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12 伯母が母にしてきたこと

「医者のくせに何で気付かなかったのか、と私は本当に自分を責めた。だがそれは本当に少しずつ、彼女の食事の中にだけ混ぜられていたから、私は気付けなかった…… 気付けば良かったんだ。それはうちの庭に季節になると白い花を大きく広げていたものだったからな」

「男爵家に…… ありましたか?」

「ああ。お前は薬学については学んだか?」

「少しは。子爵家では毒物のことも多少は」

「ではアルカロイド系の薬物がとれる美しい白い花がある。後で探してみるがいい。母はさほどその辺りに知識は無かったが、姉は俺の本から毒物に関する知識を得たらしい。そして手軽に入るとばかりに、それを買収したうちのメイドに少しずつ入れさせた様だ」

「……それはどうやって判りましたか」

「症状。まずはそれが確実に普通のヒステリー状態ではなかったこと。では症例のある病気かというと、近いんだが……」


 父は腕を組んで考え込んだ。


「その病気になる資質が、彼女と長く付き合っていた中で考えられない。看護人は状況によって相当ストレスがかかる職務だ。罵詈雑言だって相当あった。その中でも常に前向きで、現実にばりばりに立ち向かってきたし、そもそも当初は母や姉に対しても上手い切り返しをしていたくらいだ。そんな彼女が、たかがあれらの悪口雑言で幻覚を見るというのは変だった」

「お祖母様や伯母さんの言い回しが陰険で周囲のメイド達にも根回しをして虐める様にしていたとかは?」

「当初はしていた。が、前からうちに居た者はやがて金をもらっていたことを彼女に白状したくらいだ」

「それは凄い」

「だからこその薬物なんだろう。今までだったら通常のいびりでを上げると思っていた女が…… と我慢ならなくなったのだと思う」

「確認はしましたか?」

「元々多くなかったメイドが辞めた時に、新規に入れた者が金に困っていたということで、姉の言うことを聞いたそうだ。私はメアリの死後、様子がおかしいメイドが居る、と聞いて問い詰めた。産後少し弱っている義妹に栄養剤を、とか何とか言われて入れていたらしい」

「おかしいとは思わなかったんでしょうか?」

「思っていたとしても、実際金が必要だったのだろうからな。いずれにしても解雇した。訴えはしなかったが、後に何かあった時に証言用に自筆で内容を書かせておいた」


 それもここに溜めてある、と父は言った。


「いつかは姉に一矢報いたいと思っていたのだが…… 父から、母が歳のせいか弱って幻覚を見る様になると言ってきた。その中で母に責められ続けているらしい。母は自分の中の良心だか弱さに負けたのだか…… ともかくそれで母へどうこうしようという気持ちが無くなってしまった。ただ姉には」

「許せない気持ちがあるんですね」


 無論だ、と父は言った。

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