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【Prologue】伝説のコンビ、イースとグレイプニール。



挿絵(By みてみん)



 ギリングの町には穏やかな時間が流れていた。

 レンガ造りの町並みに、石畳の道路。広場では噴水がしぶきを上げ、子供達が駆けまわる。

 快晴の空を鷹が舞い、雀が軒下に隠れる。この町のいつもの風景だ。


 広場には1人の青年がベンチに腰掛けていた。長閑な光景を眺めながら、大切そうに膝に置いたショートソードを撫でている。

 人族と背格好は変わらないが、長く艶やかな茶色の尻尾が揺れ、時折頭髪から覗く猫の耳がピクリと動く。珍しい猫人族の青年だ。


「ぬし、おしゃべり、しますか」

「ん? いいよ」


 青年が誰かの声に応えた。幼く舌足らずな声の主は見当たらない。


「おじゃべ……おしゃべり、何、おしゃべりますか」

「え、話題があるんじゃないのか」

「ぬしと、おしゃべりたいのます」

「そうだね……じゃあ、どんなモンスターと戦いたい?」

「おしゅがと?」

「そう、お仕事」


 青年が声を掛けたなら、幼い声がそれに応える。目に見えない何かがいるのかと思いきや、青年の優しい眼差しはショートソードに向けられた。声の主は黒いショートソードだ。


 持ち主である青年と会話したいだけで、話題はないらしい。青年はショートソードに話題を振った。


「つごいもしゅた、大きいもしゅた」

「んー。大きいって、大木みたいなトレント種とか? それともドラゴン種?」

「どっちもます」

「何でもいいから斬りたい、って事か」

「ぴゅい」


 青年の腕には切り裂かれた痕があり、耳も少し欠けている。それに、トレントやドラゴンの名を出せるのは、熟練のバスターである証だ。

 若くもそれだけの実力と経験を備えている事が窺える。


 青年はしばしの会話の後、ゆっくり目を閉じた。昼前の陽気が眠気を誘う。

 20分程経った頃、遠くから女性がやって来た。小柄で色白、胸元まで伸ばした黒に近い銀髪を揺らし、青年に近づく。


「もしもーし、事件屋の方―」


 女性が苦笑いしながら声を掛ける。青年はまだまどろみの中から抜け出そうとしない。


「ぬしおぎてくまさい! ぬし、ぬし! じぇけらのまたー!」


 ショートソードが青年を起こそうとする。青年はゆっくりと目を開けたものの、ぼーっとしている。

 女性はため息をついて、ショートソードに指示を出した。


「グレイプニール、歌ってよし」

「良い……ますか? ぴゃーっ!」


 歌うのが好きなのか、ショートソードは喜びらしき声を上げた。それと同時に青年がじわじわと覚醒する。


「えっ、えっ? あ、レイラさん?」

「コホン」

「あ、ついうたた寝しちゃって。おいグレイプニール、駄目だ歌は……」

「よいももぉ~めまおみぃ~、あさみま~ましえぇ~」

「あぁぁ……」


 遠慮のない大きな歌声が響く。響くだけならまだいい、言葉が聞き取れない上に、音程がおかしい。

 聞きかじっただけで分からないのか、それともこれで原曲どおりなのか。

 青年と女性が耳を塞ぎ、通行人が驚いて2人を凝視する。小鳥が空へと逃げ、犬も吠えて大騒ぎだ。

 この状況から察するに、歌い手に問題がある。


「イースくん、止めて、止めさせて! 歌えって言ったけどもういい!」

「グレイプニール、歌は終わり! 仕事だ」

「えしも~にもみみ~おいむが~おえむ~……おしゅがと!? もしゅた!?」

「そう、お仕事。行こう」

「ぴゃーっ!」


 女性から仕事内容の説明を受けると、青年の顔つきが変わった。強いモンスターであることが窺える。


「気を付けて、何人か行ってるから、状況は現地で」

「りょーかい!」

「それと……さっきの歌は誰に習ったの? さっぱり聞き取れない」

「武器仲間から習ったみたいです。そいつもまあ……酷いもんで。良い子の寝顔に朝日が差して……と歌っていたはず」

「よく聞き取れるわね」

「まあ、3年も一緒にいますから」


 青年は2度屈伸をした後、勢いよく走り出した。女性はあっという間に見えなくなった背中へ小さく手を振る。


「……伝説の事件屋イース、か」


 女性が笑いながら踵を返す。


「ま、いいんじゃない? あたしが伝説の事件屋を育てた『伝説の女調教師』って呼ばれてるよりマシ」



【Prologue】伝説のコンビ、イースとグレイプニール。


【Synchronicity】の世界にお越し下さり、誠に有難うございます!

心より厚く御礼申し上げます。

作者のモチベーションのため、主人公をより活躍させるため、

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