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噂好きのローレッタ  作者: 水谷繭
第二部
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17.暗い牢獄①


 硬いベッドの上で目を覚ます。視界に入ってくる灰色の壁と鉄格子つきの扉を見て、自分が今地下牢に閉じ込められていることを思い出した。


 どうやら昔を思い出しているうちに眠ってしまったらしい。


 寝る体勢が悪かったのか体が痛くて伸びをする。



 ローレッタとクロフォード家に復讐すると約束をしてから、私達は毎日誰にも気づかれないように計画を進めるようになった。


 ローレッタは言葉通り、数日後には私の中指の指輪を外すための道具を買ってきてくれた。


 それは鍵のような形をした魔道具で、使えば大抵の魔力制御は無効にできるらしい。


 これを購入するために、私の部屋にあったガラクタは全て売り払われることになった。もちろん、全てローレッタが詐欺まがいの手口で呪術品として売った。


 ローレッタはしばらくすると魔術書も買ってきてくれた。これはそれほど高くなく、街の古書店で銅貨10枚分ほどで購入できたらしい。表紙を見るとどうやらどこかの学校で使われている教科書のようだった。



 完全に独学なので、始めはちっともうまくいかなかった。


 指輪を外して本に書いてある通り魔法を使おうとしても、全く反応がない。本当に魔法なんて使えるのかと諦めて寝転んだとき、体中をぐるぐるとエネルギーが回るような感覚がした。


 試しにそのエネルギーを手に集中させてみる。すると、手の平から黒い霧のようなものが放出された。


 初めて魔法を使えた瞬間だった。


 その後も私は淡々と魔法の練習を続けた。初めはヘロヘロと動くだけだった黒い霧が、だんだんと自在に動かせるようになる。上達する度にローレッタと手を取り合って喜んだ。


 魔力測定は相変わらず三日おきに行われており、魔法の練習をした後は必ずローレッタに魔力を分けてもらった。


 初めのうちは自分がどのくらい魔力を使ったのかわからず、どれくらい補充すればいいか見当をつけるのに苦労した。


 一度普段は100~140の魔力が、160になってしまって術師を不審がらせたことがある。


 慌ててたくさん寝たからかしらなんて言ってなんとか誤魔化したが、これ以上値が大幅に変動することがあればお父様に報告されることは必至で、私は神経をすり減らした。



 憂鬱なことに、あのいまいましい入れ墨の儀式は毎年行われる。


 誕生日が来るたびに私は地下室のさらに奥に連れて行かれ、ローブの女に入れ墨を彫られた。皮膚の白い箇所がなくなっていくにつれ、魔力の値は増えていく。


 初めの頃は100から140程度だった魔力が、儀式を終える度に500、1000と増えていった。


 儀式は嫌でたまらなかったが、最初に受けた日ほど苦痛ではなかった。もう我慢することで家族に認めてもらおうなんて無駄な期待はしていなかったので、気が楽だったのだ。


 それに、自由に使うことを許されない魔力を溜めるために長時間の苦痛に耐えなければならないと考えると気が滅入るが、私にはいつかこの魔力でクロフォード家に復讐するという目標ができていた。


 痛みに耐える度に目標に近づくと思うと、笑みがこぼれそうになった。



 私はこの家の地下室で息を殺しながら、ずっと時が来るのを待っていた。


 終わりの時が来るのは、もうすぐだ。


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