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悪役令嬢坂

断罪返しをされた王子のその後

作者: 山田 勝

『お前は、廃嫡の上、北の塔に幽閉だ。男爵令嬢ベルタは、北の修道院で生涯を過ごせ』


『殿下、ベルタ嬢の話は、全て、証言だけですわ』


『そんな。あたしは、違うの!殿下に騙されていただけですっ』


【フフフフフ、アハハハハハ~~~】


『何がおかしい。ゲオルクよ!気が触れたか。可哀想に』

『ゲオルク、お前は、昔からわがままでしょうもない子でした』


『おかしいのは父上と母上です!血のつながっていない婚約者の侯爵令嬢にそこまで肩入れするとは、これを見ろ!絶対に使ってはいけない王家秘蔵の魔道転移爆弾だ!おれ以外、皆、転移しちまえ!』


 ボン!



 ☆日本国某ホストクラブ


「魔道転移爆弾って、使った方を転移させるものだったのよ。我と近くにいたベルタが転移したのだ。ベルタとは疎遠だ。真実の愛なんて、幻だったのだ。

 でさ。おっ、そろそろ、一時間じゃん。

 早よ。本指名しろや。シャンパンとか言うやつも入れろ。

 お前ら、聞いているぞ。キャバとか言う酌婦だろ?金持っているだろう?」


「「「「・・・・・・・・」」」

「チョー無理!」

「オラオラ系!外人ホスト珍しいから付いてきたけど、無理!」


「おい、待て、無理無理言うな!頑張れ!」


「コラ!王子、お前、クビだ!就労ピザも持ってこないし、給料3万6千円もって、出て行け!」


 ・・・畜生、ホストの寮、追い出されたぜ!

 ベルタは心変わりしたから、疎遠になった。

 奴は、この世界でうまくやっているらしい。

 面倒を見てもらうか。


 ☆繁華街


「おじ様、素敵です。でも、弟が病気になって、夜の仕事をしなくてはならなくなりましたの。だから、おじ様とは会えなくなりますわっ」


「何だと、そうか。相談に乗る。家に抵当をつけて、金を借りるから、それまで、これでしのいでくれ」


「おう、ベルタ、寮、追い出された。また、よりを戻してやるから、面倒を見ろ!」


「ヒィ、美人局!」


 ・・・・


「ちょっと、後、もう少しで、パパさんからお金を引っ張られたのに、知らない。フン!」


「おい、待て!」


 俺の服は来たときから変えてないから、目立つ。


「外国から来られた方ですか?パスポートを拝見しても?」

「ノー、ニホンゴワカリマセン!」

「コラ、待て!」


 街だと目立つ。金もそんなにない。


「おい、ここで寝るな!」

「うっせー、平民が!」

「なんだと、水ぶっかけてやる!」


 しかし、俺は頭が良い。ニュービジネスを考えた。


 まず。金券屋にいくだろ?

 そこでなけなしの一万円で、額面一万円の商品券を9900円で買うのだよ。

 お釣りが出る商品券限定だ。それが大事。


 イオランに行くのだ。

 安いお菓子を買うのだ。23円のチロちゃんチョコ一個を買ったら、


 何と、9977円お釣りがもらえる。


 元々の商品券が、9900円だから、何と!77円とチロちゃんチョコ一つの儲けだ。


 これを、何回も続ければ・・・


「出ていけ!出禁だ!迷惑外国人!」

「何だと!」


 何回が続けたら、出禁を食らった。


 ヒソヒソヒ~


 目立ったら、衛兵隊に通報される。


 ここは、目立つ。山奥に逃げよう。

 狩りは出来るか?生活魔法ぐらいしか使えんが、何とかなるだろう。


「お、池だ。クンクン、臭いな。よし、ここで水浴びをしよう!」


 パシャ、パシャ浴びていたら、



 チャリン!チャリン!


 自転車が二台やってきた。


 何だ。一人は、この世界の住人だが、もう、一人は、外人?

 いや、違う。腰まで髪がのばしている。

 目がつり目で・・・・体に魔力を帯びている。同胞だ。


 お、相手も我を認識したな。魔法を使えるのか?構えやがった。


「和樹殿!こやつは、変態じゃ!我の背に隠れるのじゃ!」

「え、何?アニメの設定?」


「我は、ドドリア連合王国のゲオルク王太子・・元!」


「フン、妾は、ノース王国がローエングラム公爵家のエリザベータじゃ」


 ・・・何だ。西方の大陸か。言葉が通じる。

 便利だぜ。


「分かった。この世界に追放されたよしみで面倒を見てもらおう」

「断るのじゃ!」


 ・・・話を聞くと、この女は、魔の森に追放されて、この世界に来ただと?

