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17 広がっていた血縁

「それで帝都方面へ侯爵様に何とかへばりつく様に一緒に行って、そこでそれらしい実業家と出会った訳だ。向こうは毛織物にもひとつ箔をつけたい。それでアイデアル特産の名が欲しい。軽い気持ちで提携しちまった訳だ。そこで娘の一人が与えられたと。それが俺等の母親。まあお前の祖母さんにあたるな」

「そのひとは今は」

「や、俺等は絶縁してるから知らん」


 そう言ってアダム伯父はどっか、と腕を組んで椅子に背を預けた。


「絶縁って」

「まあ要するに、その提携は失敗だった訳だ。親父はいい様に自分の持ち分だった羊や馬を買い叩かれ、そのうち身ぐるみ剥がされた。母親は、と言えば一応夫婦生活しているうちは子供を四人も作ったが、まあ俺等の世話はまるでしない。それこそお嬢さんだったからな。草原の暮らしなんて、と両親の許可が出たらとっとと逃げ帰った。ただ一応血は引いてるから、と母方の祖父母は帝都の学校に行きたかったら援助する、とは言ったが」

「行ったんですか?」

「いや、勉強はアイデアル侯爵領でもある程度できた。わざわざそれ以上のことをする意味は俺には湧かなかった。ただメアリは領内での医師不足を子供の頃から嘆いていてな。子供が死にやすかったし」

「それで看護人に」

「そう。それでその勉強をしたいから、とあいつだけは母方を頼って勉強しに行った。まあ向こうでの母親には放っておかれた様だがな、元々俺等は産みの両親と周囲の育ての親達との間に愛情の差が大きくはない。母親より、きちんと学費を出してくれた祖父母に感謝していた様だ。で、最終的には戻るつもりだったらしいが、実地訓練中に、お前の父親と出会ってしまった訳だ」

「出会ってしまった、ですか」

「まあこればかりはなあ」


 肩をすくめる。

 そして茶でも飲むか、とポットを持って湯湧かしの方に立つ。

 俺はその間に頭の整理をする。

 今まで俺の血縁関係は帝都近辺にしか無かったのに、まあ何って実は広がっていたんだろう。

 そう考えた時、何となく俺はほっとした。

 やはり何処か、帝都を中心とした世界が全てと考えてしまっていたのだろう。 そうでなくとも生きて行ける、と実証している近しい人が居るということはやはり心強い。

 やがて熱湯を汲んでアダム伯父は戻ってきた。

 そして革のバッグから小さな巾着を出す。

 中身は茶葉の入った缶だった。


「ずいぶん可愛いですが、奥さんが?」

「あ? いや、俺は独身だ」

「あ、……すみません」

「いや、謝ることはない。結婚してないだけで、共棲みしている者は居る。で、そいつが作ってくれた」

「……そうですか」


 まだまだ俺は、とっても青い。


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