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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
一日目 【真実子の長い一日】
10/119

Act 09. 作戦名ハゲタカ

 兄の咆哮が途絶え、数十秒。


 私は弓矢ゴブリン3体の背後に回りこむことに成功した。

 

 もともと足は速いほうだ。

 特に逃げ足。


 だが、戦闘中に一人で行動しているせいか、心臓は破裂しそうだし、手汗でレンチが滑る。

 かといって、忍び寄る死の恐怖に対して、残念ながら技能が発動しているせいで、発狂するというほどでもない。


 私は瞳を凝らして、彼らを見つめる。




   【ゴブリン兵士】 Lv3. 


   HP:47/80

   MP:21/21


   

   【ゴブリン兵士】 Lv2.

 

   HP:67/67

   MP:19/19



   【ゴブリン兵士】 Lv2. 


   HP:40/63

   MP:26/26




 幸い兄が最初に退治したゴブリンよりはレベルが低いものの、盗賊LV1(なってから数分)の私には3人を同時に相手にするのは、いくら弓兵相手に接近戦でも難しいものがある。


 はっきりいって、ぼこぼこにされるのは間違いない。


 解毒剤を奪って、さっと逃げる。

 目標は死なないこと。


 つつがなく彼らを見つめていると、レベル3のゴブリンが腰からぶら下がってる小瓶に目がいく。


 中には黒緑色の怪しい液体が並々入っていた。


 小さな矢印がそれを指しているが、表示は【???】。


 あからさまに怪しいのだが、残念ながら私のレベルでは、簡易ステータスを表示させれても、敵の持ち物まで表示させることはできないらしい。


 小瓶は細い麻紐のようなものでくくられており、簡単に引きちぎれるものではなさそうだ。


 かといって、レンチは役に立たないだろう。


 当初の目的通り、スリのように、こっそり奪ってくるのは難しい。


 倒して奪うか――せめて、カッターナイフでももってくればはよかったと思ったが、こんな事態になると誰が想像しただろうか。


 わかっていたなら、まず人間じゃないだろう。


 瞳を伏せて、静かにため息をつく。

 

 そこで、不意に目に入ったゴブリンの死体にはっとする。

 その懐からは、あまり大きくないナイフが目に留まったからだ。


 これを拝借して、あの麻縄を切るのはどうだろう。


 死体を漁るなんて、不道徳的だが、人を救うためなのだから、この際、私の良心には目を瞑ってもらうとしよう。




  【鉄の短剣ショートソード】 

   

   普通の鉄で出来た鉄製のナイフ。切れ味は普通。重量普通。

   販売可能:600 (ビル)




 安っ!

 さっき、王家の秘宝をみたせいか、全然ありがたみがわかない。


 販売の値段が600ってなんだ、600って――これが平均的な価値だとすると、王子が兄に渡した王家の品って…うん、よし、考えないことにしよう。


 私はゴブリンの懐から拝借する。

 

 う、意外に重い―――刃渡りは手を伸ばしたぐらいしかないのだけど、ずっしりとしている。

 一キロはないだろうけど、想像してたより重い。

 

 刃の部分を鞘から抜く。


 両刃とも切れるように研がれているが、包丁よりも分厚い。


 これで普通の表記がされているということは、これよりも重いものも軽い物も存在する、ということだ。


 鉄の成分が違うのだろうか?


 ともかく、今は時間が惜しいので好奇心を止める。


 レンチを腰の後ろのベルトに挟んで、手に持つ。


 攻撃力は当然レンチよりも上だろう。


 これで、弓ゴブリンの腰からぶら下がっている小瓶を括り付けている紐を切ることが出来る。

 だけど、違和感に小首をかしげる。


 意思を改めて、弓の部隊に突っ込む寸前で、私は新事実に気がついた。



 ゴブリンの死体を漁る。

   ↓

 【鉄の短剣】を手に入れた。

  

 

 うん、まさにナイフを手にした――本当に盗賊のような真似事しているが――ってことは、だ。



 ゴブリンの死体を漁る。

   ↓

 【毒消し】を手に入れられる可能性がある。



 うぉおおおおお、あぶなーーーーーいい!!!!!

 

 思わず転げまわりそうになった。

 勿論、死屍累々となったゴブリンのいる大地に転がらず、想像だけに留める。


 あそこでつっこんでったら、無駄骨だったんじゃない?


