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ギガンティア大陸戦記  作者: 葉月麗雄
第一部 第一章 士官学校時代編
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捜索依頼 後編

セリアたちが高官居住区に侵入してしばらくすると、モニカの私兵衛兵が南地区居住区に駆けつけた。


「すでに三人は中に入ったようだな」


隊長が部下たちにそう言うと、倒れている門番を起こした。

門番は相手がモニカの私兵とわかると状況を説明したが、返ってきた言葉は彼らが理解に苦しむ内容であった。


「二人とも、さっきここを強行突破した三人については一切見なかった、知らなかった事にしてもらおう。これはモニカ様のご命令だ。逆らえばお前たちは皇族反逆罪を適用して極刑になる」


「皇族反逆罪!」


その言葉に門番たちは震え上がった。

帝国では皇帝ルーファスを筆頭とするフリードリヒ一族に対する反逆は即処刑である。


「しかし、我々が素通りさせた事が判明すれば伯爵たちに我々が処罰されます」


門番が必死で頼み込むと隊長は心配するなと付け加える。


「さっきも言ったが、これはモニカ様直々の命令だ。あの三人はここに囚われている友人を助けに行ったのだ。犯人は伯爵の子息たち。その一件が知れ渡れば恥をかくのは伯爵たちだ。内密に処理され、お前たちの罪は問わない事になろう」


