Act 39. イベイベ音楽教室
久々に聴いたバイオリンの音色は心地よかった。
途中から耳だけに集中しすぎて閉じていたらしい瞳を開ける。
安定した構えの貴公子は、現役の音楽団員と言われても納得のレベルだった。
きっと、これはあれだ。
キラキラも二割増しに鳴っちゃう上にプロ級の腕前で奏でるものだから、自分の為に弾いてくれていると感じ対して『きゃー素敵!抱いて!』と数多のお嬢様が目をハートにさせて勘違いしちゃう系だ。
兄が危ない所を助けた女性がコロッと目をハートにさせちゃうような感じで無意識に。
恋の曲とか弾いたら大変そうだなぁ。
音から感じた人柄的に、そういった恋愛事情に若干困り気味ッて感じだろうか。
音楽家に悪人はいねぇ!とまでは絶対に言えないけど、音を聞けばなんとなく人柄がわかる感じがする。
まぁ、かなり昔、ぞっとするような音を聴いたことが一度だけある。
物腰も穏やかそうな感じだったし、話したこともない。相手も自分を認識などしていないけど、幼いながらに恐怖心を抱いた記憶がある。
その点、貴公子は、しっかりと基礎を周到して技術が高く、懐も深くて余裕はあるけど、遊びが少ないのだろう。
ジャンル的には、真面目系万能貴公子なんじゃないかとみた。
楽譜が手元にないから、音からの感想でしかないけど。
一応、今の曲は人の心を奮い立たせるような、応援歌みたいな感じがした。
戦いに挑んでいくような感じのアップテンポさだ。
やる気をださせるような気分というか、高揚するような、勇気を振り絞ろうと思わせるような心地だった。
ただ数分程度の曲だったけど、もしかするとオーケストラの曲をバイオリンだけで弾いたのか、もしくは短縮したんじゃないかと思われる。
きっとルイが弾いていたような、魔法の曲なのだろう。
「どうだ、ミィコ。同じ師を仰いでいたが中々の腕だろう?」
私はこくこくと大きく頷くと、貴公子はお茶目に笑って、舞台を降りる役者のように優美にお辞儀してみせた。
「……魔法の曲? もっと長い戦闘曲?」
貴公子を伺いながら、そっと尋ねると、少し驚いたように『そうだよ』と頷いた。
なんだか貴公子の音を聴いたせいか、先程よりは少し親近感を抱く。
「あぁ、元々英雄譚のオーケストラの曲なんだ。バイオリンの一番、短い所をね」
「今の部分は『立ち上がる戦士』だ。魔法的な効果が周囲に及ぶ曲を魔曲という」
なるへそ。それで勇ましい感じの音になったわけだ。物語をぶつ切りにして戦闘シーンだけを見たような感じだったのはそのせいなのだろう。
くぅう、音だけだと鑑定出来ないというのが、辛いところだ。
分かったなら、どんな危険があろうとも決死の覚悟でも鑑定するのに。
楽譜とか鑑定出来ないだろうか。できないですか、はい。すみません。
魔曲、って名前が、まず凄いな。
一気に危なげな雰囲気だけど、回復魔曲のようなものもあるのだから、印象だけの問題だろうけど。
あぁ、姉が楽しそうに新色の口紅とかネイルとか試していると、長くなるとか、似たようなの持ってるじゃんとか、うんざりしていてスミマセンでした!
ヤヴァイ!いま!私!凄く楽器が弾きたい!
新しい曲を知って、弾いてみたい―――――って、もしかして、この高まる感情とやらは、さっきの曲の効果なんだろうか?
