29話
その道のプロ。という響きはアニーには心地よい。とはいえ。
「言っても、カフェっスからねぇ。日常的なものな気もしますけど」
生まれた時から身近で。故郷でも人々はなにかあればカフェに集ったり。特別、というものからはかけ離れた存在のような気もする。写真、にするにはいささかアレな気もしません?
しかしシャノンにとってはそうではなく。
「だからいいのよ。ソール・ライターって写真家知ってる? 彼もさ、日常というか、もうその辺にあるものや人を撮ってるのよ。ピントも木とか車とかに合ってて。普通の写真。でも、一瞬で惹き込まれる。角度とか色とか」
二十世紀に活躍した偉人の名前を挙げる。それは憧れでもあり壁でもあり。
彼の写真はあまりにも日常すぎて。だからこそ、観る側が「なにかメッセージが隠れているのではないか」という衝動に駆られ、隅々まで観たくなってしまう写真。それが理想。なかなかそこに辿り着けていないけど。
与えられた情報からジェイドは内容を吟味してみる。
「なるほど。当たり前にあるものを『再認識』させるような写真。ということですか」
とても素敵なこと。自分の作るショコラ。それも日常に溢れていて。それでよくて。誰でも作れるものだからこそ、上を目指してみたくなったのだから。その気持ちを思い出した。
理解が早くてシャノンも助かる。そこまで踏み込んで言ってなかった気もするけど。
「そそそ。わざわざさ。ウユニ塩湖とか行ってすっごいの撮るのもいいんだけど。私は『そっち派』なのよ」
見たまんまに『すごい』というよりかは、見た人に『考えさせる』一枚を。味わって、味わい尽くしてほしい。
難しいことは苦手。そんなアニーの心に去来するもの。
「よくわかんないっスけど、なんか面白そうな話っス」




