夜のコンビニ(2)
午前1時30分
「暗いな…足元には気を付けないと…」
僕は水を求めて、コンビニの奥に向かう。
「トイレには出来るだけ近づかないようにしないと…どんな映画でもトイレには居るっているお約束があるからな…」
映画での知識でしかないが、危険から少しでも離れられるなら僕は、たとえ映画の知識だとしても、信じて従う。
一番いけないのは考えずに行動すること…
僕は日用品が売っているコーナーを通り、電池、などその他もろもろ必要になりそうなものをバックに詰める。
水を入れられるほどのスペースだけは開けておく。
「今の所…何かがいる様子はないな…」
ここで一気に!とならないのが僕のえらい所だ、順調だからと言って次も順調にいくとは限らない。
慎重に行動し、その次も慎重に行動するのだ、そうすれば事前に危険を見つけることが出来る。
僕は常に足元を照らしながら、少しずつだが着実に、奥に進んでいる。
しかし…危険なサインを見つけてしまった。
「ん…これは、血液…どうしてここに血液が…」
ライトの明かりを向けると、真っ赤な血液ではなく酸化し黒く変色している血液だった。
暗くてよく見えず、判断が難しかったが、体内から流れ出し数時間はたっているだろう。
「ここに血液があるということは…この先に生き物がいたということ…人か、犬か、はたまたゾンビか…」
ここまで来たが、引き返すべきだろう、安全を確認できない状態で先が分からない場所に行く行為は、例えると、霧の中、先に谷があるかどうかも分からずまっすぐ歩いていくようなものである。
「仕方ない…先が安全か分からない以上、この先に進むのは危険だ…。今残っている水で我慢しよう…」
僕は元来た経路を再確認しながら、出口を目指す。
その間にいいものを見つけた。
「お!これは使える…」
そこにあったのは、アルコール濃度の高いお酒、ウォッカ、ジン、ウイスキーなどの蒸留酒だ。
これをどう使うか、別に映画の様に傷口に掛けるわけではない。
実際あれはやってはいけない行為なのだ。
僕が使用する方法で考えているのは、可燃剤として使うこと。
アルコールランプとして使うことが出来れば、無駄なものを燃やす必要が無い。
焚火のように多くの煤を出し敵にばれる危険性もない、酸素も焚火より使わず、狭い空間でもある程度は使用できる。
そして一番重要なことは火がゾンビに効くかを確かめる必要があった。
その為にはガソリン…またはアルコールをゾンビに浴びせることによって、小さな火でも一瞬にして燃え上がらせることが可能だ。
もし、火があのゾンビに効くならば、すぐにでも対抗手段を得ることが可能となる。
火で周りを囲うことが出来れば、一時的ではあるが安全地帯を確保することもできるだろう。
僕は、1番量が多いウイスキーを手に取り水を入れるはずだった、スペースにウイスキーをねじ込む。
「よし…早くここを出よう、水は自販機からでも取れる可能性があるから、そこまで危険を冒す必要もない」
僕は無事、コンビニから脱出することが出来た。
午前2時
僕の背中をコンビニのコンクリートに付け後ろからの不意打ちに備える。
すると、上着の内ポケットに入れていたスマホが震える。
「ラインか?…」
僕はスマホの画面を付け誰が連絡してきたのかを確認する。
「ラインを送ってきたのは…桜さん!」
地震があった日から既に2日経ってしまっていたため、僕は正直もう桜さんから連絡が無いということは桜さんもあのゾンビのようになってしまったのではないかと思っていた。
しかし、今になってラインが来たのだ…スマホに表示されたラインにはこう書かれていた。
「誰か助けてください!二日前から木崎の大型スーパーに閉じ込められています。今小さな女の子とそのお母さんと一緒です。水だけは何とか確保し飲んでいますが…中に大量の動く屍が居り、スーパーから出ることが出来ません。既に、女の子が限界の状態です。誰か、誰か助けに来てください。お願いします」
この文章が一斉ラインで送られてきたのだ。
僕は迷った…ここで助けに行くのが映画の主人公なのだろうが…今は映画ではない。
そもそも僕は主人公ではないのだ、言うならば、主人公の後ろに隠れているようなモブ…
最後に味方を助けて死んでいくようなモブではなく、本当に誰にも気づかれないようなモブなのだ…
更に、大人の女性と子供着き…運動神経抜群な桜さんだけならまだしも、子供がいると一気に行動がしづらくなってしまう。
僕はラインを既読スルーした…
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