24話
連綿と続く音の世界。良いことも悪いこともひっくるめて。ステイシーの血肉となる。
「だからこそ、私はクラシックが好きなのかもしれません。未完成で、未完結で、未熟で。いつまでも伸びしろがあるような気がして」
明確な答えがない。むず痒いときもあるけど。でもその議論がより、その曲と作曲家を輝かせる。素敵な関係性。自然と指が走る。
聴こえてくるのはたぶん、他のラフマニノフの曲なんだろう、とシャノンは予想した。この女性も。ベルとは違って、自分の中の自分を知ろうとしていて。それがたまらなく。美しく見える。
「……もしさ、ステイシーさんが『職業』をテーマにした曲を弾くとしたら、どんなのを選ぶ?」
弾き終わりに、最後にひとつ、問いを投げてみる。というより、ただの興味。楽しそうじゃん?
眉根を寄せてステイシーは思考する。
「職業、ですか? 曲名に職業が入っている曲はいくつかありますが……それとはまた違った感じですね」
「いや、あんま深く考えなくていいのよ。ほら、肩の力を抜いて。そういうもんなんでしょ? クラシックって」
早速受け売りを使ってみるシャノン。もっともっと。ふにゃふにゃとした、輪郭の曖昧なものでいい。らしい。
レダとしても、言われてみれば気になること。ぱっと閃いた曲が。ある。
「なるほど、候補はいくつもある。だけど僕なら、いや、モーツァルトの話が出たからね。なんかそっちのほうで考えてしまうね」
「そうですね。となると、あの曲かなと」
モーツァルトと職業。そこから導き出されるステイシーなりの答え。他の人のことは知らない。自分が思うままに。
「うん。たぶん、考えてることは一緒だね」
なんとなく一致した気がレダにも伝わる。きっと、他にもこの状況なら選ぶピアニストもいるはず。
両者の顔を見合わせつつ、シャノンの気持ちが逸る。
「なになに。そんな曲がモーツァルトにあるの? よかったらさ、それって弾ける? あと、録音とかもしてみていい?」
まだ許可は取ってないけどもレコーダーを出す。携帯でもいいけど、やっぱこういうのはちゃんとしたやつ。音割れとかやだし。




