16話
コンパクトかつ音量を気にせず弾くことができる電子のピアノ。そのデメリットをレダは挙げる。
「同じ音を出せるということはつまり、弾き手は今の調子がどうだとか、判断しづらいんだよ。そっちで慣れちゃうと、いざ生のピアノで弾く時に、自分の感覚とズレが生じる。全然気にしない人もいるけどね」
ほんの少しの歪みが後々大きくなっていく。電子ピアノには一切触れないプロも多くいる。同様に、繊細な感覚を崩さないために、ピアノの調律というものは狂ってからではなく、狂う前にやることが大事。
言いたいことはシャノンにもわかる。だがそこまでこだわるのは一部の人間なわけで。
「本気でプロを目指してる人限定っしょ? アマチュアなら、楽しく弾けりゃ問題ない、的な」
「それはあるね。普及にも携わるのが調律師だから。弾く人が増えたり、楽しいと感じてもらえるのは、たしかにいいこと」
その点に関しては納得しているレダ。まず、弾いてみて楽しさを知ってもらうところから。そこは電子ピアノの活躍があるというのは否定できない。さらに上を目指したくなったら、グランドピアノを買う、でもいい。本当は最初から生ピアノに触れてほしいけど。
調律師は音を整える以外にも、購入する際の相談役であったり、部屋の加湿器のアドバイスまで行うこともある。人によってはピアニストのメンタルケアまで担当するほど、影で支える重要な存在。考えることは多い。
シャノンは組んでいた足を組み替える。
「でしょ? まぁ、専門店には厳しい部分もある話だと思うけど」
カメラも、携帯に備え付けられているものが、相当に高性能になってきている。日常で簡単に使える、触れられるのもいいことであるのは間違いない。似ている。だからこそ、厳しさもほんのりとわかる。