「ミィコ、早速、そいつで弾いてみたらどうだ?」
高価すぎて怖いんだけど、ソレを上回って演奏したい病が発病している。
ウキウキとケースを開けて、本体と少し厚さのある蓋の部分に嵌るように固定されている弓とラバーブを手にすると、私の高ぶりは少し冷めた気がした。
「……ミィコ?」
数秒固まった私を不審そうに第一騎士団長が小首を傾げている。
首を横に振ってなんでもないと言外に伝えたが内心、妙な感じがしたのだ。
弓は全然普通の弓っぽいのだが、本体はしっくりくる。
手に吸い付くような感じすらあった。
アンティーク調で、一目見て使い込まれてなさそうなラバーブを手にした瞬間、パキンと鎖がくだけたような音と、くらりと軽い目眩。
そして、まるで昔使っていたバイオリンのようにずっと使い込んでいたように手に馴染んだ。
これも魔法がかかっていると言っていたから、その効果なのだろうか。
気を取り直して、先端が尖っているのでソファーに挿したら不味いだろうと、浅く腰掛けて先端を浮かせた。
っつうか、ここの部分ってめっちゃ地面に刺さりそうなんですけども。
取り扱い注意と言いたくなるぐらいの尖り具合。
脳内で余韻のように残る貴公子の音を追いかけて、弓を構え――――たのだが、音は鳴らなかった。
「う~む、ミィコでも音が鳴らないか」
うぐあぁあ、期待させといて、全然音が鳴らないだなんて………最初にイベイベも弾けなかったというのはこういうことか。
ちゃんと弓と弦が擦れている感触はあるのに、全く音が聞こえない。
むしろ、ここまで逆に鳴らないって凄いよ。
もしかして最初から楽器じゃなくて、飾りとして作られたんじゃないのかこれ。
鑑定に掛けた結果、吃驚して噎せた。
+ + +
【月下の踊花と闇を駆ける黒馬のリュート】
擦弦楽器。吟遊詩人専用装備品。自動修復機能付、音響拡大型リュート。
20%のスキル補正。風、闇、補助を主とした魔曲に30%の強化補正。
注目度、演奏技能により補正数値は増減。
ジャギニー神の加護を大いに受けている。
魔曲『風の中の踊り子』を習得。
魔曲『我が友の為のソナタ1』を習得。
販売価格:販売不可
+ + +
ラバーブですらなかった!弓必要じゃなかったし!
たぶん、これイベイベか商人か誰かがラバーブだと思って、後から買ってつけたんだろう。
吟遊詩人しか装備できんのはなんとなくわかるけど、この音響拡大型リュートってなんぞや?
ヤバいほどのチート補正に嫌な予感しかしない。
オマケに魔曲の名前を確認したら、なんか『聴いたことないはずの曲』が頭にするすると入り込んで『最初から知っている』みたいに覚えているんだけど!?
ついでに販売不可って……販売不可って、それって呪われているようなもんじゃ……
しかも、なんか新たに開いているページがあるんだけど………
+ + +
契約者:ミィコ=キィシガ
発生クエスト2:名前をつけて下さい
報酬:魔曲『戦死者の祈り』
+ + +
………契約、した、覚えが全くないんだけど。
発生クエストってなんぞや? 冒険者ギルドとは違った意味での、特殊クエスト系統なんだろうか? つか、すでに2になってるんだけど? 誰か知ってる?
名前って、ルイのラバーブの『ラブ』みたいに、リュートに名前を付けろってことか?
