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大地と眼鏡

 その頃、体育館では……。


「くそ!! 俺の貧弱な体!! もう限界か!! もっと本気出しやがれ!!」


 大地は体を酷使しすぎて、腕が上がらなくなっていた。


 その為、体力の限界を感じ一時休息を取ることにする。


 その際、周りのうるさいゾンビ達を気にしない為に体育倉庫から一度出た。


「はぁ、はぁ、はぁ……。今どうなっている。皆は逃げられたのか」


「そうですね…みんな逃げましたよ。僕たち以外は…」


 大地の目の前に居たのはパソコンを見つめる眼鏡だった。


「な! おい、眼鏡! 何でまだ体育館に居るんだ!」


「あまり大声を出さないでくださいよ。ただ僕はチームから漏れてしまっただけです」


「お前……、命の危機だっているのに、だれにも入れてくれって頼まなかったのか?」


「いえ、あちらの方からチームに加わらないかといってくる人ばかりでしたけど、僕の方から願い下げさせていただきました」


「なんでだ。お前、ここで救援を待つ気なのか? お前が言ったんだろ、ここに助けは来ないって」


「ええ、そうですよ。だから、僕だってここで待つ気はありません。ただ僕は一番生き残れる可能性が高いと思った行動をとっただけです」


「な……。どういう意味だ。一番生き残れる可能性? そんなものがここに在るのか?」


「そうですね。まぁ、僕にはあのゾンビ達をどうすることも出来ませんが貴方にはそれが出来るのでしょ。剣道部の元部長さん、先ほどの剣術を見ましたが中々凄かったですね。一対一なら負けなさそうです」


「お前、俺を利用しようってのか」


 大地は眼鏡を睨みつける。


「そりゃそうですよ。一番強い人に守ってもらったほうが安全でしょ? 多数を守るより1人だけの僕を守ってもらったほうがどう考えても僕の身は安全です」


「おい……。ちょっと待て。それってどういう意味だ。まさかお前、俺を一人にさせるために皆をばらけさせたのか?」


 大地はさらに睨みつける。


「まさか。僕がそんな事するわけないじゃないですか。勝手に盛り上がって皆が散っていっただけです。それに、大地さん……でしたっけ? 元部長さんの名前」


「そうだが。それが何だ」


「例え大地さん1人だった場合、この場所から逃げ出したとしても自衛隊の基地兼、避難所までたどり着けませんよ。あなたはどこからどう見ても脳筋ですから」


「な! 俺1人でも避難所に向う事くらい出来るわ!」


「それじゃあ。この学校から出て、いったいどの方向に向えば、一番近い避難所まで迎えますか? 逆にどこの避難所に向えば皆に会えるか覚えていますか?」


 眼鏡は自身の黒ぶち眼鏡をくいっと上げ、大地に質問する。


「な! お、覚えて……。覚えてない。なぜだ」


 大地は頭を抱え、体育館の床を見つめる。


「はぁ……やっぱり。いいですか。大地さん。僕があなたの頭になりますから。大地さんは僕を守る壁と剣になってください」


「そういう事か。だが、体育館を取り囲んでいるゾンビどもを何とかしないと出られないぞ」


「それが、どうやら状況が変わりました。音に反応していたゾンビ達は、別のものに反応を示しだしているようです」


「なに? そうなのか。音を出したら引き寄せられるんだろ?」


「確かに引き寄せられてはいましたが音よりもゾンビたちは別の何かに強く引き寄せられるものがあるみたいです」


「音以外に引き寄せられている。いったいなんだ?」


「僕の予測からすれば、人ではないかと考えられます」


「人? ゾンビは音よりも人におびき寄せられているのか」


「勝手な僕の想像でしかありません。ただ大地さんが音を鳴らし始めて、皆が外へ飛び出したときから、ゾンビ達の挙動がおかしくなっていたのです。これを見てください」


 眼鏡はパソコンで録画した動画を大地に見せる。


「足元の、窓ガラスを見てください。少しずつ、皆の逃げた方向へ向いているのが分かります」


「ほんとだ。だがまだ動きだしていないぞ。ただ皆が逃げた校舎側を向いているだけだ」


「今はそうですが、一斉に動き出すんです。このタイミングで……」


 眼鏡は動画を速め、誰かが叫んだ一瞬を見せた。


「今の声でゾンビが一斉に移動した……」


「そうです。ゾンビ達は人に反応しますが、人が集まっていた所で音がしなければ動かない。ただ、音がした瞬間にゾンビ達は動き出す。つまり、ゾンビは人に反応はするが人だけでは移動しない。逆に音はどんな状況でも反応する。と言うことですね」


「それでどうやってここから脱出するんだ。俺だけだったら、強行突破でもするつもりだったが、その後の移動を考えると、どうも眼鏡が必要らしい。俺とお前のどちらかが欠けても生き残れる可能性は低いようだな。悔しいが……」


「僕の考えが正しければゾンビは人が集まっている所におびき寄せられる。逆に少ない人数なら近くにいるゾンビさえ倒して、周りのゾンビに気づかれないようにすれば、脱出は可能だと思います」


「それじゃあ、いつ決行するんだ。俺の体力はもう回復した。いつでも行けるぞ」


「あれだけ動いて、もう移動できるなんて中々のタフさですね。先ほどからゾンビ達の様子を見ていると、どうやら、動きがドンドン悪くなっているように思えます。どうも夜になると動けなくなるタイプなのでしょう」


「それじゃあ、今から決行するのか?」


「そうですね。まず人の少ない所に行くべきだと思います。ですが食料の調達も必要でしょう。加えて移動手段の確保。皆の向う可能性が高い避難所ですが、ここから徒歩で向かうには難しい距離だと思います」


「移動手段なら俺の乗ってきたバイクはどうだ?」


「そうですね、状況にもよりますが大分早く移動できるはずです。まぁ、音が心配ですが少数のゾンビなら難なく逃げきる事は出来るでしょう。ただ……」


「ただ?」


「大地さんに運転を負かせるのは聊か不安ですね。僕の体が壊れてしまいそうです」


「バカにしやがって。運動神経の関わることは大抵出来るんだよ」


「そうですか。では、バイクの確保を第一目標にしましょう。また、状況確認しだい作戦の変更を行います」


「ああ、分かった。そうなると、まずはバイクのカギを取りに行かねえとな。部室のローカーに置きっぱなしだ」


「つまり、部室、駐車場、避難という順番ですね。では行動に移しましょう。これ以上暗くなると、夜目を持たない人が移動するにはさすがに危険ですから」


「そうだな。今すぐ移動しよう。俺の後ろから離れるんじゃねえぞ。眼鏡……」


「分かってますよ。言われなくても大地さんに付いて行かないと僕は死にますから」


 大地と眼鏡は、体育館出口へと向かう。


「それじゃあ行くぞ。もしかしたらこの扉を開けてすぐ大量のゾンビが居るかもしれねえ。そうなったら、俺だけ出て数を減らす。お前は中で待ってろ」


「そうですね。そうなる可能性は低いですが頭に入れておきますよ」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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