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13 父子は同じ目的を持つ

「ただ、お前が向こうに引き取られていたことで、直接手を出すことは控えていた」


 そこで俺は、昔から思っていた疑問を吐き出した。

「何故あそこで、俺を向こうにやったのです?」

「……それに関しては、私の弱さでしかない。お前を見るとメアリのことを思い出して辛くなって仕方が無かったんだ。それに、その時の私によってぼろぼろになりかけた男爵家に居るより、子爵家で教育を受けた方がいいと思ったんだが――お前の顔を見る限り、そうではないようだな」

「父さんに悪意が無いことが判って良かったです。そして伯母さんが悪意の人というのも」


 俺はにやりと笑った。


「そもそも出来が悪いからって娘達を自分の両親に押しつけて弟の子を引き取って出来がいいからと連れ回して見世物にする…… 俺はいつもあの香水臭い女達の中で、何って馬鹿馬鹿しい競り合いしてるんだ、と思ってましたよ」

「そんなことをされていたのか?」

「それでいてネイリアとトラディアは『あんたのせいで居られなくなったのよ』とばかりに俺を殴る蹴るしてきたし。三度森に放って置かれた時、さすがに来ない方がいい、とお祖父様達に言われましたし」

「性格の悪さが似たのか」


 くっ、と父は笑った。


「そこに恨みも入ってくるんですよ。けど、……父さん、これで俺のやることがだいたい決定しました」

「やること?」

「伯母夫婦への復讐です。父さんもしたかったんでしょう?」

「……ああ! 特に姉には! 自分の見えているものが判別できなくなってもう嫌だ嫌だと泣き叫んでいたメアリの姿が今でも私の脳裏から去らないんだ。忘れられない」

「だったら父さん、俺達の利害は一致する。父さんは俺のことも考えて抑えてくれたんだろう? でもあの連中が学校に行かせてくれたおかげで俺にはいい抜け道もできたし、それに医師になるべく勉強もしている。――何処に行っても、それでやっていくことは可能だと思う」

「お前……」

「それにあの家にずっと居たならば、俺は俺の好きな娘と結婚できない」

「好きな娘」

「その辺りも父さんに似たんだね、貴族同士の結婚とか家同士の何とやらというのに残念ながら俺は興味は無い。むしろあの連中を見てきたせいで、醜悪にしか感じられない。そうでない連中も学校で見てきたから、その限りではないし、きちんとノブレス・オブリージを守っている連中が大半だ。だけど伯母夫婦の子爵家はどうですか? 元々伯母さんが爵位狙いで男爵家からの援助で釣ったのでは?」

「……確かに持参金がずいぶんな額だ、と父は言っていた」

「碌な経営が出来ていないってことですよ。……そんな家、俺は継ぎたくも何ともない」

「だがお前がいなくなったら跡取りは」

「そこですよ」


 俺は再びにやりと笑った。


「先に娘達を嫁にやってしまったのがまずかったですね」

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