契約者っつったって指で弾いたって音ならないし、クエストこなせば引けるようになるとか、そんな感じなんだろうか。
いやいや、まさか、これって。
「イベ叔母様」
ごくり、と今からどうやって聞けばいいのか悩むあまり、私の喉が鳴る。
イベイベは只ならぬ私の雰囲気に気がついた様で、『どうした』と心配そうな面持ちをしていた。
「音響拡大型ってなに?」
「……ん? 音響、拡大型?」
「えーと、戦場音楽隊フォノンの7つの楽器の事かい?」
「あぁ、アレか。そういえば師匠から習ったな」
唐突な私の言葉に目を丸くした様だったが、貴公子が『簡単に説明するとね』と口火を切った。
何百年か前に何処かの王国の不敗の将軍がいた。
不敗の将軍は必ず戦場まで引き連れて行った音楽家達。
それが『フォノン音楽団』という小規模演奏隊だったと言われている。
その音楽隊が曲を奏でると音の聞こえる範囲は、なぜか敵が戦意喪失し、味方の傷が癒えたり、唐突に天候が変わったりするという言い伝えが残っている。
そして、彼らが使用していた魔法楽器が『音響拡大型』という、音と魔曲の効果を拡大するという特殊な効果の付いたものだったらしい。
将軍が他界すると『フォノン音楽団』は解散してしまい、行方しれず。
天変地異が起こるような7つの楽器も一緒に消えてしまい、残ったのはどっかの国で保管している一つのみとか、伝説の楽器らしい。
「師匠が研究してましたね。大方、楽器のほとんどが遺 物だとか」
「赦 者って契約者みたいな、もの?」
不安のままに問うと、きょとんとした貴公子は苦笑を浮かべた。
「一般的にはそう言われてます。本人か本人が使用を許した人しか扱えませんから。ですが大丈夫。形は伝説の楽器の弦楽器を模しているけど、その時代の流行りの形だからね。それに伝説の楽器にラバーブはないし、糸が切れても自動修復される程度の魔法しか――………」
「リアム?」
「……義理姉、これは弓は後から買い足した、と前に」
「あぁ。弓も同じような素材に見えるように職人に作らせたが……ちなみに、ケースも魔法遮断を使った一品ものだ」
冗談めかして言葉を紡いでいた貴公子は、唐突に乾いた笑い声を上げた。
兄である第一騎士団長が声を掛けると、少しだけ青ざめたような顔で笑みを繕った。
私も同じように青い顔をしているような気がする。
「……それは二つ名持ちの楽器だったんだね……聞いてもいいかな、名前」
兄なら音響拡大の話をした時点で気がついていたかもしれないが、貴公子も察しがいいようだった。
値段は付けられないであろう楽器を、先程よりも丁重に仕舞って、蓋を閉じた。
「………月下の踊花と闇を駆ける黒馬のリュート」
「馬鹿な!ただのアンティークのラバーブだぞ!」
「リュートは古楽器の一つです。弦楽器の原型といってもいい、魔法楽器作成の初期の頃は一つ一つが手製ですから、可能性はあります」
「返す」
先ほどまで鑑定していた物のなくなったテーブルの上に置いたが、貴公子は目敏く『もう返しても遅いんだろう?』と優しくも残酷に告げた。
微笑んではいるが、彼の目は笑っていない。
値段は分からずじまいだけども、どの遺 物も、国宝級でも可笑しくはないだろう。
ルイが持っていた奏でる鳳凰のラバーブも国宝級だったし。
イベイベが不可解そうな顔をしていたが貴公子が口を開くより先に、その可能性に到達したらしく、驚愕の色を浮かべた。
「レディミィコ……君は音響拡大型のリュートという遺 物の赦 者になってしまってるのでは?」
ソファーにもたれて、優雅に苦悩する貴公子。
曖昧に手を伸ばして、驚愕のまま固まったイベイベ。
嬉しそうに微笑む顔色の悪い従者。
それを他所に、第一騎士団長が一つ軽く頷いて『事実なら、覗見盗聴防止魔法領域の部屋で判明して幸いだな』と、あいも変わらずの無表情で淡々と呟いた。
+ + +
「ったく、規格外な兄弟達だ」
ようやく復活したイベイベが痛むらしい頭を抑えて、吐き出した。
どうやら第一騎士団長は騎士経由で兄と姉がすでに遺 物の赦 者となっている話は聞いているらしい。
三兄妹の内、二人が取得しているんだから、最後の一人がしても可笑しくないと思ったようだ。
「イヴェール………彼女も、レジィ王の血の繋がった姪だ」
その一言でイベイベと貴公子が深く納得したのである。
めっちゃ、不本意!私、兄妹の中でも一番普通ポジションですから!あんなチート達と一緒にせんでくださいよ!手にした馬鹿高い遺 物は音ならないし!
