13話
「『海とカモメ』だっけ。どういうタイトルよ、本当に」
夜、自室にて。シャノンはコーヒーを飲みながら、パソコン上で今日撮った写真の確認をする。写真というものは、プリントしてこそのもの。レタッチも含めて、まだなにも終わっていない。
そんな中、ふとベルが弾いていたというピアノ曲が気になった。ラフマニノフ。名前は聞いたことがある。たしかロシア。ピアノの名手、だったような気も。
適当に動画を漁ってみる。すると、何人かのピアニストが弾いている映像を発見。コーヒーを口に含み、耳を澄ませる。
聴こえてくる。目を瞑り、そこからイメージ。海。カモメ。海。カモメ。だが。
「……なんとなく、晴れた海と、飛び交うカモメをイメージしてたけど。なんかこう、灰色の海に群れからはぐれたカモメ、って感じね。ちょっと怖い」
想像していたのと違う。穏やかで、リゾート地みたいな曲だと勝手に思っていた。どうやらそうでもないらしい。ないらしいのだが、これは人それぞれ。自分はそう感じたけど、例えば隣の部屋に住む人に聴かせてみたら、案外めちゃハッピーな曲になるかもしれないし。
背後に目をやる。すると、クルクマのアレンジメントがテーブルの上にある。じっと十秒ほど見つめて。そして結論。
「うん、フローリスト。それは『人と音を繋ぐ職業』。ってことで。どうでしょーか」
曖昧でひと口では言えないけれど。でも。
「いい笑顔だねぇ」
写真に収められたベルを見てると、なんだか活力がもらえてくる気がして。




