これから(2)
クラスの皆はまだこの状況を呑み込めていないみたいだ。
そりゃそうだろう、今頃普通に帰宅して普通の時間を過ごしているはずだったのだから。
皆が迷っている中、水島がもう一度話始める。
「でもまずは、車の確保だ。武器も欲しい銃なんてゲームみたいにそこら辺に落ちているわけないんだ。この学校で手に入れられる武器として一番利用できるのは弓道部の弓だと思う。直哉もいることだし。」
「確かに、俺は弓道部だけどここから部室まで結構遠いぞ、車の確保と一緒に行ってたら失敗する可能性の方が高くないか?」
「そこは2チームに分ける、先生が新しい車を買ったって自慢してたからきっと今日も乗ってきているはずだ。僕のチームで先生を探してみる、もし見つからなかったら、他の車がつかえなか調べてくるよ。連絡はスマートフォンで随時行うから、スマートフォンはマナーモードにしておけよ」
「分かった…俺のチームで部室に向い、弓と矢を持ってくる。それに加えて、他に生きている人がいなか調べてくる。同じ弓道部の野島さんと花崎さんは俺に付いて来てくれ」
俺は、向こうで蹲っている野島さんと花崎さんに声を掛ける。
しかし
「無理無理無理…あんな所に行ったら私も殺されちゃう…」
恐怖が2人の動きを止める。
「お願いだ、俺たちだけじゃ持っていけるものが限られてる、それに2人は部室の中に何があるか詳しいはずだ。これは2人にしか頼めないんだ」
俺は2人に頭を下げる
2人は泣きながらも、頷きその場から立ち上がった。
「ありがとう…」
「それじゃあ、水島行こう…」
「ああ、死ぬなよ、直哉…」
「成功したら、一度この教室に戻ってくる。そして、合流して助けを呼びに行こう」
「ああ…分かった」
俺たちと水島たちは教室を出た。
時間がたち、夜になる。
「もうこんな時間か…今日はやけに長い一日に感じたな…」
僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
眠っていたといっても1時間程度だろう、パソコンなどで情報収集していたら目にガタが来てしまったらしい。
「早く、確かめないと…」
僕は、家の屋根裏から外に出る。
「ゾンビたちは動いているか…どうだろう」
僕は懐中電灯を地面に照らしていく、すると道路に立っている人を見つけた。
「あんなところで立っているなんて…不自然だな。」
僕は屋根の上から道路に小石を投げる。
コツンという音か真っ暗な夜の町に響く。
すると、さっきまで見ていた人が振り向く、その顔はすでに人の原形をとどめていなかった。
「これくらいの音にも反応するのか…でも、反応したのは近くにいたあのゾンビだけ。しかし、昼間よりも行動が遅くなっている気はするな…やっぱりもとは人間だから体は逆らえないのか。つまり…夜中は人間のゾンビよりも夜行性の動物や昆虫に気を付けなければならないってことか…」
情報収集していてわかったことだが、ゾンビになっているのは人だけではなく…猫や犬などもゾンビになっているらしい。
「猫や犬がゾンビになるということは他の生き物もゾンビになる可能性が高い、死んだ人の肉を食べて感染するのだとしたら、虫もゾンビになる可能性があるな…」
状況はどんどん悪い方向に進んでいく。
「しかし、人の動きが夜中は鈍くなるのはいい情報だ、やっぱり移動するなら夜中の方が良いな。移動する必要が出てくるのは、食料があと少しで無くなる時または水の確保が出来なくなったとき。滞在している場所に救助が来ないと分かった時。ゾンビに占領されそうなとき。このどれかに当てはまるのなら、すぐさまその場を移動した方が良いだろう。僕はまだこの場を移動するべきじゃないな…」
僕は部屋に戻ると、パソコンに向かい情報を書き込んだ。
「人のゾンビは夜中になると行動が鈍くなる」と
僕はTwitterに書き込む。
しかし、リツイートもいいね、も押されることは無かった。
次第に情報が更新されなくなっていく。
「ダメだ…。情報が出てこない…どうしてなんだ」
Twitter、インスタグラム、Facebook、ヤフーニュース、どれを見ても数時間前から更新がピタッと止まってしまっている。
数時間前まで引っ切り無しに情報が発信されていたのに…
まさか…考えたくはないがもうそれ程まで人がいなくなってしまったのか…
スマホのラインを見る。
直哉たちからのラインだけが数時間おきに送られてくる。
僕の心の支えはこのラインだけになってしまった。
「直哉たちはまだ生きてるんだ…僕が弱気になってどうする。行こう…ここに居るだけじゃ、だめだ」
腐りやすいものはすべて食べた。
残りの携帯食料をバックに詰める。
「出発は今日の夜中だ…基地に向おう。そして、僕ができるだけゾンビたちの情報を伝えるんだ」