8話
side???
「上手く撮れましたか?」
「はい、バッチリです」
「それは重畳」
「でも、どうして私に力を貸してくれるんですか?」
「それは、あなたが彼女を救える可能性を持っているからです」
「そうですかね?あの子強情だから」
「彼女を呪縛から解くには、あなたが必要なのです」
「はぁ……」
「納得できませんか?」
「納得というか実感がないというか」
「大丈夫です。貴方ならできます」
「とりあえず、大樹君の誤解を解いてきます」
「健闘を祈ります」
「いらっしゃいませー」
あの事件から数日後、あたしは再び仮面を被り始めた。
ニコニコ。
「千栞ちゃん今日も元気だねー」
「ありがとうございます」
顔なじみのお客さんがあたしに話しかける。
「それじゃあ、また来るよ」
「はい、お待ちしてます」
パタパタと手を振って別れる。
「あの人が写真に写ってた愛人か?」
「そうだよ、菅原君」
「…………」
「…………」
無言の間が生まれる。
菅原君は、苛立ちを隠そうとせず、頭をガリガリと掻きお菓子の商品棚の方へ向かう。
あたしはただいつも通り接するだけだ。
そう、いつも通り。
「♪♪♪♪♪」
各コンビニ特有の自動ドアが開くチャイムが響く。
「いらっしゃいまs。あ……」
「やっほー、千栞。来ちゃった」
やってきたのは千晶だった。
元気よく手を振る彼女。
「今日はどうしたの?」
「うーん、ごめんね。今日は大樹君に用があるの」
申し訳なさそうに苦笑する。
「俺?」
呼ばれた菅原君が千晶へと向き合う。
「はいこれ」
手のひらには1枚の紙。
「これは?」
「いいから受け取って」
千晶と菅原君の手が重なる。
一瞬、本当に一瞬。菅原君が目を見開いた。
「今のって……?」
「連絡待ってるよー」
千晶はそれだけ言うと、お店をあとにした。
千晶が渡したのは何?
ラブレター?
菅原章弘がいるのに?
「モテモテだね」
気がついたら、そう零していた。
「あ、ああ」
戸惑う彼。
今のやり取りで何が?
そう聞こうと口を開きかける。
しかし、それは言葉に出来なかった。
もう恋人じゃないし、彼らが自由に恋愛するのは自由だ。
たとえ、その先に修羅場が待っていようが、それは当人たちの問題だ。
その後、あたし達は会話をせずバイトを終えた。
side大樹
バイト終了後、俺は森千晶さんに渡されたメッセージアプリのIDを打ち込んでいた。
『菅原大樹です。森千晶さんですか?』
自分のことを名乗り、相手のことも本人か問いただす。
『♪♪♪♪♪♪♪』
着信がかかってきた。
相手は今メッセージを送った人物からだった。
『やっほー、大樹君』
「こんばんは、こうして話すのは初めてですよね?」
『そうだねぇ。とりあえず、あの映像観てくれた?』
「手が触れた時に頭の中に流れた映像ですよね?」あれはなんだったんですか?それにあなたは一体何者です?」
『うーん、一般人に紛れた神の使い?』
「なんで疑問系なんですか?」
『あたしも正直驚いてるよ。ある日突然神様が目の前に現れて千栞を救ってくださいって言われたの』
「神がどうとか、ふざけてるんですか!?」
俺はつい怒声をあげた。
『ふざけてないよ。あたしの力はさっき見せたでしょ?あたしが撮影した映像をあなたの脳内に送り込んだの』
「撮影?章弘たちがあの写真をAIで加工したやつか?」
「そう。あたしにしか見えないけど、ミジンコ並の大きさの超小型精密撮影カメラを1000個操ることができるの」
「そんな話信じろと?」
『だったら、バイト始まる時に更衣室で千栞の悪口言ってた映像送ろうか?』
「そんなこと出来るわけ……」
ヒュポ。
動画が送られた。
『ったく、せっかく再会したのに、二股かけてたなんてな。なんであいつのこと好きになったんだろ?あー、最悪』
俺がバイトのための着替え中の映像だ。
「盗撮だろ!?クソッどこにカメラ設置した!?」
『設置?してないよ?従業員でもないあたしが更衣室、しかも男性の中に入れるわけないじゃん』
「くっ……!要求は?」
「一つだけ。千栞を救うのを手伝って」




