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①

　子供の頃。大人になった僕はきっと夢を叶えてると思ってた。夢はコロコロ変わったけど。それでも、無条件に信じてた。きっと叶うって。もちろん、夢に向かって何か努力していたのであれば叶ったのかもしれない。だけども僕は、お笑い養成所にも行かなければ俳優養成所にも行かず。漫画も描かなければ、プロのレーサーになる為の勉強もしなかった。それどころか5歳の頃。テレビで見た宇宙特集にハマった僕はその日のうちに宇宙飛行士の夢を持ったが、その日の晩に来ると言われた彗星のことも忘れてテレビゲームに没頭し、見事に見逃してしまった。翌朝には宇宙飛行士の夢は忘れていた。

　そんな僕が成長と共に夢を忘れて、現実的に就職活動を始めたのは必然なのだろう。と、言っても。就職活動だって真面目にやったわけではない。バイトして貯めたお金で手に入れた免許とバイクの縁で知り合ったおやっさんに、ダメもとで雇ってくれと言っただけだ。あの時、おやっさんが二つ返事で了承してくれなければ僕は今何をしていたのだろう……。全く想像できない。

　まあ、とにかく。18で就職して、今は25歳。7年の勤続年数だ。だけどボーナスなんて貰ったことないし、社員旅行もありゃしない。福利厚生？　だって怪しいもんだ。僕が何もわかってないの良いことに騙されてるじゃなかろうか。と何度も考えた。でも、転職する気にはならなかった。なんとなく、僕はおやっさんのことが好きなのだろう。この店も。客も。なにもかも。だけど……。

　今回ばっかりは頭にきたんだ。