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「全員いるか!点呼しろ」

俺は部員が全員いるかを確認すると、校長先生のもとへ駆け寄る。

「剣道部全員います」

「よろしい、ではこの場で待機をお願いします」

「分かりました」

俺は、この場で待機だと部員に伝える。

「先輩大丈夫なんでしょうか、津波とか…」

「ああ、大丈夫のはずだ。そういう事に詳しい奴がこの学校は地震が起きても津波の影響を受けないって言ってたからな。そいつにはいつも助けられてるんだ」

「へ~すごい人なんですね」

「それにしても、陸。お前一応、今の剣道部のキャプテンなんだからもっとキャプテンらしくならなきゃだめだぞ」

「す、すみません!大地先輩みたいになれるように頑張ります」

「まあ、俺みたいになれとは言わないから、自分らしくがんばれ」

「はい!頑張ります」

こんな話をしている時だった

俺の頭がおかしくなったのではないかと錯覚するほど、目の前が地獄に変わる。

はじめは1人の男だった。

「先生、誰かあそこにいますよ」

と女子生徒が、指さす方向に人がいた。

「ほんとだ、先生ちょっと見てくるから」

そう言って、先生がその男のもとに向かた。

すると、形相を変えて戻ってくる。

そのまま、校長先生のもとに駆け寄っていき、耳打ちをする。

校長先生の顔が青ざめていきスマートフォンを手に取り、どこかに電話し始めた。

しかし、電話が繋がらなかったようで先生たちにも電話させているようだった。

先生が避難者用に開けていたフェンスが開いていることに気づく。

その先生は思いっきり走っていき、閉めようとしたとき。

「や、やめ…」

フェンスをしめる前にその男につかまれ首を噛まれた。

抵抗していた手がまるで力が抜けたようにぶら下がる。

血しぶきが吹き上がり、その場を赤色に染めた。

俺はその光景を見て、叫んだ。

「全員逃げろー!」

俺の声が聞こえたのか、みんな一斉に走り出した。

校舎に逃げるもの、部室に逃げるもの、自転車で外に逃げるもの、皆それぞれだったが、その場から逃げ出した。

「先輩!どうしたんですか」

「良いから、振り返らずに逃げろ!校舎の中に入るんだ!竹刀を持っている剣道部員はこの場に残れ、それ以外の部員は今すぐ校舎に避難しろ!」

俺は自分のもっていた竹刀を強く握りしめる。

奥の方で通る声が聞こえた。

「みんな、校舎の方に逃げるんだ!」

ーーこの声は、聞き覚えがあるぞ...そうか、直哉だ!

すると、校舎の方に逃げる生徒が多くなる。

皆がパニックになっている間にも、あの男のような姿をしたやつが増えていった。

首を噛まれて血を噴出した先生もなぜか立ち上がり、こちらにゆらゆらと歩いてくるのが見えた。

外で襲われたのだろうか、うちの制服を着た生徒もふら付きながらこちらに歩いてくる。

「何なんだ、あれは…」

「大地先輩なんですかあれは!」

「分からん、だがやばい事だけは分かる。全員気を抜くな、試合の時と同じ緊張感を持て。狙うのは首と頭だ、胴と小手には打ち込むな。3人一組で行動しろ、背中を合わせ前だけに集中するんだ」

「そ、そんなこと言ったって…」

「クッ!」

ーー全員、こんな光景を見て尻が引いちまってる、これじゃ奴らに簡単にやられちまう。

「た、助けて…」

恐怖に足がすくみ立てなくなってしまった女子生徒に首を噛まれた先生が近づいていく。

「あ、危ない、早く逃げて!」

俺はすぐさま走り、女子生徒の前まで行った。

「だ、誰ですか…」

「大丈夫、俺が守るから」

俺はいつもの構えをする

「すみません師匠、俺は今から武道じゃなく武術を使います!」

相手が手を前に出し迫ってくる。

俺は姿勢を低くし、全体重を籠め踏み出す、その力をそのまま、竹刀の先に送り込み、先生の喉を突いた。

すると、竹刀が貫通し、先生の動きが止まった。

すぐさま竹刀を引き抜き、女子生徒を抱え元居た位置に戻る。

部員の全員が言葉を失っている中、女子生徒が抱き着いてくる。

「あ、ありがとうございます、ありがとうございます」

「君、大丈夫か、立てるか。立てるなら、今すぐ校舎に避難するんだ、陸、この子を校舎に」

「わ、分かりました」

「先輩、さっきのは」

「今はこういう状況だ、全員ためらわず思いっきりやるんだ、もし手加減して死んだら俺が許さん!」

「は、はい…」

同じようにその場に座り込んでしまっている生徒が何人かいた。

「全員、今この場でほかの生徒を助けられるのは俺たちしかいない。覚悟を決めろ!」

部員を鼓舞する。

「それじゃ、慎重に行動し、生徒を助けろ」

そう言って俺は1人で走り出す。

さっきと同じように1人の少女を抱きかかえ部員に渡す。

恐怖で立てなくなっていたんだろう。

校庭は大パニックになっている、今のような生徒がまだ他にもいるかもしれない。

「誰か、他に動けない人はいないか!」

声をかけるが返事がない。

俺以外の部員が何人か救っているところを見ていたので、返事がないということはもう生きている人はこの場に俺たち以外居ないのだろう。

「せ、先輩。も、もう誰もいませんよ。きっと、だから早く校舎に戻りましょう!」

「分かった、俺以外は全員校舎に戻れ、俺がしんがりを務める、後ろは守ってやるから早く校舎に戻れ!」

「は、はい!」

剣道部の部員はそれぞれ校舎に走る。

「こちらに来ているのは3人、こちらに気づかないでうずくまり何かを食っているのが30人くらいか。フェンスの外を見ても、いったい何人がこんな姿に想像もできないな」

こちらに向かってきている3人をできるだけ引き付ける。

すると、そいつらは走り出した。

「こいつら走れるのか!」

不意を突かれ、距離がどんどん近くなる。

「仕方がない、ここで3人まとめて相手してやる!」

見たところ連携した攻撃はないようだ

「それなら、攻撃は読みやすい」

俺は一人の喉に竹刀を突く。

喉を貫通し、動きが止まる。

竹刀を引き抜こうとしたが、何かに引っかかり引き抜けなかった。

「クソ!」

その間にも残りの2人から狙われている。

少し先に、野球部の金属バットが見えた。

俺はすぐさま走り出し、金属バットを手に取り、向かってくる1人に竹刀で面を打つように思いっきり頭上から振りかざした。

動きは完全には止まっていないが立ち上がることはできないようだ。

頭蓋骨が硬かったのか完全に破壊することが出来なかったらしい。

残りの1人は比較的骨の薄い側頭部を狙い、思いっきりバットを振った。

その人は横に吹き飛び、立ち上がることはなかった。

「よし、これで…」そこで気が付いた。

竹刀を打つときや、バットを振る時の音で奴らがこちらに気が付いてしまったことを。

「やばい…」

俺はすぐさま、その場にいた部員が逃げたのを確認し、一目散に走る。

「先輩!こっちです」

体育館の鉄扉を少し開けた陸が俺を呼ぶ。

「そこを離れてろ!」

俺は全速力で走り、鉄扉を目指す。

何とかたどり着き体育館の中に入ると、すぐさま鉄扉を閉めカギをかける。

「みんな無事か!」

「は、はい何とか…でも何人かこの場にいなくて」

「そうか、でもお前たちだけでも生きててくれてよかった。良し、すぐ奴らが入ってきそうな場所に今すぐバリケードを作るぞ!」


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