そう諭されてようやく門番たちも落ち着いたようであった。


「セリアたちはおそらくハプスブルク邸に向かっている。探し出して見つけたらエミリアの救出を手助けしろ。ハプスブルク伯の子息たちは見つけ次第確保だ」


「かしこまりました」


隊長の指示に十人の部下たちは二手に分かれてセリアたちとエミリアの捜索に当たった。


一方のジュディたち三人はついにハプスブルク邸を見つけ出した。


「ここか。流石にでかい屋敷だな。こりゃ探し甲斐があるってもんだ」


ジュディは軽口を叩いたが、ハプスブルク邸は長さ五十メートル。

二階建ての白いコンクリート建築の豪邸で部屋数は五十部屋はあろうかという大きさであった。

ここにもハプスブルク邸お抱えの門番が居たが、三人は再び力づくで邸内に侵入した。


足の縄を解いたエミリアは、今度は腕の縄を解きたがったが、これは少しばかり時間がかかりそうであった。


「とりあえず足だけでも自由になればここから何とか脱出出来る」


エミリアは天井の梁から縄をはずすと幅十五センチほどの梁の上をバランスよく走りながら、積み上げてある小麦粉が入った袋の上に飛び降りた。


「あそこだ、追え!」


貴族子息たちの怒号が飛び交う中、エミリアは山積みにされた袋の山から隣の袋の山へと飛び移りながら両足の脚力と縛られた腕を上手く使い下に降りて行った。


「セリア、あれは何だ?」


ハプスブルク邸に侵入した三人は屋敷に直接侵入しようとしていたが、ソレーヌが邸内の庭にある倉庫を見つけた。


「倉庫か?物置のようでもあるが」


そう言いながらセリアはピンと来た。


「親にバレないようにここまで連れ込んだとしたら、屋敷に直接連れ込むよりあの倉庫の方が都合がいい」


三人は目標を倉庫に変更した。


下に降りたエミリアは高身長を生かした足技で追って来る貴族子息たちの足元を蹴り転ばせ、繋がれたままの腕で顔を叩き、怯んだ隙に急ぎ出口を目指す。

その時倉庫の扉が開いた。


「エミリアー!いるか?助けに来たぞ」


ジュディが大声で叫んだ。

その声はエミリアにも届いた。


「ジュディ、相手は十人だ。油断するな」


「オッケー。任せとけ」


ジュディはエミリアの無事を確認するとセリア、ソレーヌと目配せして一斉に倉庫内に突入した。


「あいつら、どうやってここへ?伯爵以上の階級しか入れないはずだろ」


ハインツが驚きの声を上げるとジュディが目の前に迫って来た。


「強引に突破したのさ。ボクたちを甘く見ないでもらいたいね」


ジュディは槍を一閃するとハインツは額に一撃をくらい突き飛ばされて倒れた。

さっきの門番の時もそうだが、槍と言っても学生の身分で殺害するつもりは毛頭ないので、演習用の模造槍である。

怪我を負わせる事は出来ても命を取る事までは出来ない代物だ。

ハインツがジュディにやられたのを見て共犯の子息たちは逃げようとしたが、セリアとソレーヌに足を剣で強かに叩かれて悲鳴を上げてその場に倒れていった。


「ジュディ、助けに来てくれたんだね。ありがとう」


エミリアはジュディの前に姿を見せたが、全身を鞭で撃たれて傷だらけのエミリアを見てジュディはすぐに駆け寄った。


「エミリア、その姿は。。ごめんな。すぐに助けられなくて」


エミリアはジュディの姿を見て安心したのか、そのままジュディの腕の中に倒れるように寄りかかった。


「何でジュディが謝るの。謝るのは私の方だよ。こんな罠にはまって捕らわれて。。ジュディに余計な心配かけちゃってごめんなさい」


「もう何も言うな。まずは怪我の手当てをして、しばらくゆっくり休め」


ジュディにそう言われてエミリアはひと安心したが、後ろにいる二人に気がついた。


「エミリア、後ろにいる二人はボクたちがずっと逢いたいって言っていたセリアとソレーヌだ。エミリアを探すために協力してくれたんだよ」


「あなたたちがセリアとソレーヌ。。ありがとう。見ず知らずの私のためにジュディに協力してくれて」


「何を言うんだ。私たちもジュディ、エミリアたちとは逢いたいと思っていた。私たちはもう友人同士、協力するのは当然だ」


セリアがそう言うとエミリアが笑顔で答えた。


「友人。。ありがとう。これからよろしくね」


ジュディがエミリアの腕の縄を解くと四人はがっちりと手を結んで互いに友情を確かめ合った。

それから数分後、モニカの私兵がハプスブルク邸に突入した。


「ハプスブルク伯の子息とその仲間たち。エミリアに対する暴行罪及び監禁罪で検挙する」


ハインツとその仲間たちは全員確保された。

私兵の隊長がセリアたち四人の元に駆け寄る。

ジュディとセリア、ソレーヌはこれで退学だなと覚悟を決めていた。


「お前たちがジュディ、エミリアにセリア、ソレーヌか?」


隊長の問いにジュディが代表して答える。


「ああ。そうさ。エミリアがここに監禁されていた情報を掴んで伯爵以上しか入れないこの住宅街に勝手に入り込んだ。退学の覚悟は出来ている。罪は償うから連れて行ってくれ」


それを聞いた隊長の返事に四人は驚いた。


「お前たちは全員被害者だ。士官学校の校長からも罪に問わないよう依頼されている。今回はやむを得ない状況だという事もあり、一切の罪に問わないから速やかにここから出ていきなさい」


「え?いいのか?」


「学校内の事で大っぴらに出来ないと校長から頼まれているのでな。それにハプスブルク伯もまさか自分の息子がこんな愚かな事をしたと知られては世間体も良くない。何事も無かったように処理してくれと依頼されている。だから、何事もなかったように振る舞ってくれて大丈夫だ。それよりエミリアの怪我の具合が心配だ。早く病院に連れて行ってあげなさい」


隊長がそういって微笑むとジュディもセリアとソレーヌも頭を下げてお礼を言うと急ぎ居住区から離れた。


翌日、ジュディとセリア、ソレーヌの三人は校長室を訪れて無事エミリアを助け出した報告と、罪なしとしてくれた事にお礼伝えに行った。


「今回の一件にハプスブルク伯の子息が絡んでいると知ったのは、セリアたちに頼んだ後の事でな。まずい事になったと思いつつ、君たちが強引に居住区を突破するであろう事は予想が出来たからな。すぐに伯爵に連絡して、子息の愚かな行為を世間に知られたくなければこちらに任せて欲しいと伝えてな。伯爵は渋々承諾したという訳だ。今回の件はハインツたちの方に非がある。君たちは罪に問わないから安心して学園生活を続けてくれ。もちろんジェシカについても罪なしだ」


実際のところはハプスブルク伯にそれを伝えたのはイリーナでモニカに逆らえない伯爵が従ったのだが、私の名前は出すなと固く口止めされているので、表向きは全て校長の計らいという事になっている。


「校長、ありがとうございます」


ジュディがお礼をいうとセリアとソレーヌも頭を下げてお礼を言った。


「セリアとソレーヌもよくやってくれた。さすがは校内でも評価の高い二人だ。君たちはいずれこの国を背負って立つ事になるだろう。これからも学務に励み、より一層成長して巣立ってくれたら私も嬉しい」


この校長、思ったよりいい人だな。

セリアとソレーヌはそう思いながら校長室を後にした。

まさか背後で皇女モニカが全てを処理していたなどとは想像すらしていなかった。


ジュディは約束通り、エミリア捜索を手伝ってくれたセリアとソレーヌの仲間となり、クラスは違うが、授業以外の時間をセリアたちと過ごすようになった。


「ジュディ、エミリアの具合はどうだ?」


セリアが声をかけるとジュディも明るい声で答える。


「回復が早いって病院の先生も驚くほど順調に回復していってるよ。このまま行けば二週間ほどで退院出来るそうだ」


「そうか、良かった」


エミリアが入院したのは宮殿内の貴族専用病院で、一般の病院とは比較にならない設備が整えられている。

これもモニカが日頃から士官学校の生徒が怪我をした場合に備えていつでも受診できるようになっていたので、対応が早く看護も手厚かった。

その後、エミリアも怪我が回復して復帰すると、四人は校内外問わずに一緒に行動するようになり、ジュディとエミリアはセリアたちにとって欠かせない仲間となったのである。

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