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黄金の双剣士  作者: ひろよし
三章:レキの力
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第63話:騎士団長 VS 宮廷魔術士長&騎士団小隊長

「どうでもいい話し合いは終わった?」

「「フィル」ニリス!?」


ガレムとミリスが話し合いを続けていた天幕にフィルニイリスが入ってきた。


「どうした?

 外で何かあったのか?」

「何もない。

 ただ、脳筋二人でどんな話し合いをしているか気になった」

「悪かったな」

「悪くはない。

 可哀想なだけ」

「なっ!」

「あと残念、いろいろと・・・」

「がっ・・・くっ」


本当に残念で可哀想な者を見る目を向けたフィルニイリスにガレムが声を上げかけたが、何とか自制した。

日頃から騎士団の事を脳筋扱いしている為、この程度の軽口は慣れているのだ。

ただ、揶揄われはすれど信頼し合っている間柄なだけに、可哀想という言葉が引っかかった。

ミリスもそれは同じだが、ガレムと違いその理由にも気が付いていた。


「安心しろ。

 どんなことがあってもレキは城に連れて行く。

 私達の命の恩人だからな」

「そう、ならいい」


フランを始め、自分達全員の恩人であるレキを今更どうこうしようという話し合い自体がそもそも無駄なのだ。

レキの素性はフィルニイリスが保証している、にもかかわらずレキの今後の扱いについて話し合っている二人に、釘を刺しに来たというところだ。


ガレムがどう判断しようと、レキは王宮へ連れて行く。

これは王族であるフランの命令であり、宮廷魔術士長、王女の専属護衛、王女付きの侍女の三人が了承済みであり、決定事項である。

そう言いに来たに違いない。


この中で一番恩義を感じているのがリーニャなら、一番興味を持っているのがフィルニイリスだ。

礼をするという理由以上に、レキの持つ魔力を調べる為、何としてでも王宮へ連れて行きたいのだ。


ちなみに一番友情を抱いているのがフランであり、一番敬意を抱いているのがミリスである。


「本当に良いのだな?」

「何が?」

「あの少年を城に招いて、何かあったら・・・」


対して、直接救われたわけではないガレムは、レキの実力に危惧を抱いている。


「ミリスから聞いた限り、彼の実力は一個大隊に匹敵する。

 もしその力が我が国に向けられたら・・・」

「その時は国が滅ぶだけ」

「なっ!」

「今更。

 レキがそのつもりなら私達ではどうすることも出来ない。

 それは城へ招かずとも同じこと」

「そ、それほどか?」

「ただのオーガでは無く魔の森のオーガを瞬殺した。

 これがどういうことか、オーガイーターなら分かるはず」

「っ!」

「レキにとってオーガもゴブリンの群れも等しく弱者。

 私達も弱者の集まりでしかない」

「・・・むぅ」


強大すぎる力の前には、あらゆる存在が等しく弱者となる。

レキがその気になれば、フロイオニア王国など一瞬で滅ぼす事すら出来てしまうだろう。

そう考えれば、レキという存在を危惧するだけ無駄とも言えた。

ミリスが言ったとおり、今自分たちが存在している事こそが、レキが敵ではないという証拠なのだ。


「納得出来ない?」

「そういうわけでは無いのだが・・・」

「ガレムが危惧しているのは何?

 魔の森で私達を助けたのは王家に近づく為だった?

 エラスやトゥセコで暴漢から守ったのは信頼を得る為の行動?

 カランの村の出来事は性根を見せる為?

