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26 分厚い手紙①

 興味津々で俺達は分厚い手紙を開いた。



 よう、元気にしているか?

 そっちはきっとこっちよりずっと涼しいんだか寒いんだか、ともかく慌ただしい中、風邪引くなよ。

 そろそろこっちでの出来事が落ち着いたんで、まとめてみる。

 まず、当日の話な。

 お前の置き手紙のせいなのか何なのか、ともかく酷く疲れた顔の子爵夫妻が出てきて、婚約披露パーティは中止ということになったことを告げた。

 そうしたらまずレント家が――というか、アラミューサ嬢がどういうことか、と夫妻に迫ったんだ。

 そう、お前は何処に行った、とね。

 いやまあ、大した女性だよ。

 共犯なんだからお前が今頃どうしているのか判っているのに、堂々と被害者の顔を作って本気で怒っている様に見せていたね。

 怒りすぎてくらりとしたところを、俺は大丈夫ですか、と受け止めたけど。



「ん?」

「あら?」



 そして知らない方のレント伯爵家からの追求が始まったね。

 場所を変えよう、と子爵夫妻は提案するけれど、頭に血が上っているレント夫妻は聞きやしない。

 乗り気だったのはどっちだ、とばかりに追い込む追い込む。

 俺は「気分を悪くした」と外のテーブルに付いたアラミューサ嬢に甲斐甲斐しく飲み物を持っていったりした訳さ。

 いや本当に見事だね、彼女は。

 それから少しして、今度は親父がやってきたよ。

 そう、サリーを何処にやった! って酷い剣幕でね。

 無論茶番なんだけどな。

 俺とアラミューサ嬢はそんな親父の様子を笑いを噛み殺しながら見ていたね。

 そしてまあ、後日関係者で集まりましょう、ということになったのだけど、婚約披露パーティはただのパーティになって、まあ実にぴいちくぱあちく、色んな推測とか噂とか入り交じって凄いことになってたぜ。

 お前は化粧の匂いが嫌いだから、絶対あんな会場には居たくなかったろうな。

「貴女はあの中で悲しがったりしないんですか」

 アラミューサ嬢にそう聞くと、

「私ああ言う噂好きの雀は好きませんのよ」

 一見悲しんでいる素振りのまま、さらっとそういう彼女に俺は正直惚れたね。



「……」

「兄さん……」



 ああそれで、後日の話し合いには、どうも親父によると子爵夫人、出て来なかったそうだ。

 というのも、それからどうも何かと悪夢を見る、怖い、ということで睡眠不足になってぶっ倒れたらしい。

 何とか寝付いても、眠りが浅く、その上どうも、何か妙なものが見えだした様だと。

 で、お前の親父さんが診療に来たんだ。

 お前に手紙を出すから、と診察内容を尋ねたよ。

 お前のお袋さんと同じ症状か? と。

 だけどどうもそれとは違うらしい。

 幻覚を見だしたらしいが、それはどうも、薬物そのもの、というより、色んな問題が立て続けに起こって本気で神経を病んだらしいぜ。

 何たって、この騒ぎで伯爵家と俺の家に随分な謝罪だの慰謝料だのを要求されたのが一つ。

 それに何と言っても、それまでいい顔してきた社交界で、恥さらしなゴシップの種になってしまった訳だ。

 少なくともあの夫人にとっちゃ耐えきれない様な、な。

 それに跡取りの問題だ。

 お前言ってたろ?

 子爵家は二人の娘を放っておいて、お前を養子にしたって。

 邪険にされた娘達は嫁ぎ先で産んだ子供を養子に出すなんてしたくないと突っぱねたそうだぜ。

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