23話
平均とか中全とか。よくシャノンには理解できていないが、ふんわりと感覚で掴んでみる。
「うん、実はすっごい奥が深い、ってことで。オッケー?」
「そんな感じ。クラシックはさ、あんま難しく考えないほうが本当はいいんだよね。モーツァルトだって、作曲してたのは借金を返すためだったし」
はは、と笑みを浮かべるレダ。それくらい頭空っぽで聴くくらいでいい。寝る前とか。休みたい時とか。
モーツァルトはさすがにシャノンも知っている。てかめっちゃ有名。借金?
「そうなの? もっとこう、高貴なイメージあったけど」
髪の毛くるっくるの人達はそんな感じの。毎日イスと机とピアノに齧り付いて、生涯を捧げたような。そんで出来上がった曲が今でも輝いていて。みたいな。
というのが俗説っぽいんだろうね、とレダは読んだが、真実は残酷で。
「逆、逆。彼の曲はふざけたものが多いよ。『俺の尻を舐めろ』とか、そんな曲もあるし。ラテン語っぽいけど全く意味をなさない適当な言語の『ディフィチーレ・レクトゥ・ミヒ・マルス・エト・イオニク』とか。この曲はバイエルン訛りの歌手が歌うと、非常に卑猥な曲に聴こえてしまうという、ある意味で芸術だね」
色んな意味で伝説の偉人。現代では生まれることはないであろう。めっちゃ批判とか受けそう。
「……モーツァルトってそんななの?」
自分の中の、とは言ってもそんなに確固たるものがあったわけじゃないが、シャノンの中のクラシック像が崩れる。もしかしてベートーヴェンとかも?
ひとりピアノの感触を確かめていたステイシーだったが、会話に参戦しつつ。
「そんな、ですよ。もちろん美しい曲も数多くありますが、人間味があって私はそっちのほうが好きです。むしろ——」
「? どしたん?」
なぜか言い淀む姿に、シャノンは唇を突き出す。




