、騎士チャラいは立ち上がる時間に飲み干して、HPが30回復されると、ハーンと呼ばれた騎士が、ゴブリンを蹴り上げると同時に、場所が入れ替わる。



「失礼する」



 ざしゅ、とやはり剣を地面に刺すと、片膝をついて、じっとしている。

 



   === ハーンが【騎士の黄昏】を発動しました

   === HPの回復速度が上昇します




 やっぱり、騎士専用のスキルなのだろう。

 騎士(固め)を中心に魔方陣っぽいものが展開される。


 戦闘では使っていた様子がないが、この体制になると回復補助をしてくれるらしい。


 転がっている回復薬を地面から拾い上げて「どうぞ」と差し出すと、かなり鋭いまなざしで睨まれた。

 

 怖っ!目つき悪!


 思わず、びくついてしまったのだが……



「感謝する」



 と呟いて、立ち上がりながら飲むと、ゴブリンの群れに突っ込んでいく。


 今まで完全に押されぎみだった体制が、逆転を始めていた。

 

 思うに、一人の騎士を庇いながら、戦い続けたせいで、消耗が激しかったのだろう。

 毒を受けていた騎士が、素人目にも一番の剣の使い手であり、レベルが高かった分、ゴブリンの量よりも、上回っているようだ。


 私を庇いながらも、なお倒す数は激増している。


 いやぁ、突っ込んできたと気楽だ。

 かがんでるだけでいいし。



「ミコっ、お兄ちゃんっ、にはっ?」

「あ~…うん」



 地面に転がる回復薬を手にすると、ポケットから、魔石を3つ取り出して、兄の頭上を越えさせると、敵対しているゴブリンらへんで発動させる。


 そうして怯んだ隙に兄は振り返り、私の投げた回復薬を受け取って一気に煽った。



「ふぁいとー」



 気の抜けた声をかけてやると、兄が肩を揺らして笑った。



「いっぱーつ!!」



 うむ、どんな時でも、兄は兄だ。


 4秒きっかりに魔石の効果が切れて、突進してくるゴブリンをいなして撃退を始めていく。

 兄も騎士(毒抜き)が加わったことで、相手にしている人数が減ったようだ。


 私も、時々弓ゴブリン目掛けて、魔石を投げる。


 何体目だが分からぬゴブリンを打ちのめすと、再びファンファーレが鳴り響く。


 

   === ゴブリンDYを倒した

   === 雅美のレベルが上がった

   === 雅美 戦士LV10→Lv11

   


 続いて、ファファーとさらに短いファンファーレが鳴り、戦闘ログに、一文が加わった。

 

  

   === 雅美はスキル 【クロスエッジ】 を覚えた。


 

「クロスエッジ?」



 魔石を投げる手を止めて、兄のステータスを表示させると、新たにできたスキル欄を表示させる。


 よく見ると【クロスエッジ】の前に、ひとつスキルを覚えているようだ。


 【剣修練度向上】と書いてあるところを見ると、こっちは戦闘用のスキルではない。

 たぶん、戦士を選択したら必然的に貰えるスキルみたいなものだろう。


 【クロスエッジ】を選択する。



「雅兄」

「っ、なんだ?忙しいからっ…3時のおやつなら、後にしろっ!」

「今日はワッフルがいい――って、違っ!」



 無駄口の多いやつだ、まったく。

 っつーか、こっちの言葉数を倍で返すくらいなら、きりきり働け。



「スキル覚えてる。剣で十字を切る、だって。MP消費は――」



 バシュっ



 空気を切り裂くような音。


 説明が終わる前に兄が一瞬の空白にバックステップすると、正面のゴブリンに向かって、ぼこぼこにへこんでいる金属バットで十字を切っていた。


 撲殺系の武器であるはずなのに、発動されたらしい【クロスエッジ】を食らったゴブリンは紫色の血飛沫を上げていた。



「…――30だって」

「こりゃいいっ――後っ、何発だっ」



 えーと、兄の今のMPの残りが、276だから、100で3回で――…っていっている間に一発撃ってるし!

 あぁ、まって、計算できな――。



「質問がっ、悪かったな!俺の残りの、MPはっ?」

「246」

「後、7回か!」



 といっている間にも、一発。


 戦闘ログを確認すると、一発でなんと66、69である。

 レベルの高いゴブリンも、ほぼ一撃である。

 

 HPの削りあいの拮抗状態でもあっさりと、兄は覆しつつある。



 まぁ、兄はさておき。



 ファンファーレが響き、戦闘ログを確認する。

 お、私も魔石投げていたから、地味にレベルが3になりましたよ。


 まぁ…盗賊なんですけども。


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