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黄金の双剣士  作者: ひろよし
五章:王宮のレキ
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第91話:ミリスと手合わせ

午前の勉強を終えたレキは、同じくリーニャの下で勉強していたフランと合流し、一緒に昼食を食べた。


王族であるフランと食事を共にする事がどれほど名誉なことかなど、レキは当然知らない。

そもそもフランから誘ってきた食事である為、恩人であれど平民のレキが断る事は難しい。

もちろんフランは友達と一緒に食べたいから誘っただけだし、レキだってどうせならフランと一緒に食べたいと思っている。

王宮にいても身分を超えて友達同士のレキとフランは、今日もいつもどおり昼ご飯を仲良くお腹いっぱい味わった。


食事が終われば今度は剣術の鍛錬である。


王族として、最低限自分の身は守れるようにならねばと、これまでも一応は真面目に鍛錬してきたフラン。

レキが来てからというもの、剣術の鍛錬によりいっそう身が入るようになっていた。


レキの強さに憧れ、自分もレキのようにと願った為。

あるいは、先の道中でいろいろと思うところがあったのだろう。

友達であるレキが楽しそうに鍛錬するので、自分も混ざりたかったというのもあるかも知れない。


レキにとっても、友達であるフランと一緒にいられるこの時間はとても楽しみな時間である。


「ふっふっふ、今日こそはレキに勝つのじゃ!」

「まずは一撃、当てられるようになってからですね」

「無理」


なお、この鍛錬には指南役であるミリスと、怪我をした際の治癒魔術士としてフィルニイリスが付き添っている。


「さあ来るのじゃレキ!」

「まずは素振りからです、姫様」

「うにゃっ」


レキ同様体を動かすのが大好きなフランはやる気十分。

そんなフランに振り回されつつ、レキは真面目に鍛錬する。

今日も基本の素振りから始まった。


素振りを終えた両名は、その後ミリスの掛け声で鍛錬場を軽く走った。

なお、軽くと言うのはあくまでレキやミリスの感覚であり、日頃から走り回っているとは言え鍛えてはいないフランにとっては少々キツいのだが、それでもレキに負けまいと頑張ってついて行く。


