30話
「それで、なんでわざわざベルリンまで? パリでもよかったのでは?」
まぁ今ここにいる自分が言えることではないんですけどね、とジェイド。
そこで今、ここがフランスではないことをシャノンは再認識。目の前の二人のフランス語があまりにも流暢すぎて。
「最初はその予定だったんだけど。ドイツに面白いとこがあるって聞いてね。来ちゃったわけ」
それがここ〈ヴァルト〉。どう面白いかは行って確かめてみたらいい、とのこと。
なるほど、とアニーも妙に納得。
「ジェイドさんもたまたまっスからね。似てますね」
「そうなの? なんか予定とか理由があったわけじゃなくて?」
コーヒーに口をつけるシャノン。酸味と苦味のバランスがちょうどいい。なんて今更。
首肯するジェイド。つられてこちらもミルクティーに手を伸ばす。
「ええ。アニーからも来てほしい、って言われてましたし。ちょうど時間ができたので。せっかくなので手伝わせてもらおうかと」
甘く、それでいて芳醇。様々なベリーの入った特製のもの。店では出していないが特別に。
その作り手はもちろんアニー。
「賄いとか寝るところとかは用意してますので。助かるっス」
ついでに新作の試飲とかもしてもらえたら。お互いにメリットのある条件。
なにやら色々と素敵な裏がありそうな画策。というのはシャノンにとってはひとまず置いといて。
「ふーん。じゃ、本題に戻りますか。カフェとかショコラトリーとかって、どんな職業だと思う?」
率直に。パッと思い浮かんだものを。余計な情報で濁らないように。
言われてアニーは熟考する。特に今まで気にしていなかったから。
「そうっスねぇ。改めて考えてみると、なんか難しい質問ですねぇ」
シンプルすぎて。あれもこれも候補に上がってくる。けどそういうのは求められてなさそう、というのがわかる。




