第一話
ひとまず投稿。
この世界には、“神”がいた。神は生き物の住める星と天地を作った。
神の傍には"神獣"がいた。神獣たちは神が星から去った後に天地を見守っていた。
幾世を経て、人間の時代が訪れた。人間は神獣とともに天地を統べるようになった。
神と神獣の時代を黄金の時代と呼ぶならば、人と神獣が統べる時代は白銀のように尊いものであった。
神獣がいる限り、星は平和だった。しかし、神獣は星を統べる役目を終えたと悟り、多くは星を去っていった。
人間が星を統べる青銅の時代が始まったのだ。
☆ ☆ ☆
「鳥使いのリオ、軟弱なお前を火の国の戦士から除名する」
低く、剛毅な声が村の祭祀場のホールに響く。
黒鞘の太刀を腰に佩く髭黒の祭祀長は、当然といったように頷いてつづけた。
「理由は明白だ。お前の“トリノウタ”は村に貢献できない」
「……本気で言ってるんですか」
「お前の"トリノウタ"、あれはただの遊戯を上回らない。鳥をただ空中で遊ばせるだけの術など、火の村には不要だ。」
「でも、使い方によってはスカウトや攪乱に利用できますし、実際、戦いで幾度も証明しています!」
リオは、動揺しつつも自分のスキルを祭祀長に弁明する。
リオの”トリノウタ”は、空飛ぶ鳥を歌によって操る物で、彼の一族代々に受け継がれているウタを戦場でも有意なものに仕上げたワザであった。
通常調教されなければ操ることが出来ない鳥を種類を問わず、命令することが出来るリオは、
たしかに戦場で成果を上げていた。
だがそれはあくまで“裏方支援”にすぎず、戦場においては表に立って戦う戦力にならない。
敵を討ち、木々を切り開く……そういう屈強な戦士が活躍する火の村の中では、リオの存在は空気に思われても仕方ないところがあっただろう。
そして今日、ついにリオは切り捨てられたのだ。
その絶望たるや、されど彼はあきらめずに続ける。
「……たしかに俺の“トリノウタ”は、誰かを直接斬る力はない。だけど……っ!それでも、俺がいたから味方が生き残ったこともあったでしょう!?」
髭黒の祭祀長は少年の嘆願を聞き終えると、一笑にふしたのち、言った。
「お前さんの言い分は承知した。しかし、無用と言ったら無用なのだ」
「……なぜ。俺は少しでも貢献したいとがんばって」
「戦神が無用だとおっしゃったのだ。重ねて弁明を続けるか、リオ」
「そんな!」
リオは祭祀場の上を見上げる。其処には火の村の戦神を象った厳めしい像が見下ろしている。
(……どうして、俺のウタは届かない)
リオの胸に、古びた詠唱がよみがえる。
「レイ=ガルナス……!」
けれども、八眼の戦神はリオの問いかけにこたえることはない。
御神の持つ、七支刀の鋭い切っ先に突き刺さった、リオの心中とは裏腹に。
戦神は、沈黙を貫いている。
リオの懇願とも違う複雑な感情が入り混じった視線を向けられても。
御神は一瞥もくれることはない。
戦神に祈りと救済のウタを捧げても振るわなかった剛腕。
リオは目を閉じ、あの景色を思い描く。
――戦場で、火の中で、血と悲鳴の中で。
お前の助けを呼びながら、人が焼かれ、営みは失われた。
それでも人々は歌い続けた。
お前に届くと、信じていたからだ。
……けれど。
(俺の声が届かないのなら……俺の神である必要も、もう、ない)
リオは振り払うように首を横に振ると、祭祀場から出ていく。
祭祀長は御神に倣って、彼の小さな背中を見届けることはしなかった。
まだまだ、書き溜めている途中なので、どういう風になるかわかりませんが、興味がありましたら、ブクマ、評価などお願いします。
タイトル通りの展開になるのは凄い先なんじゃないかと思います。多分。