夜のコンビニ
真夜中…
「良し…0時だ。行こう…」
僕は家から出る。
手にはバールを持ち、頭にはヘルメット、ヘッドライトを付け歩いていく。
幸い…午前中のうちに、ここら一帯のゾンビたちは多くの人が残っているであろう都会や人口密集地に向ったのだろう。
人が多い所でゾンビなんてものが来たら…一瞬で地獄と化しているだろうな…
…直哉、父さん、母さん。
どうか無事でいてくれ…
本当は車かバイクなどに乗りたいが…今は夜のため、危険が高すぎる。
僕は一応自動車免許を取得している。
大学に行く際に車で登校しようとしていたから、大学に合格してすぐ自動車学校に入校し一ヶ月で取得した。
しかし、車自体は持っていない、引っ越しした後に購入しに行こうと考えていたからだ。
「まずは、あのゾンビたちが何に反応しているのかを調べないと…嗅覚なのか、視覚なのか、聴覚なのか、はたまたそれ全てなのか…」
もし、映画でよく見る力が強く、頭を完全に破壊しないといけないゾンビならば、僕のもっているバールごときでは太刀打ちできないだろう…やはり、銃が必要不可欠になってくるはずだ。
僕は猟師でもないし、殺し屋でもない、ただの大工の息子だ。
この日本で銃を持っているのは…警官、ヤクザ、猟師、クレー射撃の選手…それくらいか。
しかし、警察と猟師のもっている銃は法律によって威力が弱められている、もし、威力が下がっていたせいで倒せないということになったらどうしようもない…
ヤクザ…そんな簡単に出会えるものでもないだろう…
僕はその夜…近くのコンビニを目指していた。
コンビニには食料がある。
一番に手に入れたのは飲み水だ。
ペットボトルに入っている水ならこのような状況になっていたとしても安心して飲むことが出来るだろう。
しかし、危険な行動でもある。
コンビニというのは、比較的人が集まりやすく、このような状況になった時逃げ込みやすいため、多くのゾンビがコンビニ内にいる可能性もゼロではない。
しかし、水を飲まなければ冷静な判断も行動もできなくなってしまうだろう。
僕はそのコンビニに着実に近づいていた。
「あの光は…コンビニ。まだ光が付いているということは、電気が通っているということ。この辺りの電気は関西電力が主流だから…関西の方はまだ被害が少ないのか…」
そう思っていたが…
「あ…消えた…」
誰かが消したのか…それとも、電気が止まったのか…発光源自体を壊したのか…消した人物がいるとしたら、生き残っている人になる。
仲間は欲しいけど…子供とか女性だったら足手まといにしかならないだろう…
いきなり、仲間になった人物が男だとしても…いつ裏切られるか分からない。
それならいっそ、1人で行動したほうがましかもな。
僕はさらに慎重になり…一歩進んでは周りを確認し、一歩進んでは周りを確認する。
時間は掛かるが、死ぬ可能性は格段に低くなるだろう、この際、大切なことは逃げられる場所を見つけておくことだ。
僕は、このコンビニに来るまでに、数か所、人一人分がちょうど入るくらいのスペースを見つけている。
万が一、ゾンビに襲われた際はその場所に身を隠す。
『ゾンビに襲われている』というイメージトレーニングを何度も行っておくことで、いきなりゾンビが合わられたとしても、すぐ対処することが出来るのだ。
数m進むのに数十分かけ、何とかコンビニの前まで無事到着した。
下の方からライトを当て、中に人がいないかを確認する…
「クソ…レジの方が上手く見えないな…」
コンビニというのは密室になりやすい、
出入口は大きな自動ドアが1つだけ、つまり中で襲われた場合は相当逃げるのが難しい。
倒す、という行動はそのゾンビがどのような能力を持っているのかをしっかりと確認してからがいいだろう。
万が一頭をつぶしても再生して襲ってくるかもしれない…
自動ドアは既に止まってしまっている。
「自動ドアが止まってる…やっぱりさっき光が消えたのは、電気が止まったからか…。でも自動ドアが止まっているのは都合がいい…」
その理由は簡単、出口を開けておくことが出来るからだ。
出口を開けておくのと開けておかないのとでは生き残る確率が全く違う。
隠れる際は閉めておいた方がいいが、何かを探す場合や移動する場合などは出口を確保しておくことは需要だ。
いきなり襲われて、開いているかどうか分からない扉に向った場合、もしその扉が閉まっていた場合ゲームオーバーになってしまう。
開けておけば、逃げ道を確保することが出来る。
いい余裕が生まれ、冷静な判断もすることが可能だ。
僕は自動ドアを手動で開け、カウンター付近に石を投げ込んだ。
『カコン!』
大きめの音が鳴る。
「何も反応が無いな…昨日のゾンビからすると音に反応することは分かっている。なら、今この中にゾンビはいないという事か…いや…いないと考えるのは危険だ。ゾンビがいると考えながら入って行った方がいいだろう。良し…行こう」
僕は姿勢を低くして自動ドアをくぐった。
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