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第8話:放課後

 ある意味では、待ち焦がれていたと言ってもおかしくはない。

 本日最後の授業も無事に終わった学校はたちまち騒がしくなる。

 この後の生徒達は部活やバイトだったりと、各々自由に動く。

 どの部活にも在籍していない、以前に男性という理由からバイトの許可すらも与えられない雷志のこの後の予定は帰宅するのみ。



(なんか、普通に学校に行ってた時よりもどっと疲れたな……)



 濃厚すぎる一日を終えて、こんな日が卒業まで続くおかと想像した彼の顔からはさぁっと血の気が引いていき、不安ばかりが募っていく心情を体現するかのように雷志は溜息をもらす。

 とにもかくにも、学園に長居をする道理がない以上早急に帰宅するに限る。

 かつての学校よりも心身に掛かる負担は倍以上重く伸し掛かっていて、休息を取るよう先程からずっと身体が訴え続けていた。

 彼に拒む道理はないので、級友とそこそこに会話を交えてから雷志は教室を後にする。



(そういえば、結局ブレザーを返すことなくどこかに行ったな……)



 六限目の授業を終えるや否や、可梨菜は足早に教室から飛び出していってしまった。

 むろん彼女の手には貸したブレザーがまだ預けられたままで、返そうという気が微塵もない挙措に雷志が呆れるよりも早く、彼女の親友をはじめとする女子生徒が怒って追いかけていった。

 取り返してくれる……、なんて考えは無価値に等しい。

 ブレザーが誰かの手に渡れば、その者の所有物にされることを雷志はなんとなく想像がついていた。

 返してもらうぐらいならば、新しく購入した方が早い。

 男性は貴重であるから国から様々な援助や免除を受けられる。こういう時だけは、男性として生まれているのを感謝した。



「――、なんだか騒がしいな……」



 雷志が校内に漂う異様な雰囲気に気付いたのは、昇降口に着いたとほぼ同時だった。

 男女問わず、生徒達が一斉に後者の外に飛び出すと、一様に同じ方向へと駆け出していく。

 急げ、もうそろそろ始まってしまう――こんな会話がちらほらと耳に入ってきた雷志の意識は、あっさりとそちらに傾いてしまう。

 正門を見やれば既に送迎車が祓御雷志がくるのを待機していた。後は彼がこのまま乗り込めば、彼らは担った役目を果たすだけなのだが――



「……すいません。少しだけ待っていてもらっても構いませんか?」

「わかりました。ですがお気をつけて、ライシ様は貴重な男性であり古代人なのです。いつ貴方に危害を及ぼそうとする者が現れるかわかりませんので……」



 どうしても、帰る前に生徒達が向かっている先について知りたい。

 雷志が一言断ると、送迎者は文句ひとつこぼさず快く承諾してくれた。

 最後になかなか不安を煽る台詞を言い残されたが、そのぐらいは重々理解はしているつもりだ。

 有事は起きない方がいいに決まっている。

 面倒であるし、場合によっては自分が嫌な思いをしてしまう。

 そうならないよう切に祈りながら、雷志は他の生徒達に混じって駆け出した。

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