31話
「さっきも出ましたけど、あまりに日常ですからね。仕事前、学校終わり、ちょっとした息抜き。そこにいつもあるものですから」
ジェイドも同様。パリを数歩歩けばカフェに当たる。ショコラトリーに当たる。それに自分が語ってしまっていいのかというモヤモヤ。なんだか、全てのショコラティエやショコラティエールを代表しているような。
「新作のメニューとかはどう考えてるの?」
ふと、シャノンは気になった。常になにかしら新しいものを取り入れないと、まわりに置いていかれるのでは。となると、欠かせないもの。
ふむふむ、とアニーは首を傾げながら。
「そうっスねぇ。自分だったら何人かに見てもらって、全員に肯定されるやつはボツにしちゃいますね」
「え? 評判いいんでしょ? なんで?」
矛盾しているのでは。シャノンは目を丸くした。みんなが美味しいって言うならそれでよくない?
そこに割って入るのはジェイド。自身にも戒めている格言。
「『自分が出したアイデアは、少なくとも一回は人に笑われるようでなければ、独創的な発想とはいえない』。ビル・ゲイツの言葉ですよ。美味しいのは当然としても、惹きつけるものでなければ廃れてしまいますから」
「そうそう、それっス。それそれ」
まるで自分の言葉であるかのようにアニーは首を縦に振る。面白さは大事。時には味よりも。いややっぱ味は大事。どっちも。
格言に「なるほど」とシャノンは理解を示しつつ。
「ふーん。ま、いっか。でさ。行くとこ行くとこで質問してることがあるんだけど」
回り道を何度もしながら本題へ。このままだといつまでもそこへ辿り着けなさそう。
キョトンとしてアニーは目を丸くする。
「? なんスか? 年収っスか?」
「いや、それはそれで気にならなくもないけど。『職業』っていうテーマで商品を出すとしたら。あー、ここだとメニューか。どんなの出す?」
たしかにお金のことも知りたい気もするシャノン。が、それはまた今度にして。




