28話
ほぇー、と対面する相手の中身を少しずつシャノンは知りつつも、本命というか今日の目的はもうひとりのほう。
「で。キミが——」
「アニエルカ・スピラです。アニーと呼んでください」
誇らしげに。天真爛漫に。アニーが主張する。
じっとシャノンは見つめる。そして神経を店全体へ。だって。この子は。
「アニーちゃん。キミはここの店長さんなの? ホントに?」
店を任されている存在だというのだから。まだ学校に通ってる年齢で。そんなことあるの?
静かにカップを置きながらジェイドが肯定する。
「本当みたいですよ。アニーは一時期、自分の働くショコラトリーでも働いてもらったことがあって。その時に、ここのオーナーさんに確認を取りましたから」
ショコラトリー、はパリ七区では有名な老舗で。M.O.F、国家最優秀職人章を持つ人物の店。海外にも多くのファンを抱え、雑誌やテレビなどで度々紹介される。
まだ十代半ばの少女が店長。二十を過ぎたシャノンとしてはなんだか、複雑な胸中。
「ふーむ……色んなとこがあんのねぇ」
「で、今日はどんな取材っスか? 写真を撮りたいって言ってましたけど」
ワクワク。そんな擬音が聞こえてきそうなアニーの前のめり。できれば可愛く撮って欲しいっス。
顔を顰めつつ「ん?」とシャノンが反応する。
「あー、そうそう。まぁ先に言っちゃうんだけど、いい感じの写真を何枚か撮らせてもらって。個展に出すんだよね。あと——」
「あと?」
ジェイドが深くソファにもたれる。
にひ、とイタズラな笑みを浮かべながら、シャノンは指でフレームを作ると、少女二人を枠に収める。
「個人的な趣味。なんかさ。テキトーにテーマを決めて始めたんだけど、面白いんだよね。その道の人に話聞くの」
ふと、シャワーを浴びてる時に降りてきた『職業』というもの。でも突き詰めていくとやっぱり面白い。人間は。面白い。
その選ぶ基準としては、フランスといえば、というところからスタートした。花。クラシック。パン。その他諸々。今回はカフェ店員。フランスというかヨーロッパ全体で人気のある。