「えぃっ、やっ、とう!」

「うにゃっ、うにゃっ、うにゃっ!」


走り込みが終われば今度は型の練習。

王国騎士団の型は本来剣と盾を用いた伝統的な物だが、レキは左右に剣を持った双剣士である。

魔の森で磨いた我流の剣。

それを活かすようにとミリスに言われ、相変わらず両手の剣を振るっている。


そんなレキを真似するように、フランも両手に短剣を持っている。

王族であるフランは、公の場で目立った武装をするわけにはいかない。

ドレスに剣と盾は合わないのだ。

持てるとしたら精々がドレスの内側に隠しておける短剣くらい、それをレキの真似をするかのように両手に持ち振るうフランである。

王宮に戻ってからフランが身に付けようとしている、双短剣術だった。


右の剣を左から右へ、振り切る勢いを利用して左の剣を真っ直ぐ突き出し、その剣を引きながら右の剣を振り下ろす。

双剣における基本の型の一つ。

両手の剣を流れるように振るうのが双剣士の戦い方であり、魔物の群れと戦いながらレキが身につけた我流の剣であった。


「うむ、さすがだ」

「ゴブリンやフォレストウルフの群れと戦うなら一撃の威力より手数が重要。

 レキの剣術は理にかなっている」


「てぃっ、てやっ、はっ!」

「うにゃっ、うにゃっ、うにゃっ!」


左の剣を右から左へ、その勢いを活かして体を回転させながら右の剣を振り下ろし、更に回転しつつ左の剣を突き出す。

時折蹴りを混ぜながら、休む事無く振るわれるレキの剣。

見守るミリスやフィルニイリス、更には鍛錬場にいる騎士の面々から「ほほう・・・」という声が聞こえていた。


「せいっ、たっ・・・とうっ!」

「うにゃっ、うにゃっ・・・うにゃぁあ~!」


右の剣を突き出し、怯んだところに左の剣で足払い、距離を取らせ両の剣を同時に振り下ろした。

それがトドメだったのか、レキの剣舞が止まった。


そんなレキの剣舞を必死に真似するフランだが、最後は半ばヤケクソの様な掛け声を上げ、その場に座り込んでしまった。

軽く素振りをした後、ミリスの掛け声で鍛錬場を走り、その後で行われた型稽古。

しかも真似する相手がレキである。


身体強化無しの状態ですら騎士団長であるガレムと互角に渡り合ったレキだ。

その際振るわれたのもまた今のような我流双剣術。

フランにとって、ただ真似するだけでも十分過ぎるほどの鍛錬となったようだ。


形だけをどうにか真似た、しかも完璧とは程遠い不格好な型ではあったが、それでも良くやったと褒めても良い。

もちろんレキの方は座り込む事なく平然と立っているわけだが。


「えっと、次は・・・」

「にゃぁ・・・」


全然全くこれっぽっちも疲れていないレキは、当然のごとくそのまま次の鍛錬に移ろうとした。

レキにとっては今の型稽古も準備運動の一つでしかない。

王宮に来る前は、下手をすれば1日中森で魔物相手に狩りをしなければならない日もあったのだ。

この程度の鍛錬で疲れるはずもない。


だが、付き合ったフランはそういうわけにもいかず・・・。


「まぁまてレキ。

 レキと姫様では体力が違うのだ。

 無理せず休ませて差し上げろ」

「ん~・・・うん、分かった」

「にゃうぅ・・・」


見かねて、指南役であるミリスが止めに入った。

ミリスから見ても十分過ぎる運動量だったのだ。

まだ体が出来上がっていないフランでは少々辛いほど。

日頃は勉強の合間、あるいは勉強から逃げ出しては王宮内を駆け回っていたフランでも、レキの体力にはついて行けないようだ。


「ふむ。

 では姫様が休まれている間、私と手合わせをしてみるか?」

「ミリスとっ!?