貴公子も初耳だったらしく、微笑みを繕っているものの、目が遠い。
しかし納得されたのもしかたがない。
兄妹が遺 物を持ち、恐ろしいことに叔父が複数の遺 物の持ち主だというのだから。
おい、叔父よ………確かに叔父は異世界歴が長いけどもさ。
だから、こないだの食事の時に兄姉が遺 物をゲットしたって言った時も、叔父さん『へぇ~』程度で終わったんかい。
「契約者ってなってるけど、弾けないから、なんかの間違いだと思う」
弓でも指でも弾けなかった事を強調する。
ちなみに私はギターも結構好きし、弾けるけど、ただびっくりすることに、圧倒的にギターを触れた回数が私より少ないであろう叔父の方が上手いのである―――チートふぁっく!
もしかすると単純にさっきの遣り取りで所有者が移動したと見做されたのかもしれない。
「私が返してもらった、と宣言しても、リアムの手に渡っても、契約者が変わってないのだろう」
何度かやりとりしたが、相変わらず変わってはいない。
イベイベや貴公子が音を奏でようとしたが、やはり音はならないのである。
沈黙を正しく肯定とみなしたようで、イベイベが深い溜息を付く。
「これは預かり、師匠に見てもらう」
「そう、ですね。より強力な魔曲演奏家の手に渡れば変わるかもしれませんし」
と言いつつも、どことなく二人共あきらめているような気配がある。
そこで諦めるな!師匠様、頑張って(他力本願)!やめて!『この子も、王様の血筋だったんだなぁ』みたいな、訝しげな目で私を見ないで!
基本性能は低い岸田家の唯一の常識人、普通の子ともっぱら有名な末っ子ですから!
音が鳴らない高価な楽器を貰っても、私には手に余るし、唯一の利点は魔法の曲がゲットできることだけど、国宝を持って歩きたくはない。絶対無くす、もしくは壊す。
ついでにゲットした魔曲とやらは、かなり使えそうだった。
抽象的な印象で説明文があるわけじゃないのだが『風の中の踊り子』は文字通り、風で防御っぽいもので敵の命中率を下げてくれるものらしい。
結構弓とかの飛び道具を逸らす事に強い。
『我が友の為のソナタ1』は、どうやらレベルアップか何かで続きをゲット出来るようだが、基本的にこの曲単体では、知人が味方認定した者達の基本性能をちょっぴり上げることができるようだ。
しかも、どちらも曲が終わっても、十数分は持続性がある。
どっちも、どの位の威力があるのかは不明だけど、其処まで強いものじゃない気がする。
でも他の楽器と協奏したほうが、効果が上がるよみたいな感じ。
まぁ、曲の一部、部分的な楽譜のみゲットしたという形なので、もしかするとレベルが上がるか、または他のハイパーな楽器をゲットしていくとオーケストラみたいな形になるのかもしれない。
予測でしかないので、違うかもしれないけど。
あとついでにこれだけじゃ国宝だってバレて狙われても、兄や姉や叔父のよう撃退出来ない。
どの程度の人物や組織に狙われるかわからないが、無理ゲー。
楽器で戦力アップするなら別だけど、所詮は楽器である。
しかも鳴らない!
大事なことなので何度も言いましたけど……え、さすがに本体の先端のナイフみたいな部分で戦えとか言わないよね?武器初心者には高等技術過ぎて、うっかり死ぬよ。
もう、宝物庫とかに仕舞っておこうよ。
+ + +
なんか物凄く疲れた気がするけど、マドレーヌを引いてきたカート下に置いてあるマイラバーブを手に、今度こそイベイベによる音楽教室が始まった。
すっかり冷えきった頭で、貴公子が演奏した『立ち上がる戦士』を弾くと、イベイベは音階が可笑しかったところや、指の使い方を指導してくれた。
やっぱり『奏でる鳳凰のラバーブ』を扱った時と違って、若干指が思うように動かないし、硬くなっているのがわかる。指つりそうだ。
きっと、前に演奏した時は『奏でる鳳凰のラバーブ』の補正だったんじゃないかなぁと思う。
ただ、何の曲を弾いても気持ちがいい。
なぜだろうか、奏でることで心が凪いでいるのに、同時に高ぶりもある。
