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19 伯爵家との縁談がやってきた

 その日はアダム伯父の家に泊まり、翌日墓参りをし、一週間程馬に乗って野営を含め、ぐるりと北東辺境伯領を回ることになった。


「馬はどうだ?」

「一応。ただこちらの馬は足が太いですね」

「雪道に強いんだ」


 そんな馬に乗り、集落ごとの距離が長いこの領内を走り回った。

 季節のせいか昼が長く、不思議な気分だった。


「リリーやエラにも会いに行くか?」

「それも考えては居ますが、今ではないです。とりあえず今回は伯父さんとつながりが持てて嬉しいしありがたいです」

「そうか。まあ医師になってその気があったらいつでもこっちに来い。その時には辺境伯へも紹介してやる」

「え、そんなことが」

「辺境伯は代々気さくでな。まあその一方で別の動きをしていることもあるが…… まあそれはいい。人手が足りない地方だ。期待してるぜ」


 そして俺はここで野営の仕方を習った。

 決して簡単ではないが、覚えた分だけ身について行くのは充実感があった。

 日々はあっと言う間に過ぎていった。



「それじゃ、もしそういう時があったら連絡します」

「おう、待ってるぞ」


 アダム伯父と駅で別れた時、とりあえず俺は「保険」ができた、と思った。



 そんな楽しい、有意義な休暇が済んでしばらくした頃、今度は子爵家の方から呼び出しが来た。

 子爵家は日帰りできる距離だが、子爵と夫人の呼び出しの様子からして、泊まりがけになることが予想できた。

 俺は外泊届けを出して屋敷へと戻った。


「久しぶりね、アルゲート」

「只今戻りました」

「随分と立派になったものではないか」


 相手との距離の離れた食卓。

 ただ必要最低限の会話と、食事をする音だけが微かに響く。

 ……息が詰まる。


「今日お前に戻ってきてもらったのは、縁談があるからだ」


 そら来た、と俺は思った。

 そろそろ歳からして、何かしらの話が来る頃だろうと思っていた。


「どんなお相手でしょう」


 夫人はにっこりねっとりと笑みを浮かべ、こう言った。


「レント伯爵家の次女、アラミューサ嬢。歳は貴方より一つ上だけど、とても綺麗なお嬢さんよ」


 レント伯爵家。

 俺は記憶の引き出しからその名を取り出す。

 伯爵家から子爵家にわざわざ嫁がせるとしたら、何かしらの対価が必要だろう。

 だが俺の記憶では、レント伯爵家自体には格別な問題は無い。

 そしてこの子爵家自体、男爵家の支援があってこその家だ。

 だとしたら、アラミューサ嬢に何かしらの瑕瑾があるというのだろうか。


「それでねえ、次の週末を空けておいて欲しいのよ。この家に伯爵夫人とご令嬢をお招きしてお茶会を開くから。そこにアルゲート、お前も顔をお出しなさい」


 承知致しました、と俺は答えた。

 ではその前に、一つ手紙を書かねばならない。

 サリーに対し。

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