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アマビエシール


 小学校の友達が言っていた。


 駄菓子屋のお姉さんがシールを配ってるんだって。駄菓子を買ったらおまけのシールをくれるんだ。


 友達が見せてくれたシールには間抜けそうで人魚のような不思議な生き物が描かれていた。絵は上手とは言えなくて、手作り感に溢れてて、僕にはそれがなんだかとても羨ましく思えた。


 友達はシールを分けてはくれなかったので、僕はシールを手に入れるため、放課後に一回自宅へ帰り、田んぼの側の道を自転車で走る。


 自宅から駄菓子屋まではそれほど遠くはなかった。お菓子はコンビニとかスーパーとかでも買えるから、僕はこれまで駄菓子屋というものを利用したことがない。


 駄菓子屋は小さなお店で、広さは感じられなかった。店の棚には十円とか五十円の駄菓子が並んでて、カウンターの奥には髪の長いお姉さんがいた。黒いはずの髪が青くも見えて、なんだか不思議な感じのするお姉さんだ。


 僕は適当な駄菓子を選んで、お姉さんの元へ持っていく。お姉さんにお金を払って、駄菓子を買うと同時にシールをもらった。シールはカウンターの奥にいっぱい用意されてるみたいだったけど、僕が選ぶんじゃなくて、お姉さんが選んだシールをくれた。


 他のシールも見せて欲しかったけど、お姉さんが「これで良いんだよ」と言って、僕もこれで良いんだな。と納得してしまった。そのときの僕がなんで素直に納得したのか、不思議なんだけど、お姉さんの言葉には妙な説得力が存在した。


 僕はお姉さんにもらったシールを大切にしている。大人になった今も、それを大切に持っている。


 不思議なことがある。子どものころ、僕は風邪をひきがちだった。だけど駄菓子屋でシールを貰ったあの夏から、僕は風邪をひいていない。単に僕の体が強くなったのか。それとも、あのシールが僕を守ってくれているのかもしれないと考えたりする。


 子どものころの僕はあまり気にしていなかったんだけど、シールには絵が描かれている他、四隅に字が書かれている。海という文字が四つ。僕が住んでいた土地に海はなかったのに、不思議だ。


 絵についても分かったことがある。子供のころに人魚だと思っていたそれはアマビエという妖怪なのだとか。病を払う力を持っているらしい。


 そのシールには病を払う力があるのかもしれない。僕が持っているシールの場合は風邪を払う力があるのかも。シールには病避けのお札のような役割があるのかも。


 今、僕の故郷にあの駄菓子屋はないそうだ。あのお姉さんは今どこで何をしているんだろう。


 彼女は何者だったんだろう。

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