9話
「? それは?」
花と花器だけ、と思っていたシャノンは、追加で出てきたものに着目。とはいえ完全な球体ではなく、まるで鳥の巣のように隙間の空いた、デコボコっとした丸いオブジェ。
花の横にベルは並べる。コロ、っと少しだけ転がって。
「これは花留めです。ここに花を挿すんですけど、こういった形状の花器にはやりやすいんですよ。色んな形や大きさがあります」
店主のベアトリスが個人的に購入していたもの。「好きに使っていいぞ」と言われていたので、せっかくだし。勝手にこういう仕事させられてるし。
次から次へと知らないものが飛び出す花の世界。わかってはいたことだが、シャノンは奥深さに口角が上がる。
「なんでもあるんだねぇ、面白いや」
この球体は本来の目的通りなのだろうか? それとも違う? 違うならなに? なんの用途? どういった使い方が他にできる? 私ならなにに使う?
「簡単ですし、花を活けてみたくなっちゃいますよね。適当に挿すだけでも動きが出て立体感が生まれますし」
代わりのものを買ってきたほうがいいのだろうか、とベルは案を出すが、そもそもどこに売っているのだろう、これ。少なくとも雑貨屋などではなかった。この店のもうひとりの店員はこういうの詳しいので、あとで聞いてみよう、と決めた。
華の都パリに住んでいても、あまり花には関わってこなかったシャノン。だが、この少女と話していると、今までにないイメージが湧いてくる。
「ウチは結構資料とかで乱雑な部屋だからさぁ、たしかに緑とかあったらちょっと和むかもね。私も見かけたらこのガラス、買ってみようかな、自分でもやってみたい気は出てきた」
まずは掃除して。いらないものは捨てて。で、空いたテーブルに簡単な花。これだけでも、ちょっとは淑やかさが出るじゃん?