 うん、やる!」

「良し」


ミリスの提案にレキが快く応じた。

剣術が好きで自主鍛錬を欠かさないレキだが、稽古より手合わせの方が好きなのだ。

何故なら、手合わせは一人では出来ないのだから。


王国騎士団の小隊長であるミリスのスタイルは長剣と盾。

オーソドックスなスタイルだが、実力は騎士団の中でも五指に入る。

騎士団長ガレムには敵わないまでも、身体強化をしていないレキとならある程度打ち合える程度には強い。


「では、いくぞっ!」

「うん!」


ミリスの合図で始まった手合わせ。

いつかの御前試合の様な形になるかと思いきや、先に攻めたのはミリスだった。


「はあっ!」

「うわっと」


剣を横に振り抜く。

牽制の意味を込めたその一撃を、レキはその場に飛び上がって避けた。


「そこだっ!」

「わたたっ」


さすがのレキも空中では思うように動けないのか、続くミリスの突きを、上体を必死に逸してかわす。


「つあっ!」

「うえっ!」


ミリスの攻撃は止まらない。

空中で更に上体を逸したレキに追い打ちをかける。

突き出した剣を半ば強引に振り下ろし、レキに叩きつけた。

さすがのレキもこの攻撃は躱せないようで、ミリスの剣がレキを捉えたように思われたのだが。


「ダメかっ!」


確かにミリスの攻撃はレキに届いていたが、レキにダメージを与える事は無かった。


「ふぃ~・・・あぶなかった~」


最後の打ち下ろし、それをレキは両手の剣で防ぎつつ、地面に叩きつけられる直前に体を捻って着地した。

ガレムとの試合では、レキは一撃ももらうこと無く圧倒し続けた。

防いだとはいえ攻撃を当てられそうになり、さすがのレキも少々焦ったようだ。


着地と同時に後方に飛び、ミリスと距離を取りつつレキが額の汗を拭う。

初めて見せる焦った様子に、周りで見ていた騎士達から歓声が上がった。


「お~!」

「さっすがミリス隊長!」

「いやいや、あれを防いだレキも流石だ」

「レキ~

 頑張れ~!」

「隊長、負けちゃダメですよ~!」


「ほう」


御前試合で完敗したガレムも、感心した様子で試合を見ていた。

自分を圧倒したレキに対し、小隊長であるミリスが善戦している。

騎士団長として、戦いぶりを見逃すわけにはいかなかった。


「さあ、続きだ!」

「うん!」


そんな騎士団が見守る中、再び始まるレキとミリスの手合わせ。

今度はオレの番!とでも言わんばかりにレキが真正面から突っ込んだ。


「甘いっ!」

「うわっち!」


レキの攻めを盾で逸し、体勢の崩れたレキにすかさず剣を振るう。

流石にレキの反応速度は凄まじく、完全に捕らえたと思われたミリスの一撃も、崩れかけた体勢を活かすように前転して躱した。


「にゃはは、レキは背中に目があるようじゃのう!」

「レキなら当然」


休憩中のフランと治療の為に待機しているフィルニイリスも、二人の手合わせを見守っていた。


「しかし、レキはあまり強くないのか?」

「全力を出せばレキに勝てる者はいない。

 でも、技術だけならミリスの方が圧倒的に上」


ここまでの戦い、レキの攻撃は全ていなされ、ミリスの攻撃をレキはかろうじて避けている。

お互い身体強化をしていないという条件はあれど、どう見てもミリスが優勢なその攻防にフランが疑問を呈した。

普段から自分の護衛を務め、剣術では指南役でもあるミリスよりも、友達であるレキの方を応援したいらしい。

今もまた、攻撃を盾で逸らされ体勢を崩しているレキにフランが首を傾げる。


レキの強さは魔の森での狩りで培われたもの。

それは対魔物に特化した強さだ。

対するミリスはといえば、普段から騎士団での手合わせを中心に鍛錬を積んでおり、ただ力まかせに攻めるレキとは対人戦に置ける経験に差がありすぎた。


目の前では、レキがミリスのフェイントに見事に引っかかっていた。

危うく一撃もらいそうになるも、その身体能力を活かしてレキが再び強引に距離を取った。


「っとと、危なかった~」


そんな言葉を呟きつつ、レキが再度構えをとる。


「ふぅ~・・・」


対するミリスもまた、深く呼吸をしながら気合を入れ直している。


ここまでは、一見すればミリスの方が優勢に見えるだろう。

だがそれは、あくまで優勢に見えるだけ。


素の身体能力に任せたレキの攻撃は速く鋭く、そして強い。

その攻撃を、積み重ねてきた経験と勘、培ってきた技術で逸らしてきたミリスだが、相手は騎士団長すら圧倒したレキだ。

真正面からぶつかれば、ガレムより力の無いミリスでは太刀打ちできないだろう。

剣や盾で逸しつつレキの体勢を崩したり、攻撃の際もフェイントを入れながらなんとか互角に持ち込んでいる状態であった。


それでもかろうじて互角、体力を考慮に入れたのであれば・・・。


「よ~し、今度こそ!」

「っ!」


まだまだ元気いっぱいのレキが更に速度を上げる。

呼吸こそ整ったものの、体力的にはミリスの方が分が悪い。

それでも騎士団の小隊長であり、フランの指南役である自分が負けるわけにはいかないと、ミリスは体力が尽きる前に賭けに出た。


「はっ!」

「おっと!」


初手の焼き直しとも言える横薙ぎの攻撃。

ミリスの剣筋に慣れてきたらしいレキが、今度は軽々と避けた。

だが


「つあっ!」

「えっ!?

 わわっ!」


最初の一撃こそ初手と同じ、だが次の攻撃は違う。

初手同様空中に避けたレキに対し、ミリスは盾を前面に構え突進する。

牽制に見せかけたフェイント。

本命は盾ごとの体当たりである。


「やっ!」


盾を前に突っ込んでくるなどと思ってもなかったレキが、慌てて両手の剣を叩きつけるように振るう。

攻撃の反動を活かし、距離を取る事が出来る力任せな攻撃だった。

だが、ミリスはそんなレキの攻撃を読んでいた。


「ふっ!」

「えっ!?」


衝突の瞬間、ミリスが盾を手放した。

予想外に軽い手応えに驚くレキ。

レキの攻撃で盾が吹き飛び、反動で距離を取る事が出来なかったレキが地面にポタっと落ちた。

そして・・・


「・・・ここまで、だな」

「・・・うん」


ミリスの剣がレキの首筋に添えられる。

手合わせは、レキの敗北で終了した。

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