不思議な感じだ。
まるで魔力が緩やかにラバーブに注がれ、それが音に乗って拡散していくような気配。
幾つか日本で弾いたことのある短い曲を披露すると喜ばれたのが嬉しい。
うん、なぜか貴公子には姉の好きなミステリー系の月九ドラマのエンディングテーマがお気に召したらしい。
たしかにポップスをラバーブで弾くと斬新に聴こえるかもしれない。
イベイベは普通にアメイジング・グレイスが気に入ったらしく、意外にも第一騎士団長は、なぜか某SF超大作の黒マスクの人の有名なテーマ曲……なかなかやるなお主。弦楽器で弾くと壮大なクラシックに聞こえなくもないけどもね。
っていうか、第一騎士団長の登場シーンにどうですかね。
途中イベイベの演奏してもらったのだが、貴公子ほどとは言わないがプロ級に近い。
高い技術力もあるが正確な音運び、真っ直ぐな向かう感じがして、安心して聴くことができる演奏だった。貴公子とは別の曲だったけど、静かな夜に聞くと凄い寛げそう。寝るかも知れない。クールビューティな顔して、癒し系だったのかもしれない、イベイベ叔母様。
というか、イベイベの得意な楽器がピアノらしいんですけどね。
たぶん、そっちがプロ級とみた。
しかし凄いな王族貴族。
手習いでプロ級近くまで演奏するなんて、高い教養ってやつですかねぇ。
ちらっと、楽器よりも腰から剣をぶら下げているのが似合っている第一騎士団長に視線を送ると、数秒の後に無言のまま首を横に振った。
あれ、貴公子と兄弟なら、第一騎士団長も貴族、ですよね?
「此奴はな、フルートがピカ一だぞ」
「兄上と義理姉がでる慈善演奏会があった時は、寄付金が凄いんですよ」
「馬鹿言え。お前単体での慈善演奏会で、教会一つ建っただろうが」
貴公子、特に未婚のご婦人方の寄付金が凄いんですね。そして、きっと婚姻している奥様方からの人気も高いんでしょうね。アイドル的な感じで。超、わかります。
でも、ちょっと聞いてみたいかも、第一騎士団長のフルート(笑)。
残念ながら、楽器は持ってきていないらしい……あれ、なにしにきたんだ、彼は。
しかも、第一騎士団長はイベイベが慈善演奏会を開いた時にしか演奏しないで、かなり稀らしい……なぜか、ご婦人方より騎士の出席率が高いらしい。野太い歓声が響くのだろうか。
っていうか、なぜにフルート選んだんだろう。
「………何か予測不能な事が起きた場合でも、立って演奏しているので対応しやすい。楽譜を覚えれば、周囲に不審人物が居ないか見渡せる。剣で襲われても光洋白製のフルートならば応戦できる」
うん、安定の実務チョイスだった。
第一騎士団長にとってはフルートさえも鈍器か!
剣で対峙しなければいけないって、どんな演奏会だとツッコミを入れかけた私は悪くないと思う。
なぜか話す前に一度、第一騎士団長の視線がイベイベに向いた気がした。
そっぽを向いてしまったイベイベの頬がほんのりと赤くなっていたので、おやと思ったら、貴公子が小声で付け加える。
「フルートはピアノとのアンサンブルが多いですからね」
自分で会話振っといてなんだけど、惚気かよ!他所でやれリア充!ごちそうさまでした!
つまりは奥さん守るために、一緒に演奏できる実務的な楽器を選んだのね。
なぜか無表情の第一騎士団長とは全然似ていないのに、母ラブな父が満面の笑みでピースしているのが背後に見えた気がした。
今日は大分忙しかったから、脳みそがやられているらしい。
ラバーブの基本的な手解きと、先生二人の顔合わせ的な意味合いが強かったのだろう。
鑑定もしていたせいか、一時間以上イベイベの部屋に滞在していた。
しかも嬉しい事に、私のお借りしている客室に楽器による音は防いでくれる防音魔法をしてくれたらしいので、好きな時間に弾いていいとの事だった。今日一番の嬉しいお知らせだったかもしれない。
ありがとう、イベイベ!
明日も音楽教室があるかどうかはわからないけど、マドレーヌとドーナッツ以外の珍しいお菓子作って持ってくるからね!