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黄金の双剣士  作者: ひろよし
三章:レキの力
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第64話:みんなで話し合う

「何か御用でしょうか?」

「う、うむ、実は・・・」


天幕の中、どこか居心地の悪そうなガレムの前で、リーニャが首を傾げた。

周りには、天幕内の様子を興味深そうに眺めるレキと、そんなレキにあれこれ説明するフィルニイリスがいる。

リーニャが天幕に入ってきた時点で、ガレムの事はリーニャに任せ(おしつけ)レキの相手をする事にしたのだろう。

ガレムを放置するというより、先ほどのような会話をレキに聞かせない為の処置だ。

レキが天幕に興味を示したのが幸いした。

ちなみに、フランはリーニャの膝の上でこっくりこっくり舟を漕いでいる。


「なるほど、レキ君の人柄についてですか・・・」

「騎士団長としては素性の知れぬ少年を王都へ招き入れるわけにはいかないそうだ」

「その考えは正しいと思いますが・・・」


ガレムに代わり説明したミリスの話に、リーニャは一通りの理解を示した。


騎士団長であるガレムの意見は間違ってはいない。

リーニャとて王女付きの侍女である。

フランの安全のみを考えたなら、ガレムの意見に従っていただろう。


「俺の事話してるの?」

「気のせい。

 それよりあれはこの天幕を設置する際に・・・」


だが、相手がレキであれば話は別だ。

魔の森で出会ってからここまで、レキはリーニャが全面的な信頼を置いている少年である。

自分と、なによりフランを助けて貰った恩義もあるが、情も抱いている。


フランと同い年ながら魔の森でたった一人生きてきた少年。

森で出会い、これまでずっと一緒に旅をしてきた中で、たびたび見せた少年らしい顔。

自分達の為に頑張ってくれる姿に、リーニャはレキへの情愛を深めていた。


純粋で、頑張り屋で、とても頼りになる少年。

強大すぎる力で自分達を守ってくれる少年。

カランの村ではその強すぎる力の為に村人から怖れられ、それでもトゥセコの街では躊躇うことなく力を振るってくれた。

振るった後、再び怖れられるかもと気にしていた。

それでも力を振るったのは、フランを助ける為だった。


「レキ君は信頼に足る人物です」


レキのこれまでの行動を振り返り、リーニャはそう断言した。


「あ、ほらやっぱりレキって・・・」

「気のせい。

 それよりほら、この敷物は・・・」


「ふむ、だろうな」

「レキ君がいたから今日まで無事にいられたのです。

 今更疑うはずがありません」

「ああ、その通りだ」


リーニャの言葉に大きくうなずくミリスである。

心なしか声が大きいのは、罰の悪そうな顔の騎士団長にしっかりと言い聞かせる為だろう。


「それで団長?」

「う、うむ・・・」

「リーニャもこう申していますので、レキについてはやはり問題ないかと」

「あ~、いや、うむ」

「ご納得いただけないようでしたら、リーニャを交えて再度話し合いの場を持ちましょうか?」

「い、いや、その必要はだな」


「ねぇ、やっぱりオレの事話してるよ?」

「大丈夫、問題ない」

「え~」


煮え切らないガレムに、さてどうしたものかと考えるミリスである。


「ガレム様」

「う、うむ」

「レキ君についてはこの私、フロイオニア王国王女付きの侍女であるリーニャが保証致します」

「お、おお」

「それでも問題があるようでしたら、しばらくの間私はレキ君と共に王都を離れる事に致します」

「・・・は?」

「いえ、ですからレキ君をお城に招く事が叶わないのであれば・・・」

「ま、まて!