 それともレキの背後に何者かがいる可能性を危惧している?」

「い、いや、何もそこまでは・・・」

「安心していい。

 どれもレキには無意味。

 レキがその気になれば、そんな回りくどいことをする必要は無い。

 その気になれば国を滅ぼせるし、国を支配することもできる」

「むぅ・・・」

「地位を望むなら力を見せつければ良い。

 あれほどの力ならレキを抱えたいという領主や貴族はたくさんいる。

 王都で見せつければ王の目にも止まる。

 金銭面ならなおさら。

 冒険者にならずとも魔物の素材を売れば良いだけの話。

 つまり、レキの行動にはガレムが危惧するような意図は無い」

「・・・ふっ」

「団長?」


「が~っはっはっ!」


フィルニイリスの言葉を聞いたガレムが、豪快に笑いだした。


「いやいや、さすがはフィルニイリス。

 王の相談役なだけはあるな」

「馬鹿にしてる?」

「いや、感服しているのだ。

 ミリスが言ったとおりだな。

 我々のような脳筋が下手に考える必要など無かったわけだ」

「脳筋を認めた?」

「ああ、少なくとも俺は昔から認めているぞ?」

「諦めているとも言うな、この人の場合は」

「ミリスも人のこと言えない」

「ん、そうか?」

「が~っはっはっ!」


レキの処遇については一旦保留という形となった。

現状、フロイオニア王国宮廷魔術士長のフィルニイリスがその素性を保証し、騎士団長のガレムがそれを認めた形である。

加えて、騎士団小隊長のミリスがフィルニイリスの補佐という形でレキの傍に付く事になった。

対外的には監視の意味があるが、内情的には今まで道りレキの世話係である。


最終的なレキの処遇については、王都に戻ってから決められる事になるだろう。

それまでは、今まで道りフランの傍で旅を続ける事になった。


――――――――――


「リーニャには確認しないの?」

「そ、それは別に・・・」

「そうですよ団長。

 人を見る目に関してリーニャ以上の者などこの場にはいませんよ?」

「そ、それはそうだが・・・」

「レキの素性は私が保証する。

 でも私はレキのその力に興味があるだけかもしれない」

「お、おい」

「だからこそリーニャにも確認を取るべき」

「いや、それはもう確認済みなのだろう?」

「私とミリスはそう。

 でもガレムはまだ確認していない」

「くっ・・・」

「リーニャも姫様には甘いところがありますので。

 その姫様が気に入った存在を無碍に扱えないだけかも知れませんよ?」

「お、お前らは誰の味方だ!?」

「「さぁ?」」

「ぐっ・・・」


余計な詮索をしてレキを疑った罰なのか、ミリスとフィルニイリスがガレムを揶揄い始めた。

言ってる事に間違いはなく、人柄についてはリーニャに確認するのが一番。

ガレムとてそのくらいはわかっているのだが・・・。


「相変わらずリーニャの事となるとダメダメ」

「まぁどう接して良いか分からないだけなのだろうがな」

「・・・情けない」

「まぁそう言うな」

「ぐぐっ・・・」


これみよがしに揶揄い出すミリスとフィルニイリスに対し、何も言い返せないガレムは、ただただ唸るしかなかった。


最初の話し合いの時点でレキの素性も人柄も保証されていたにも関わらず、今ひとつ信じきれなかったガレムである。

騎士団長として、出会ったばかりの少年をいきなり信じろと言われても無理な話であり、それが他ならぬフランの傍にいる少年とあれば疑ってかかる必要もあった。

いくら宮廷魔術士長並びに騎士団の小隊長にして王女の専属護衛が保証していると言っても、騎士団長である以上は仕方がないのだ。

だからこそ、二人と敵対する可能性を無視してまで追求したわけであり、その結果がこのような揶揄いならば、甘んじて受けるしかないのだ。


「王都へ向かう以上このままではまずい」

「今後は団長が王都までの護衛隊長になるわけだしな。

 姫様付きの侍女であるリーニャとの連携に支障があるのは確かにまずいな」

「姫だけでなくレキの面倒もリーニャは率先して見ている。

 今のうちにリーニャとも話し合っておく必要がある」

「うむ、違いない」


黙って耐えていたガレムをよそに、妙な方向に話をまとめだすミリスとフィルニイリスである。

何か言えば倍になって返ってくるからと、あえて何も言わなかったのが仇になったようだ。

何か言ったとしても結果は変わらなかったとは思うが・・・。


「ということでリーニャを呼んでこよう」

「なっ!」

「わだかまりは早めに解消したほうが良いですよ?

 団長」

「よ、余計なお世話だ」

「王都まで数日とはいえ連携に支障が出るのは問題」

「常に万全の体制で望むのも騎士の勤めでは?」

「ぐぐっ・・・」


やはり何か言っても今更流れは変わらなかったようで、余計なお世話という名の揶揄いに全力を出し始めたミリスとフィルニイリスを止められるものはここにはいなかった。


それにしても、ミリスはこんな性格だっただろうか?

真面目過ぎるというのがミリスのこれまでの評価だった気がするのだが・・・。

少なくとも上司である騎士団長のガレムを、フィルニイリスが一緒とはいえこんな風にからかうような者では無かったはず。


ふむ、今回の任務はミリスにとっていろいろと得る物があったようだ。

・・・不要な物まで得てしまったのは残念だがな。


などとガレムが現実逃避している間に、リーニャを呼ぶ為なのかミリスとフィルニイリスが天幕を出ようとし、気づいたガレムが慌てて止めた。


「ガレム、何故止める」

「そうですよ団長。

 ここはちゃんとリーニャの意見も聞きませんと」

「え~い、不要だと言っておるだろうが!」

「私達を信用しなかったガレムが悪い」

「レキはあんなに良い子供だというのに、何より姫様があんなにも懐いておられるのに」

「いや、だからこそだな」

「まだ言う?」

「やはりリーニャを」

「いらんと言っておるだろうがっ」


天幕の中、騎士団長 対 宮廷魔術士長と騎士団小隊長コンビの、なんともくだらない争いが続いていた。

と、そこに。


「何じゃ、なにやら楽しそうじゃのう」

「あ~、ダメだよフラン。

 勝手に入っちゃ」

「そうですよフラン様。

 例えフラン様でも許可無く入ってはなりません」


天幕の外にまで聞こえていたのだろう、ガレムの声を聞きつけたフランが、レキとリーニャを伴って天幕内に入ってきてしまった。


「なっ!」

「リーニャ」

「良い所に来た」

「はい?」

「なんじゃなんじゃ!」

「お~・・・」


まさかの登場に驚き固まるガレムを無視して、ミリスとフィルニイリスがリーニャ達を招き入れる。

招かれた理由が分からず首を傾げるリーニャと、何やら楽しそうな雰囲気に目を輝かせるフラン。

初めて入った天幕に興味津々なレキと、三者三様の反応を示す新たな乱入者を向かえ、事態は更なる混沌へと向かうようだ。

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