4話
「あ、だいくんおはよう♪」
次の日、学校にて昨日のことは無かったかのように、彼に接する。
「…………おはよう…………」
腑に落ちない。
そんな表情だ。
「あ、大樹君おはよぉ」
佐藤星七が登校。
「佐藤さんおはよう」
「星七でいいよぉ。それよりバイト先教えてよぉ」
「引越し業者のバイトだから忙しくて相手できない」
「えぇ〜」
「それよりちーちゃん」
あたしに向き直る。
「何?」
ニコニコ。
この笑顔を崩してなるものか。
「ちょっと来て」
あたしの返答を待たずに、手を引いて廊下に出る。
ガヤガヤ。
朝のホームルーム前。
他の生徒たちが廊下で思い思いの相手と会話をしていて騒がしい。
廊下の角。
周りに人がいない場所に連れていかれた。
「ちーちゃん、昨日のことだけど」
真剣な表情。
彼の瞳があたしを捉える。
「……………………」
あたしは黙って彼の言葉を待つ。
「俺と2人きりの時だけでいい。今のちーちゃん、素のちーちゃんで接して欲しい」
「素のあたしがこれだよ」
ニコニコ。
崩さない笑み。
「なんで……?昔のちーちゃんは今みたいに無理な笑顔じゃなくて純粋に楽しそうだった。その姿に俺は惹かれたんだ」
「昔からそうだったよ」
「え?」
「あたしの笑顔は昔から仮面。こっちが素なの」
「違う!」
彼が叫ぶ。
「違くない。あたしは昔から世間に、世界に絶望してた。そんな時にちょうど仮面を被る練習台がだいくん。あなたが現れた」
違う。あの時は純粋に目の前の彼と一緒の時だけは楽しかった。
けど、素直に言えない。
だって知ってしまったら。
彼までいじめられてしまう。
それだけは避けたかった。
この仮面はあたしだけじゃなく、彼も守るため。世界に絶望するのはあたしだけでいい。
「俺は……」
だいくんが声を絞り出す。
「例え俺がその仮面の実験台だったとしても、ちーちゃんが好きなことに変わりは無い。ちーちゃんの絶望を一緒に背負いたい」
「…………どうして?…………」
今度はあたしが声を絞り出した。
「どうしてそこまであたしに構うの……?」
涙が頬を伝う。
「好きな相手の助けになりたいことに理由はいるの……?」
ぶわっ……。
大粒の涙が頬を伝って廊下の床に落ちていく。
「う……うぅ……!」
言葉が出ない。
なんだろう、生きてきてこんなに嬉しいことは初めてだった。
side???
「ふぅ〜ん、いいネタゲットォ」
千栞たちの会話を聞き、クスクスと悪い笑みを浮かべる怪しい影があった。
彼女はそのまま軽い足取りで教室まで戻り、1人の男子生徒に声をかけた。
「ねぇねぇ、章弘ぉ」
「おん?」
その生徒は別の女子生徒と談笑を楽しんでいた。
「ごにょごにょ」
耳元に顔を近づけて、何ならコソコソと秘密の会話を試みる。
「へぇ、面白そうじゃん」
ニヤリと口角を上げる菅原章弘。
悪巧みを計画する彼らの内緒話は進む。
その間、彼らを睨みつけていた女子生徒。
章弘たちは目の前にいるにも関わらず、ニヤニヤといたずらの計画を立てていた。
件の女子生徒の視線は、怒りか嫉妬か、あるいは別の感情があるのかは、彼女しか分からなかった。




