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ギガンティア大陸戦記  作者: 葉月麗雄
第三章 ロマリア帝国事件編
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運命の再会

一日が終わり、ソレーヌもミリアムも互いに宿舎に戻って行った。


それはまさに運命的な再会であった。

ソレーヌが自室に入ろうとドアの取っ手に手をかけた時、ミリアムが宿舎に戻って来た。

ミリアムは何か考え事をしているようでうつむき加減に歩いていてソレーヌに気が付いていない。

何気なく横から来る人物の顔を見たソレーヌだったが、断片的な記憶の欠片が脳裏の中を瞬間に横切った。

思わずミリアムの名前を呼んだ。


「ミリアム?もしかしてミリアムじゃないか?」


(え?)


自分をそう呼ぶ声。

月日が経ち大人になっていたが、それでもその声は確かに聞き覚えがあった。

いや、そんなはずはない。

でも、まさか。

そう思って恐る恐る顔を上げてを見ると、そこに居たのは見間違えるはずもない幼馴染の姿であった。


「ソ。。レーヌ?」


「やっぱりミリアムか」


ずっと前に忘れたはずだった。

もう自分の事なんて忘れていると思っていた。

なのに十年以上の月日が経っていても忘れるはずのない顔。

子供の頃の面影が残っていてすぐにソレーヌだとわかった。


「ソレーヌ?ソレーヌなの?」


「ああ。ミリアム、久しぶりだな」


ミリアムは思わずソレーヌに抱きついた。


「おいおい。どうした?」


少しばかり驚いたソレーヌだったが、ミリアムが泣いている事に気がつくとしばらくそのままにしてあげた。

ミリアムはしばらくソレーヌに抱きついて泣いていたが、ようやく落ち着きを取り戻した。


「いきなりごめん。。あまりに突然だったからもう頭の中が混乱して嬉しいやら懐かしいやらで」


「構わないさ。今もこうして元気でいてくれてよかった」


二人はソレーヌの部屋に入り、しばらく近況報告などを交わした。

会えなかった期間を少しずつ埋めていくように。


「クーロンアイはソレーヌが責任者として管理しているのね。ルーファス法に引っ掛かるはずの私を何の咎めもなく通してくれた理由がわかったよ」


「私はこの立場だから大きな声では言えぬが、ルーファス法は悪法だ。どの民族だって平等に生きる権利はあるだろう。だから私は民族の違いでこのクーロンアイを通さないという事は一切しない。つい最近私たちの仲間にネープ民族の少女が加わってね。その子もネープ民族と言うだけで奇異の目で見られる事が多いから私たちが守っているんだ」


「さすがね」


ミリアムはそう言ってから少しうつむき加減で故郷の村がルーファス法で壊滅させられた事、両親が殺された事を打ち明けた。

ソレーヌはそれを聞いて驚きを隠せなかった。


「何という酷い事を。。」


「その時私の両親を斬った男の顔を一時も忘れた事はなかった。そしてザラメスで情報収集しているうちに、その男がここの県令であるファビアンだとわかったの。だから私はここに入り込んで両親の敵討ちを取ろうと思っていた」


「私は偵察員としてここに来たばかりだが、既に異様な雰囲気を感じている。敵討ちをしたい気持ちは十分過ぎるほどよくわかるが、ファビアンの近辺にはおそらく手練れの部下がついているだろう。危険だ」


「私もつい先日知り合ったばかりの友人と話しをしていて、自分の考えが甘かった事は認める。それより私の友人が近いうちに生贄にされてしまうかも知れない。何とか助けてあげたい」


「どう言う事だ?」


ミリアムはなるべく簡潔に、要点を抑えてアンナに聞いたばかりの生贄の事をソレーヌに話した。

流石のソレーヌもあまりの事にしばらく言葉が出なかった。


「でもソレーヌがモニカ様の命を受けて潜入調査しているなんて想像すらしていなかった。これでアンナを脱出させられる希望が出てきたよ」


「こちらもミリアムのおかげでギアラエ鉱山の悪事を知る事が出来た。問題はどうやって外にいる仲間にこれを知らせるか。後は県令親衛隊とやらか」


教会近くに待機しているイリーナに連絡を取ればすぐにセリアたちが出撃する手筈は整っている。

それでもフェルデンから軍がここまでくるのには一日かかる。


「私が囮となってその県令親衛隊とやらを引きつけよう。ミリアムとアンナさんはその間に脱出してくれ」


「それじゃソレーヌが。。」


「心配するな。すぐ近くに仲間が待機している。詳細を書いた手紙を見た仲間がすぐにモニカ様に報告してくれる。そうすればフェルデン在中軍が動き出す」


「大丈夫なの?」


「これでも士官学校と軍で鍛えている。ちょっとやそっとではやられないさ。待っててくれ。今すぐにモニカ様への手紙を書くから」


手筈はこうだ。

ソレーヌが脱出をしようと騒ぎを起こして監視員の目を引きつける。

ミリアムとアンナは騒ぎで監視の目が薄くなった隙に出入り口から脱出する。

出入り口はイリーナが随時見張っている。

イリーナはミリアムとアンナが街から出て来るのを見れば、すぐに保護してくれるだろう。

後はソレーヌが手紙をイリーナに渡してセリアたちフェルデン在中軍が来るのを待つ間、ソレーヌが一人で持ち堪える事になる。


翌日、ソレーヌは何食わぬ顔をして畑仕事に従事しながら辺りを見渡した。

ここでもドナウゼン在中軍が一部警備兵として見張りをおこなっていた。


ソレーヌは気分が悪かった。

体調がすぐれないのではない。

こんなあからさまな差別がまかり通るのが許せなかったのだ。

ミリアムとアンナだけでなく、ここにいる重労働に従事させられている人たちと生贄と呼ばれている人たちは必ず救う。

ソレーヌはそう強く決意していた。

そして持っていた鍬を突然肩にかけると「行くぞー!」と大声で叫び出入り口に向けて走り出した。


「何をしている!」


抑えに入った警備兵だったが、一人や二人ではソレーヌを止められるはずもなく、あっという間に蹴散らされた。


「脱走だ!」


「逃すな!追え」


怒号が飛び交う中、非常時に備えて警備していた県令親衛隊たちも加勢に出てくる。

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