 それで、ササキ家という家門持ちの平民の家で、農業を手伝って、居候をしている。

 ちなみに、今着ている奇妙な服は、

 相方の中等平民学校のジャージ?どうでもいいわ。


「じゃあ、我はどうやって、生活すればいいのだ!」


「知るか!」

「エリ姉さんのコスプレ仲間?」

「違うのじゃ!和樹殿は見てはいけないのじゃ」


「良い方法があるよ」


 カズキという平民が教えてくれたのだ。


「僕たち、釣りに来たんだ。少し待ってね」


 バスシャン!


「うわ。釣れた。これは、ブラックバスと言って、この魚を漁業組合に持って行くと、お金もらえるよ。生体の持ち運びは禁止だから注意して、必ず殺して、ビニール袋に入れて持って行くこと」


 我は、カズキ殿から、糸と針をもらった。

 竿は、落ちている竹を使う。

 エサはブルーギルとかいう魚の死骸を使った。


 奴ら、馬鹿だから、バシャバシャと飛び跳ねて、そのまま地面に落ちる。馬鹿だろう。

「ほい、千円!見ない顔だな」

「俺も、お前を見たの初めてだぜ」

「フン」


 初日は、千円ももらえたぜ!


 ☆一月後


 あの同胞は来なくなった。

 平民の釣り人に声を掛けられた。


「Where are you from?」

「何だ?」

「王子さんは、どこの国から来ましたか?」


「ドドリゲス連合王国だ」


(英語が通じない。もしかして、ユーラシア系の難民)

(アニメ好きで、コスプレまでして、戦争で記憶をなくして、無意識で好きなアニメのコスプレをして日本に来た?)

(((可哀想)))


 皆、我のただならぬ高貴さを感じ取ってくれたのだろう。親切にしてくれる。


「王子!パンを持って来たよ」

「王子、オムスビも食べられる?」

「コーラ、飲む?王子の国にコーラあったかな?」

「おう・・」


 いや、親切過ぎる。奴ら、何が目的だ。俺の地位でおこぼれをもらいたい感じか。

 いや、今は違う。


「王子、銭湯に連れて行ってあげる」

「ランドリーも近くにあるよ」

「100均も案内するよ」


 釣りが終わると、どこかに連れて行ってくれる。

 何だ。こいつら。毎日、来ないかな。


 しかし、奴らは土日という日しかこない。


 とても、良い奴らだが、

 そうでない奴も来る。BBAがやってきた。

 耕運機とかいう奴に乗っている。


「コラ!ぼんくら、ボケ!バスをあちこちに放流するんじゃねえよ!」


「アハハハ、おばあさん。ちがうよ。 俺たち、駆除をしているんだ」

「オラ、ク○BBA、こっちは生活でやっているんだ。邪魔するんじゃねえ!」

「何だと。王子様みたいなけったいな服しやがって!」

「うっせー、俺は王子様だ!元だけどな!」


 ・・・


「ダメだよ。王子、地元の人ともめちゃ」

「分かった」


 それでも、俺は一生懸命頑張った。

「どうしても千円超えないな」


 ポタ!


 バスシャン!


「何だ。昆虫が池に落ちたら、バスが食いついたぞ」


 あそこにバスが固まっている。狙いたいが、竿は届かない。リールは高いし


 我はひらめいた。


 そうだ。糸が飛べばいいのだ。重い糸


 我は100均で、毛糸を買った。

 毛糸の先に、釣り糸をつける。

 先だけ透明にすればいいんだ。


 ・・・・・


 まず。目を閉じる。

 風を感じる。


 クワッ!と目を開ける。


 風に乗せて、毛糸を投げる。


「飛べ!飛んでくれ!」


 すると、遠くに飛び。疑似餌が落ちる。


 我が、作った疑似餌だ。


 平民どもがルアーを使っているから気がついた。

 バスは馬鹿だから、エサなんて勿体ない。ブルーギルが毎日、都合良く落ちているわけじゃないからな。



 バスシャン!


 食いついた。竿とエサは不要だな。手で引っ張る。



 ・・・


「すごい、王子、自力で、フライフッシングを開発したよ」

「これは、天才かも」

「ねえ。王子、僕らのバスも持って行ってくれない?」


「いいのか?金になるんだぞ」


 開眼した我は、日の収入が2000円超える日があるようになった。

 ようやく生活が安定してきたぜ。


「あれ、オムスビがおいてある。何々、王子様へ」


 我のファンか。食べ物が置いてある日がある。


 うむ。頂こう。


 冬は寒くなる。池で水浴びは厳しくなるな。金も1万5000円も貯まった。そろそろアパートを借りられるか?