 なぜそうなる!!」

「この身はレキ君によって救われました。

 魔の森でレキ君に出会っていなければ、私は野盗共に殺されたか、あるいは慰みものになっていたでしょう。

 そこを助けてくれたのがレキ君です。

 そればかりか、レキ君は私の身勝手な願いをも叶えてくれました。

 今こうして私がここにいるのも、こうしてフラン様をこの手に抱けるのも、全てはレキ君のおかげなのです。

 その恩を返さず追い返すような真似をできるはずがありません」

「ぐっ・・・」


苦い表情のガレムをしかと見つめるリーニャ。

なかなか目をあわせなかったガレムも、流石にその宣言は無視出来なかったのだが、あまりにも堂々と言い切るリーニャに言葉を返す事が出来なかった。


そんなガレムとリーニャのやり取りを、レキの相手をしながら伺っていたフィルニイリスだったが、リーニャの言葉を聞いてレキを伴い近づいてきた。


「さすがリーニャ」

「フィル?」

「何、レキ」

「俺、お城行けないの?」

「大丈夫。

 もし王がレキを追い返すような真似をしたら、その時は私も共に王宮を出る」

「へっ?」

「なっ!」


リーニャの言葉をレキも聞いていたようで、みんなと一緒にお城へ行けないのかと不安になったらしい。

確認すべくフィルニイリスに問いただしたレキ。

だが、フィルニイリスからの返事に驚いたのはむしろガレムの方だった。


「お、おい!」

「何、ガレム?」

「今お前も城を出るとか言わなかったか?」

「言った」

「何故そうなる!」

「何もおかしいことはない。

 レキは私達全員の恩人。

 恩人を蔑ろにするような真似を私は許さない」

「お前は宮廷魔術士長だろう」

「そんな地位よりレキが大事」

「なっ・・・」

「私が宮廷魔術士長の座に着いたのは王に懇願されたから。

 魔術の研究をするのに王宮の設備や資料が整っていたから丁度良かっただけ。

 そんなものより恩人のほうが大事。

 何よりレキの魔術や魔力は非常に興味深い」

「おい」

「ぐぬぬっ・・・」


余計な一言にミリスが突っ込むも、それがフィルニイリスの行動原理である以上覆すのは難しい。

それを良く知るガレムが歯噛みする中、次に慌て始めたのはレキだった。


「だ、ダメだよそんなの」

「大丈夫。

 私にとって宮廷魔術士長の地位など大して価値は無い。

 幸い他の魔術士達もなかなか優秀。

 後を任せるのに問題はない」

「え~」

「王宮で出来る研究もあまり無い。

 むしろレキの魔力や魔の森の方が興味深い」

「フィルぅ~・・・」

「その時は私もご一緒させていただきますね」

「うん、よろしく」

「リーニャも?」

「ふふっ、これからもよろしくお願いしますね、レキ君」

「え~」


どれだけレキが焦ろうとも、二人の決意は硬いようだ。

困っているレキとは対照的に、リーニャとフィルニイリスは笑顔で今後の事を話し合った。


「お、おいミリス」

「はい、なんでしょうか団長?」

「いや、あの二人をだな・・・」

「ふむ・・・」


もはや自分の味方はミリスしかいないと判断したのか、すがるようにミリスに声をかける騎士団長ガレム。

だが、当のミリスはどうにも反応が鈍かった。


リーニャとフィルニイリスは、どちらも現在のフロイオニア王国にとって必要不可欠な存在である。

そんな二人が共に王宮を出ると言い出した以上、焦らないほうがおかしい。

にもかかわらず妙に落ち着いているミリスに、唯一の味方の協力が得られないガレムが戸惑い始めた。


「おいミリス!」

「はい」

「いや、はいじゃなくてだな!」

「いえ、流石にただの小隊長である私が意見するなど・・・」

「さっきまで平気で意見してただろうがっ!」

「それはそれ、これはこれです」

「なんだそれは」

「ミリス」

「ん、なんだフィル?」


ミリスの肩に手を置き、強く揺さぶりながら二人の説得を頼むガレムに対し、ミリスの反応は何故か他所事だった。

いよいよガレムにも限界かと思われたその時、問題のフィルニイリスから声がかかった。


「私とリーニャはレキと共に王宮を出る事になった」

「ふむ」

「それで、ミリスはどうする?」

「なっ!」

「私か?

 そうだな・・・」


まさかの勧誘に、ミリスより先にガレムが声を上げた。

騎士団の小隊長を預かり、騎士としての誇りと忠義を重んじるミリスがそんな誘いに乗るはずはない、そう思いたいガレムだったが・・・。


「私は騎士として王国に剣を捧げた身だ。

 そう簡単に城を離れる訳にはいかないな」

「そう・・・」

「う、うむ!

 さすがミリスだ」


なんとか期待道りの回答を得られ、ガレムがひと安心する。

対するフィルニイリスはと言えば、特にこれと言った反応は見られない。


ミリスもフィルニイリスと共に王宮を出る、そう考えたはず。

フィルニイリスの反応に疑問を抱くガレムだったが、ミリスの言葉にはまだ続きがあった。


「とは言え、騎士として受けた恩を返さないなど出来るはずもない。

 よって、レキが追い返されるのであれば、その時はせめて私だけでも恩返しをさせていただこう」

「・・・具体的には?」

「レキが再び旅に出るのであれば、その際の護衛は私が引き受けよう」

「なっ、おい!」

「レキに護衛は不要」

「ならば御者でどうだ?」

「なるほど、確かに」

「決まりだな」


話がまとまり、お互い笑顔で頷くミリスとフィルニイリスである。

完全に蚊帳の外へと追いやられたガレムだが、自分が纏める騎士団の一人、それも隊長格であるミリスの脱退など許可出来るはずも無い。


「ば、馬鹿な事を言うな!

 お前はフロイオニア王国の騎士にして小隊長だろうが!!

 そんな勝手が許されるはずが・・・」

「ならば我々騎士団がレキに受けた恩義はどうされるおつもりですか?」

「お、恩義?」

「レキはこの度、魔の森にて我らがお仕えするフロイオニア王国王女フラン=イオニア様の命を救い、ここまでの旅の護衛も無事勤めあげました。

 本来姫様の身を守るのは我ら騎士団の勤め。

 その勤めを我らに代わり見事果たしたのがレキです。

 本来ならば騎士団総出でその恩義に報いるべきでは?」

「ぐっ・・・」

「それを果たそうともせず、ただ素性が知れないなどという理由で礼すら述べずに追い返そうなどと、それこそ騎士のするべきことではありません。

 と言うわけで、せめて私だけでもレキから受けた恩に報いようと思った次第です」

「・・・」


ミリスの言い分は決して間違っていない。


そもそもフラン達一行が魔の森へ逃げ延びたのは野盗に追われたからだ。

それですら、見方を変えれば騎士団の力量不足とも取れる。


魔の森でオーガからフランを救っただけでも勲章もの。

それに加えこれまでの道中のレキの活躍。


通常なら王宮へ招き、その功績に報いるべきだろう。

にも関わらずガレムの言い分・・・どうやらミリスはミリスで思うところがあったようだ。

ただ、フィルニイリスと笑顔で頷き合う様を見る限り、どこまで本気かは分からなかった。

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