 実に、危なかった。


 これ、絶対、兄は気がついていたはずだ。

 こんだけ死体があるのだから、誰か一人くらい持っていてもおかしくはない。


 まぁ、戦闘中にビンが壊れていなければだけど。


 とすると、戦士になったことを、からかったやつの報復か、最初から私を盗賊以外にさせるきはさらさらなかったのだろう。


 くっ、こんな苦境で、やり返さなくたっていいのに!!

 

 人畜無害な振りして、ドSめ!

 お人好しそうな顔つきのせいで、一層、タチが悪いわい。


 ふははは、私がいつまでも、お前の手の中で躍っていると思うなよ―――って、実際、めちゃくちゃ踊らされてたけど。



 はい、作戦変更。


 作戦名:ハゲタカ参上。

 死者の死肉を啄ばむがごとく、ゴブリンとかの死体から、解毒剤を探すことに。


 うむ、割れていない小瓶を探すべし。


 

 数十体という転がったゴブリンを前に、私はいそいそと浮かびあがる小さな矢印を手がかりに死体を漁りだした。


 背後ではより一層、戦火が音を立てて激しくなっていた――が、私は死体を漁る事に専念した。


 なんか小気味よいテンポでレベルアップ音が響いているのが、ある意味恐ろしい。

 兄、お前、職種変更してから、一時間もしないうちに、どれだけ強くなる気だ。


 ともかく、目の前のゴブリン(死体)に集中だ。


 気持ちはすこぶる悪いが、背に腹は変えられないのである。


 ようやく3体目で、小瓶発見。

 でも、どろ、っとしてて色が青いんですけど。


 


   【体力回復薬(ポーション)】 

   

   リーズとハッタクルの薬草から作られた体力回復薬。効力は普通。

   販売価格:1000 (ビル)




 ちがっ!ノット体力!

 でも、ないよりはましか。拝借しておこう。


 さしたる重さもないので私は面倒なので、パーカーの帽子の部分に突っ込んだ。


 ちっちゃい魔石も何個か落ちてるから回収。

 これは、ポケットでいいか。


 はい、次。


 鉄の短剣、青銅の短剣、魔石、体力回復薬、魔石、魔石―――う~ん、普通の剣とか、斧は要らない。重いから。


 移動速度が落ちたら、簡単に死ねる自信があるよ。


 8体目で、短剣二本と回復薬。


 でも、これじゃないんだよな。もう。


 ちゃっかり、魔石も大量に落ちてるので拝借してるけど。軽い、し小さいから。


 腰のレンチの横に短剣を鞘のまま、さしておく。


 しかし、パーカーの帽子にあんまり入れると、瓶同士でぶつかって割れるかもしれない。


 仕方がない。

 汚れるから使いたくなかったのだけど。


 私は、ポケットから唐草模様の風呂敷を取り出して、二つをたてに並べてくるくると巻き込むと、そのまま背中に背負い、前で落ちないようにきゅっと結んだ。


 ちらり、と腕時計を見やる。


 すでに、時間は5分ほど経過している。

 ここにくるまでに2分、帰りに3分を考慮しても、10分。


 漁れる死体は5分で8体。

 

 ってことは、あと14~6体の死体を漁ることになるが―――そうだ。弓が近くに落ちているゴブリンの死体を探せばいいのか。


 体力回復薬、魔石、魔石、鉄の短剣。

 レベルには微々たる差があるものの、内容は変わらない。 


 ん?これは?




   【風と大地の腕輪】  

   

   二つの魔石のはめ込まれた銀の鎖でできた腕輪。防御力を僅かに上昇させる。

   販売可能:17100 ビル




 はい、即、装備。

 防御力があがるなら、それに越したことはない。


 次、次。


 道具に出てくる矢印を目掛けて、さくさく這う私。

 

 ふと、弓矢を手にした死体のゴブリンに視線を送ると、その腰から、お目当ての黒緑色の液体の入った小瓶がぶら下がっていた。




   【毒消し】  

   

   様々な毒を消してくれる効果のある。

   販売可能:1400 (ビル




「よし」



 思わず、片手でガッツポーズしてしまう。


 しゃがんで手にした瞬間だった。


 

 びぃいいん。



 張り詰めた糸を弾いた音と共に、背後にあった木に矢が刺さっていた。

 まさに、頭があったその場所に。


 放たれた方向を見ると、二体のゴブリンが、私に気がついたらしく、弓を構えていた。

 しかも他のゴブリンに声をかけているらしい。



 あれ?これって、絶対絶命?


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