 そんな矢先、事件が起きた。


「ヒャッホー、ナイスファイト!」

「よし、キャッチ&リリースだ」


「おい、おい、待て、看板がみえないか?この池、リリースは禁止だぞ」


「何だと、このインチキ貴族が」

「やっちまえ!」


 ボカボカ!


 我は殴られた。

 こんな奴らがいるから、真面目な釣り人が白い目でみられるのだ!


「フン、この池に住み着いている浮浪者が!」


 しかし、次の日、皆の見る目が変わった。何故だ?


 あのBBAだ。耕運機をふかしてやってきた。


 ブン!ブン!


「おら、浮浪者外国人、おっちんだら、迷惑だから、これでもくらえ!」


 パサ!


 菓子パンが入っているコンビニ袋を投げやがる。


「BBA・・・・」


 漁業組合の親父も


「ほい、1800円だ」


「親父、少し多いぞ」


「フン、計算が面倒だからだ。おい、日差しが強くなった。熱中症で倒れても面倒だ。これ被っとけ」

「おう」


 帽子には聖女市漁業組合の名前が書かれていた。

 王子は気がつかないが、仲間として認められたのだろう。


 その理由は、やはり、あの日の事件だ。


「王子!大変だったね」

「SNSに上がっていたよ!」

「バズっていたよ」


「何だ?」


 何々、あの日、殴られていたのを、こっそり動画で撮った人がいた。

 動画をアップして、衛兵隊に届け。犯人が逮捕されただと、


 それじゃ。我も衛兵隊に捕まるではないか?


「あの服装、通称、王子ですね。署まで来てもらおう」


 もう、来やがった。捕まる。


「ノー、ノー、ニホンゴワカリマセーン」


 万事休すだ。囲まれた。

 その時、我の腕を掴む女がいた。見たことない女だ。


「王子は、オラの婚約者だど!」

「誰だ?お前知らないぞ。おい、すごい力だな。手首を極めるのやめろ!」

「ずっと、好きだっただ!」


「アハハハ、事件の被害者として、事情聴取をするだけですよ」


 何故、笑顔なんだ?


 ・・・


 あの女は、ヨシコと言って、我のファンで、後をつけて、写メを撮ったり。動画を撮ったり。ストーキングを楽しんでいたそうだ。

 オムスビをくれたのもヨシコだ。


「ねえ。王子、結婚するの・・」


「おう、今、ヨシコのアパートで厄介になっている。ヨシコはオーエルでな。部屋に行ったら、我の写真が、部屋中に貼ってあった。

 うむ。我を愛している証拠だ」


(これって、ストーカーじゃない?)

「でも、王子が幸せなら」

「応援するぜ!」



 ☆数ヶ月後


「大変です。60センチを超えるバスが、水鳥の雛を襲います」


「水草が生えている場所を縄張りにしている。投網、ルワー、フライフッシングの名人に依頼しても捕まえられない」

「賞金10万だが、皆、失敗している」


【フフフフフ、アハハハハハ、我らに任せてもらおうか?このゲオルクと】

「その愛妻、ヨシコだど!」


「何?あの売り出し中のバスハンター」

「おい、女がすごい力で、艪をこいでいる。しかも静かだ!」

「あの王子の格好をした奴、毛糸を持っているぞ!」


 王子は集中する。風を読む。毛糸を投げるその瞬間まで、バスのことを忘れた。

 ゾーンに入ったのだ。


 ヒュルルルルル~~


 クワッ!


「今だ!!」


 シュン!


 毛糸を投げたが、それは、それは、綺麗な線を描き。疑似餌は、難しい水草の間に、着水した。


 バスシャン!


「ヨシコォオオオオオ!」

「ゲオっぺーーーーーー」


 ・・・・


「ニュースです。野鳥保護会を悩ませていた凶悪なブラックバスが、トドリゲス夫妻によって、釣り上げられました。旦那様は外国出身です、アニメが大好きで、いつも王子様のコスプレをしています。・・・『オラだけの王子様だと!』・・・」


「あれ、エリ姉さん。これ、池で会った人じゃ」

「そうかのう。ほれ、今夜は肉ジャガかえ?我にも作り方をおしえるのじゃ」

「いいよ。一緒に作ろう・・・」


「次のニュースです。聖女市で頂き行為をしていた。国籍不祥ベルタと名乗る外国人女性が、詐欺容疑で逮捕されました。県警本部は・・・」


 異世界人、日本に転移して、社会に紛れ込み活躍している者もいるかもしれない。





最後までお読み頂き有難うございました。

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