大型スーパー
既読スルーした…かったはずなんだ…それなのに…どうして。
『――桜さん大丈夫ですか。無事なら返事を下さい』
僕はそうラインを送ってしまった。
――何を考えているんだ…こんな訳の分からない状況になって、他人の命より自分の命の方が大切に決まっているのに…
ほどなくして、桜さんからのラインが返ってきた。
「樹君…良かった、誰からも連絡が無くて…もうみんなあんな化け物になっちゃったのかと思ってた…ごめんなさい、助けてなんて無責任なことを書いてしまって。でも…私にはどうすることもできないの…弱っていく女の子を見てたら…居てもたってもいられなくて」
「今どんな状況?出来るだけ教えて欲しい」
「私は今…大型スーパーの奥にある休憩室の中にいるの。地震があってから少しして多くの人がスーパーに流れ込んできて…その中にあの化け物が…一瞬でスーパーの中は地獄と化してしまったの。私も一新不断に逃げて…近くにいた親子だけは一緒に休憩室の中に逃げ込むことが出来たんだけど…それ以降は休憩室にある防犯カメラの映像を見てたんだけど…全然数が減らなくてしかも、さっき電気が消えて何も見えなくなって…」
――ラインの文面上からすると、相当な数がスーパーの中にいるらしい…しかも真っ暗…な状態。どうする…どうやったら桜さんと家族二人を助けることが出来るんだ…。
その時…
「ん…何だ、あれ…」
――車の中に…人いる…でもあの様子からして、もうまっとうな人間ではないのだろう…
壁に激突し、フロントガラスまでバキバキに割れている。
暗くてよく見えないが…ガソリンも漏れているようだ。
周りには行動していないゾンビが2体、こちらには気づいていないようだが…
「調べられるかもな…。」
僕は、ウイスキーをティッシュに少ししみこませ石に巻きつける。
軍手を付け、貴重だが軍手が燃えない程度まで濡らし、ライターでティッシュに火を付ける。
僕がしっかりと投げられる位置に移動し。
車目掛けて投げ込んだ。
「かん!」
という音が響く。
どうやら車のバックに当たったらしい、その音によって2体のゾンビは反応し、車の方に移動する。
しかし、燃えている石がガソリンに引火し、一気に燃え広がる。
すると…
「ゾンビが…火を避けて…いるよな、あれは…」
朗報だった。
――明らかに2体のゾンビは火を見て近づくのをやめた…これなら、助けられるかもしれない。
僕はもう一度コンビニに入り、アルコール類を出来るだけバックに詰めた。
「桜さん。もう少しだけ待っていてください。出来るだけの準備をしてそちらに向かいます」
ラインを送るとすぐに返信が来た。
「ありがとう…待ってる。何か私にできることがあったら何でも言って欲しい」
僕は既読を付けると、行動を開始した。
「ここからスーパーまではそれほど遠くない。ただ、どれだけ急いでも、家からコンビニの距離を移動した時間を考えると多分2時間は掛かる…今の季節は3月の後半日の出の時間は5時30分から7までの間だろうか。日が上れば、ゾンビの動きが活発になる。そうなったらもう逃げることも難しいだろう」
とりあえず僕は、スーパーまで行ってみようと思う。
スーパーまでの道のりは、コンビニまでの道よりも道幅が広いく、車も多く止まっている、ゾンビだってさっきとは数が全然違う。
何とか間を縫って進み、車の陰に隠れながらもゾンビをやり過ごす。
スマホが何台も落ちており…僕は運よくロックの掛かっていないスマホを手にした。
「良かった…まさかこんなところで良いものを拾うなんて。最悪僕のスマホで代用するところだったよ」
スマホをマナーモードにしポケットにしまう。
金属バットや自転車…竹刀にテニスラケット…高校生たちの落とし物だろうか…
慌てて逃げたのだろう…そう信じたいが今はどうなっているか分からない。
ゾンビ映画でよく使われる金属バットを手に持ち握りしめる。
「少しでも武器は多い方がいいよな…」
しかし、これ以上持つと体が重くなりすぎてしまう。
荷物は最小限にしておきたかったが…これからのことを考えるとこれくらいは必要になってくるだろう。
そしてようやく、目当ての大型スーパーが目で見える位置にまで来た。